堤未果著「(株)貧困大国アメリカ」を読み終えて

2013-08-31 20:48:25 | 私の愛読書

2012年11月18日。当時のヒラリー・クリントン国務長官は、シンガポール大学での講演の中で、アメリカにとっての外交とは、単なる投資や通商条約という狭い範囲の話ではなく、もっと別のものだと主張した。

「今、世界の市場に参入しようとしている企業が、あまりにも多くの場所で、あまりにも理不尽な貿易障壁という嫌がらせを受けています。こうした壁は多くの場合、純粋な市場原理から発生したものではなく、間違った政治的な選択が生み出しているのです。それが世界のどこであれ、企業が不公正な差別に直面した場合はいつでも、自由で、透明、公正で開かれた経済ルールを確立するために、アメリカ合衆国は勇気を持って立ち上がるでしょう。私は、ボーイング社やシェブロン社やゼネラルモーターズ社、その他多くのすばらしい企業のために戦うことを、心から誇りに思います」

  これは、同著の中の一節だが、まさにここにTPPにかけるアメリカ多国籍企業の執念が込められている。それは、すでにアメリカ国内で、人々の食、街、政治、司法、メディア、暮らしそのものを、じわじわと蝕んでいる。本来、権力の監視を社会的使命とすべきアメリカのすべてのマスメディアが、わずか5社の娯楽系多国籍企業傘下に組み込まれるという寡占状態が誕生している。企業メディアが責任を負うべき対象は、権力を監視するという公共利益から株主利益に変わったのだ。まさに、驚くべき事態が海を隔てたアメリカで進行している。

  巨大企業に支配され尽くしているアメリカ社会の最新の実態をこれほどまでに丹念に掘り下げて告発している著書は、他にあるだろうか。カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインの「ショックドクトリン」の続編のような迫力だ。

  興味ある方には、ご一読をお薦めしたい。

 

 

 


最新の画像もっと見る