読書日記と読書ノート 第三部(2013年6月~2015年6月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

55、権左武志「ヘーゲルとその時代」(岩波新書)-後半-

2016-10-17 06:50:23 | 読書記録
(2)ノートから-つづき-
市民社会
①ヘーゲルは、初めて国家から市民社会を分離した。こうした市民社会概念の確立は、フランス革命により、国家が集権化した権力機構として完成されるのと並行し、脱政治化した社会が民間領域として析出されていく歴史的過程を概念的に把握したものである。
②ヘーゲルは特殊利益を追求する市民社会の原理を「特殊性の原理」『主体的自由の原理」と呼んで、承認した。
③職業選択の自由など、個人の選択意志という『主体的自由』こそ市民社会の一切を活性化する原理である。
④市民社会は、個人を家族から分離して疎外する代わりに、自律的人格として承認するから、個人は、新たに『市民社会の子』と成り、市民社会に対して権利と義務を持つ。

国家に関する広狭二つの概念
イ)広い概念…家族と市民社会を含む広い意味での国家。「国家共同体」と呼ばれる人間共同体としての国家。
ロ)狭い概念…家族や市民社会から区別された狭い意味の国家。『政治的国家』と呼ばれる権力機構としての国家。

※現にあるものを、現実を概念的に把握するのが哲学の課題だ。

①ギリシア人には、自己反省する個人の内面性が見当たらず、個人の特殊利益も承認されなかったから、特殊利益よりも公共利益が優先する民主政が成立した。

自由と必然
世界史は自由の意識における進歩である。我々はこの進歩の必然性を認識しなければならない。自由の概念は自己を知ることであり、そのなかに、「自己を意識し実現するという無限の必然性」を含んでいる。

①宗教改革により見出された『内面性の原理』から、デカルトの懐疑精神を通じ、普遍者を探求する『自由な思考』という啓蒙の原理が出現する。
②ヘーゲルは、宗教改革で出現した内面性の原理の延長上に啓蒙思想を捉え、フランス革命を啓蒙の発見した自由意志の原理の実現とみなしている。

※普遍的に見える価値も歴史的に制約されているという思想を「歴史主義」という。
※悪から善を生じさせる『理性の狡知』。

マルクスへの批判
 マルクスは市民社会を利己的個人の領域と見て、国家と再統一しようとしたため、社会の自律性を否定し、国家が社会全体を統制する全体国家を作り上げた。人権を、他者から分離した利己的人間の権利だとみなされた。

※「歴史における理性」=自由の実現のプロセス。理性の自由な使用への信頼。自分で考えるという知性を行使する勇気。

われわれを取り巻く現実の世界は、さまざまな概念から構成されており、どんな概念を使用するかに応じ、現実は異なって見えると言う観念論の立場を徹底して突き詰めた哲学者こそヘーゲルである。現実世界は、「概念の自己運動」により、つまり我々自身の思考活動により作りかえることができるというヘーゲルの信念こそ、その後の近現代史を大きく動かしてきた思想なのだ。

(了)
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