本来なら、僕がユノを一番に見つける筈だった。
互いに何も…名前も素顔すら知らず、導かれ…それでも引き寄せられ、あの夜、生まれ持った意味に気付く筈だった。
全てを知っていても、父様や母様にも手出しは出来ない事。
順調に事が進めば、あの宴の終わりに僕はユノの手を取り、婚姻を約束する筈だった。
でも、それは叶わなかった。
ユノがその場から居なくなってしまったのは、悪魔が先にユノを見つけたから。
…ユノが既に僕への想いを抱いていて、そこにつけ込む悪魔の力が作用した為だと知らされた。
何処で僕に気付いてくれたのか、分からない。でも、ユノが以前から僕を思っていてくれた事は素直に嬉しかった。
けれど、その事がユノを追い詰める理由になったのなら、悔しさが込み上げた。
もっと早く、僕も見つけたかった。
知らなかった事実を知れば知る程、少しでも早く、どうにかしたかった。
次の満月の夜。それが運命の時。
はっきりと悪魔の声が聞こえた以上、その時を待つしかないと言われた。
僕が出来るのは…ユノに訴える事。
悪魔の力がユノを浸食していても…まだ、完璧じゃない。僕と心を通わせれば、悪魔に手出しは出来きなくなるらしい。
でも、それは…紙一重…。
ユノが諦めてしまったら…ユノの魂は奪われる。僕は運命の人を失ってしまう。
あの夜…ユノに抱き締められたのは、夢の中ではない。あの時のように、僕はユノの元へ引き寄せられるだろうと侍女は言った。
でも、それはユノの決意を意味するとも言われた。たった、一晩の逢瀬だけで…ユノは満足して、全てを諦める覚悟を決めた結果だと言われた。
もし、満月の夜に…ユノに会えなかったら。ユノは悪魔の囁きに乗らなかった事になる。
それはそれで、ユノが僕との未来を拒む事に繋がる。
僕がユノと一緒になれかどうかは…満月の夜に決まる。
僕は、ユノと再会出来たとてしても…また、声を奪われるだろうと言われた。言葉以外で想いを示すしかない。伝わる歴史や悪魔の企みを説明する時間も術もない。
ただ、僕との未来を諦めないでと…ユノに伝える事しか方法はない。
僕はユノに会いたいと願いながら、悪魔に勝てるか、不安もあった…。それでも、ユノとの未来以外は考えられなくて、眠れない夜を過ごしていた。
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