読書日記と読書ノート 第三部(2013年6月~2015年6月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

193、坂本義和「核時代の国際政治」(岩波)-その4-(4/4)

2017-07-23 07:05:11 | 読書記録

(2)ノートから-つづき-

第Ⅲ部 

(1)軍縮の政治構造

①東アジアの非核化のために沖縄の非軍事化が重要。そのために、本土と沖縄との間の垂直的支配・従属構造を変革することが必要である。とくに、基地提供の代償としての本土からの財政支出に依存するという、経済的従属構造を変えることが重要。

 

(2)世界における日本の役割

①日本の国際的役割をまず第一に日米関係という枠組みの中で規定し、その延長としてアメリカ以外の諸国への対外政策を構想する。ここに欠けているのは、日本の国際的役割をまず世界の中の日本、あるいはアジアの中の日本という枠組みで規定し、その一つの帰結として対米政策を構想するという思考である。

②アメリカが日本の再軍備を期待する限り、日米関係という枠組みの内部で日本の再軍備を推進するという政策が優先的に採用される。こうした政策の前提にあるのは、アジアにおけるアメリカと日本の軍事力の和がソ連や中国のそれに確実に優位しているという関係を変えまいとする、優位の現状維持の政策である。

③日本文化の雑種性。

…このような『雑種文化」は、その雑種性のゆえに、時として「純粋日本文化」への回帰の衝動や運動を惹起したことも過去にはあったが、今日では、伝統的国家主義の復活を至難にするほど、非可逆的な雑種性にまで至っていると考えられる。

④日本に、世界の未来を志向する開かれた社会のモデルを作り出すには、文化的雑種性だけでなく、人種的雑居性を受け入れる態勢を樹立することが必要である。

 

(3)軍事化の落とし穴

①今日明らかに、日本の国内の政治、経済、教育、文化の軍事化がはじまっている。そこには、戦前への反動を志向する勢力と、戦後の既得権益の保守を志向する勢力とがあり、その二つは同じではない。

②この二つの勢力は異なるけれど、実は相互に補強しあう関係にある。とくに、戦後保守の場合、反共反ソであっても確固たるリベラリズムが信条化されているとは到底言えない。したがって、紀元節、靖国問題といった、リベラリズムとは相いれないイデオロギー的な反動と、政治的・経済的な戦後権益の保守とがセットになって、国内的軍事化を進めるという配図になっている。

※安倍とその取り巻き連中はこの二つの勢力を一身に備えている。加えて、最新の新自由主義・グローバル志向。

 

(4)軍拡の虚妄と市民運動

①北の工業化された国々は、全体として、南の途上国に対して優位と既得権益とを維持するという利害の共通面がある。そのための手段として、北の先進国の軍備にさまざまな役割が課せられている。

②日本についても、中東までの海路を軍事的に確保できる態勢を、米国と協力して作ろうという動きがあるが、これも結局のところ、中東あるいは東南アジアの資源という、日本にとっての既得権益を確保するために軍事力を増大していくという発想に帰着する。

③日本に固有の軍備の体系は存在しない。全体として米国の軍事戦略体系の一環をなしている。日本が軍備を増強するということは、米国の軍事力を強化していくことに他ならない。

④核兵器は、人間の尊厳とは絶対に両立しない。したがって、われわれは、核兵器の廃絶を要求する権利を持っている。それはわれわれ市民の、人間としての権利である。

 

(了)