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ケーキ屋さんのクリスマス 10

2016-12-31 | ケーキ屋さんのクリス...






「チャンミン、そっと優しく握るんだ」
「ユノ様、こうですか?」
「もっと、力を抜いて…」


構えるチャンミンの後ろから手を添え、一緒に絞り袋を握り、ケーキにクリームを絞り出す。




「ユ、ユノ様!」
「大丈夫だ、チャンミン。このまま、続けても何とかなる」




幾ら練習しても力加減が難しい。弱々しい呟きを漏らすチャンミンは、バランスの崩れた飾りを見て、慌てる。そんな様子も楽しみながら、作業を続けた。





「ほら、ここに苺を置けば…気にならないだろ?」
「あっ!本当です!」
「あ、チャンミン。そこは…」
「あっ!ユノ様!僕、間違えちゃいましたか?」
「いや、大丈夫だ。それはそれで…問題ない」





いつも、こんなやり取りをしながら作業している訳じゃない。真剣さが足りないと…作業工程を注視しているサンタ夫婦に誤解されるかと、危惧した。


けれど、それは不要な心配らしい。
三つ子を抱えたトナカイチャンミンはキラキラとした眼差しをケーキに向けて、歓喜の声を上げているだけ。
その隣に寄り添う怪しいサンタは、トナカイチャンミンを見て、口元をだらしなく緩ませている。


だったら、俺は俺で楽しめば良い。チャンミンの慌てぶりに笑みを溢しながら、多少の崩れを補正していた。









「トナカイチャンミンさん!このケーキ、どこにお届けしますか?」


全ての飾りを乗せ終えた時、ハッとしたチャンミンが尋ねる。



「そのケーキはね。もしかすると、会えるかも知れないサンタさん達にプレゼントしようと思ってるんだ」
「…サンタさん達?」
「そう。僕とは違って、真っ白なトナカイと、その旦那さんのサンタさんにね。

絶対に会えるって確証はないけど。幾つかの奇跡が重なって…もしかしたら、会えるかも知れないんだ!」
「そうなんですか!」



ケーキの箱詰めをしている間、チャンミンはトナカイチャンミンの話を食い入るように聞いていた。





「ありがとうね!チャンミンちゃん!ありがとうございました!ケーキ屋さん!」
「もう一つのプレゼントも忘れずに使ってくれ!」



白み始めた空に向かい、サンタ達の乗った近代的な橇は飛び立った。



一先ずの作業を無事にやり遂げ、チャンミンは安堵したように深呼吸をし、俺の胸へとしがみつく。



「ユノ様。トナチャミさん達、真っ白トナカイさんに会えると良いですね!」
「ああ、そうだな…」



チャンミンからの説明だけでは、はっきりと話の内容を理解しているとは言えない。お伽話の延長のような…不思議な話。

それでも、チャンミンが望むなら、俺も一緒に願うだけだ。願いが叶えと、同じ言葉を繰り返し、橇か見えなくなってから、店の中へ戻った。







「そう言えば、チャンミン。サンタからのもう一つのプレゼントは何だった?」
「えーっと…」



苺のエプロンに気を取られ、まだ開封していなかった包みを取り出すチャンミンが不思議な顔をして、首を傾げる。



「ユノ様…これは何ですか?」
「これは…招待券だな」
「招待券?」
「ああ」



サンタからのプレゼントは、保養地にある施設への招待券。
分かり易く、言葉を追加しての説明をした途端、チャンミンは声を上げ、飛び跳ねる。




「ユノ様!サンタさん!僕の願いを叶えてくれました!!」
「…凄い偶然だな…」
「保養地で、ユノ様とゆったりして、僕はいっぱい、あわあわします!」




まだクリスマスは終わっていない。けれど、慌ただしさが終われば、チャンミンからの奉仕が待っている。

色々と思いがけない事の連続だったけれど、結局、幸せで良いクリスマスだった。












おしまい。














ジャンル:
小説
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