読書日記と読書ノート 第三部(2013年6月~2015年6月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

104、哲学講座第10巻「社会/公共性の哲学」(市立図書館から)

2017-02-01 07:13:58 | 読書日記

日記から

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岩波の哲学講座第十巻を150頁近く読んだ。以前に一度借りて読んだような気もするが、読んでみると記憶が戻らない。人格の同一性-継続性について論じた章がおもしろかった。なぜ過去の自分と今の自分、さらに未来の自分とが同一の人間であると意識するのか。同一性の意識は何によってもたらされるか。現に生きている個人にとって、過去と現在をつなぐ記憶の連関だろう、という。自分以外の過去の人物については、生涯の全体がその人の人格を形作る、と。いろいろな学説を紹介しているが結論は常識的。斎藤純一は感情の要素を公共的討議の場に持ってくることを主張する。かっての公私二元論は公的領域では理性が働き、感情や信仰は私的領域のこととされた。が、フェミニズムはこの二元論を批判し、アイデンティティをめぐる問題も公共的論議の俎上にのせられることになった。今や多元的価値が公共的論議の対象である。その際、論議-言葉、話調、論証-の術も持たない者も、自己の感情を表白しその思いを解釈することによって、主張の公共的理由づけに資することができるし、しなければならない、という。信念や信仰や価値も公共的議論のイシューとなってきているという指摘に考えさせられた。「神々の闘争」が復活したということだろうか。

(了)

 


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