読書日記と読書ノート 第三部(2013年6月~2015年6月) 吉野三郎

退職してから読書中心の生活をしています。読んだ本の感想を日記に記し、要点をノートに書いています。その紹介です。

157、山川菊栄「わが住む村」

2017-05-14 07:42:47 | 読書日記

日記から

2014818()

「わが住む村」をほぼ読み終わった。戦時中に移り住んだ藤沢宿に近い村岡村に住む人々の、生活と歴史を綴る。文章が柔らかくユーモアがあって読みやすい。江戸時代はもちろん、明治から大正まで、村は農業一色。どの農家も同じ時期に同じ農作業をする。生活のリズムが同じ。それで、農繁期も農閑期も同じ苦しみと喜びがある。老人たちは一様に、共同の生活形態をなつかしむ。村の生活の変化は商品経済の浸透から始まった。兼業農家が増え、工員やサラリーマンが生まれ、村民の生活は個別化され共同の営みが困難になった。都市化の波がヒタヒタと村に押し寄せ、村は変わっていく。印象的だったのは、幕藩時代、藤沢宿に近いこともあって農民が助郷に駆り出され、農家にとっては重い負担となったこと。著者ははっきりとは書いていないが、同時代の徴兵がそれと同じか、それ以上の重荷を村民に、とりわけ老人と女たちの肩に負わせていることを暗示している。鶏や豚の飼育に農作物の栽培がリンクした農業の複雑な技術体系を具体的に教える。

(了)