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カミングアウト/プロのアスリートに触れてみる

2012年06月05日 20時04分28秒 | コラム

例えば、イギリスの俳優アラン・カミング/Alan Cumming(1965年1月生まれ)は、このようなことを言っている。彼は、バイセクシュアルを自認。過去に女性との離婚を経験し、2007年にグラフィックデザイナーと、同性婚している彼なのだが。

      "We need to do everything we can to counteract hatred and shame and we need to be strong in this fight"

                     

当然カミングアウトするには、相当に精神的なエネルギーもいることだろうけれども、イメージ的に思うことには、「自分にはこれがある」と確信できるような何かを持っている人は、精神的にも強い、ということ。その人それぞれに事情はあるだろうけれども、その職業において世間に名の知られた人でカミングアウトするような場合など、そうしたことも思う。同性婚の場合などでも、「愛」という精神的な支えとなるものの力、それあっての行動力を思わせる。それが偏見であれ、何らかの外からの圧力のようなものであれ、たたかうためには心の支えになる何かが要る。

アメリカのメジャーリーグでプレイしたグレン・バーク/Glenn Burke(1952~1995)は、高校ではバスケットボールのスタープレーヤー。プロとしてバスケットをやっていけるはずであったのだけれども、別方面のメジャーリーグから指名を受けてしまった。運動能力抜群ゆえのことだったのだろう。そうして黒人の彼は、プレーヤーでいる間に、カミングアウト。1970年代の後半のことだから、時代的にも早い。そして、このような言葉を残している。

    "They can't ever say now that a gay man can't play in the majors because I'm a gay man and I made it"

                      

メジャーリーグにゲイはいないなんて誰に言わせないよ。だってゲイのおれが現にちゃんとやっているんだからね。なにか、個性味を感じる。1995年にエイズに関わる病で、他界。                                                                             

 

メジャーでは、ビリー・ビーン/Billy Bean(May 1964生まれ)が、引退後の1999年にカミングアウト。メジャーには1987年から1995年まで。その間の1992年には、日本の近鉄バッファローズでも、プレイしている。1996年に球界を離れたのは、エイズによって亡くなった39歳のパートナーの死、その辛さを誰にも知られずひとりかかえこんで、表面何事も起きなかったかのようにプレイする自身、現実に耐えられなくなったがゆえのこと。彼の1999年のカミングアウトは、New York Timesが一面で伝えたものだけれども、Gayに対するステレオタイプなイメージ、一般の味方、それに対して多様な個々のいること、それを知らしめるに、やはり影響大きい存在の一人足りうるはず。彼の活動は、つづいている。

                     

 

 NFL。アメリカンフットボールでは、ホノルル生まれのサモア人エセラ・ツアオロ/Esera Tuaoloが、引退後の2002年にカミングアウト。10歳の時に父親を亡くしている。自伝がある。2006年春の出版。"My Life As A Gay Man In The NFL"。2010年の6月に家の中の暴力で逮捕される、というようなことがあった。2000ドルの保釈金で釈放されているのだけれども、恋人との間のできごと。彼はメディアの報じ方は大袈裟と言っていたようであるものの、実際にどういうことがあったのか。なんにしても、当人は188センチ、体重127キロの巨漢なのだから。

                     

 

それよりはるかに早く、最初にプロのアスリートとして1975年カミングアウトしたのが、ディヴィッド・コペイ/David Kopay(June 1942年生まれ)。NFL関係でカミングアウトした他の二人に与えた彼の影響は、大きかったはず。2007年には、母校ワシントン大学のQ Centerに百万ドルの寄付を発表している。Q center。ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、etc、それらのための研究等のセンター。                                                                彼は、このようなことを言っている。

      "I hear from people all over the world that my coming out has empowered in their search for self"

素晴らしいことではないかなと思う。その勇気ある行動。

 

                       

 

NFL3人のうちのもう一人、ロイ・シモンズ/Roy Simmons(Nov 1956年生まれ)は、1992年に、テレビのPhil Donahue showにおいて、カミングアウト。その直後にロイは姿して12年間、消息が解らない状態となる。現われたのがNew York Timesのインタビューにおいて。そこで47歳の彼は、このような事実を話している。エイズのHIV-positiveであること、11歳の時に近くに住む結婚をしている男にレイプをされたこと、2年間ドラッグとアルコールのリハビリを受けていたこと、飛び降りようとしてゴールデンゲートブリッジに近づいたことがあること、そしてまた僅かの間ホームレスだったことのあること。苦しいそうした時代を過ごした人であることを思う。

                      

 

NBA、プロバスケットボールでは、ジョン・アマチ/John Amaechi(Nov 1970年の生まれ)が、引退後の2007年に自伝"Man In The Miイギリス育ち。アメリカの高校に進学してバスケットボールを始める前は、イギリスの1487年創立というStockport Grammar schoolに在学していたということだから、ベースにあるものが少しちがうのかもしれない。                                                                                                                         ところでこんなエピソードを、彼は明らかにしている。なんでも、イギリスのマンチェスターのあるゲイバーに入ろうとしたところが、ドアマンに断られたのだという。理由は、体の巨きな黒人。なにかトラブルでも起こすのではないかと見られたものらしいのだとか。2メートル8センチ。体重、122キロ。まさに、ジャイアント。                         テレビ番組出演のビデオなどを見ていて思うのは、かけているその眼鏡の度数の強そうなこと。当方などがかけたら目が回り頭痛がしそうなほどの、強さを感じさせるのだけれども、眼鏡無しでのプレイヤー時の感覚はどうだったのかなど、知りたくもなる。

                  

 

 

イギリスのプロラグビープレーヤーでは、 ガレス・トーマス/Gareth Thomas(July 1974年生まれ)。ウェールズ出身。2011年9月に破られるまでウェールズの100キャップ記録を持っていた(ラグビーの場合、国同士のゲームをテストマッチと言い、一試合出場に1キャップが与えられる)。2001年に十代の頃に知り合った女性と結婚。2009年に離婚。その間に妻が3度の流産。その2009年12月に、彼はGayであるこのカミングアウト。その後彼は、子供たち、青少年の心の問題に対する電話でのカウンセリング、ChildLineでの活動も行う。                                                           彼は言う。

   "I don't know if my life is going to be easier because I'm out,but if it helps someone else,if it makes young lad pick up the phone to ChildLine,then it will have been worth it"

カミングアウトした自身ならではのできること、心の問題に応えられる何かを与えられられるのではないかと考える彼の、温かな人間性を感じる。

    

                                        

 

プロラグビープレーヤー、ベン・コーエン/Ben Cohen(Sept 1978年生まれ)。カミングアウトしている一方で、彼は結婚していて、双子の子供の父親でもある。2008年には、Gay Times' のスポーツプレーヤーの部門で、ディヴッド・ベッカムを抜いて人気一位。全体の年間最もセクシーな男の部門でも二位と、人気。現在に至るまで、モデル等の活動なども。一方で、彼の場合30パーセント余の難聴ということもあり、同じハンディをもつ若いプレーヤーへの助力などにも力を、傾ける。

           

 

女性のプロアスリート他、彼らのことを思うに、我が国の事情なども考えさせられる。こちらは、完璧にcloset状態と言うしかないのだろうけれども、なんにしてもあちらと此方のなんと違う世界かと、つくづくと思わせられる処。先駆的な存在がある、その人あってあとの人につづく人の道筋も与えられる、ということを思うけれども、そうした存在の生まれる土壌がそもそもこの国の、例えばプロスポーツ界にはあるのだろうか。