読書日記と読書ノート 第三部(2013年6月~2015年6月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

158、クルーグマン「経済入門」

2017-05-15 06:51:26 | 読書日記

日記から

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クルーグマンの「経済入門」を100頁弱。タメグチというのか卑俗な話し言葉を駆使して平易に(必ずしも内容は平易ではない)経済事象を解き明かす。一国の経済のパフォーマンスを決めるのは、

・生産性(労働者一人当たりの生産額)

・所得の分配

・失業者の多寡

だという。貿易収支やインフレ等々は副次的だ、と。生産性とはつまり経済成長のこと。生産性が向上しなければ一人当たりの所得も増えず、消費も停滞する。生活水準を上げるには生産性を上げるしかない、という論だ。しかし、クルーグマンが認めているように、1980年代以降のアメリカ経済は生産性の伸びが低水準のまま。それは-なぜだかは説明抜きに-仕方ないことだという。失業率を今(自然失業率)より下げようとして需要を増やす政策をとると、物価上昇=インフレを招く。経済政策の影響は多面的で、それだけに慎重なかじ取りが必要だと説く。語り口が俗なのに対して内容が高度なので、「なぜそういえるのか」を考えないと、読み流してしまう。

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クルーグマンを80頁ほど読む。貿易収支の赤字を減らすためにはもっと貯蓄を増やすことが必要。消費を減らし投資を増やすこと。そのためには政府の財政収支の赤字を減らさなくてはならない。赤字を減らすというのは増税と政府支出の削減。これによって消費を抑える。消費が抑制されれば輸入が減る、というわけ。が、輸入だけでなく国内産品の購買量も減るだろう。そうなれば生産縮小と失業者の増大という結果を招く。この方がアメリカ国民にとっては痛い。それゆえ、今(というのは2014年のこと)アメリカでは貿易収支の赤字を問題視する意見はないという。赤字であっても、黒字の外国企業や投資家がアメリカ国債や株を買ってくれるので問題はない、ということだ。将来的には外国に対して利子や配当金を支払わなくてはいけないが、そのときはドルを増刷すればいいだけの話。ドルが基軸通貨である限り、アメリカの貿易収支の赤字を心配する必要はない。これが今のアメリカの経済専門家の主流意見。しかも、アメリカ人の際限のない消費が世界経済を牽引しているとなれば、なおさら消費を抑制することはできない。となると、消費需要が拡大し続け、インフレが進むのではないか。クルーグマンが論じているのは1995~96年のアメリカ経済だ。彼は貿易収支と財政収支を改善すべきだという立場だが、今のアメリカ経済については何というだろうか。

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クルーグマンの「経済入門」を読了。といっても、最後の日本の長期不況診断は-数式が出てくるので-カットしたが。アメリカ経済の診断は次の通り。失業率はそんなにひどくない。インフレも収まっている。貿易収支と財政収支は改善されていないけれど、今すぐ(1995~96年)アメリカ経済に大きな影響(国家の破産といった)を及ぼすことはない。低成長ではあるけれど、この経済パフォーマンスで大方は満足している。したがって、この先10年、今のまま推移するだろう。これが教授の予測だった。このときから20年近くたった。アメリカはITバブルで教授の推測を上回る成長を達成した。また、経済の金融化や他の政策(あるいは無政策)によって、上下の格差は、これも教授の予測以上に拡大した。さらに、ブッシュジュニアの対外戦争のおかげで、財政赤字は底なしだ。一言で言えば、クルーグマンの見通し以上に、アメリカ経済の不安定要因は増した、といえるだろう。この先どうなるか。金融化は後戻りできないのだろうか。リーマンショック以上のパニックが再発するのだろうか。政府が分配政策を取らない以上、そうならざるを得ないのではないか。クルーグマンの日本経済診断は別の記事で読んだことがある。インフレの勧めだ。アベノミクス礼賛。長期の低成長・デフレに陥っているので、いくら金利を下げても「流動性の罠」にはまって投資を刺激しない。よって、思い切ったマネー供給=インフレ刺激策によって、デフレ経済から脱却すべきだ、という主張だった。黒田のマネー供給策の単純な支持なのかはわからない。心理的効果を指しているのかもしれない。ともあれ、「俺にはすべてがわかっている」式の論の進め方なので、歯切れはいい。「ほんとうにそうなのか、どうしてそうなのだ?」と思うところも何か所かあった。

 

(了)

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