言葉の救はれ・時代と文學

言葉は道具であるなら、もつとそれを使ひこなせるやうに、こちらを磨く必要がある。日常生活の言葉遣ひを吟味し、言葉に学ばう。

学園祭で出会つた言葉たち + 歌一首

2016年09月19日 11時23分04秒 | 日記

 9月17日18日と学園祭だつた。今の学校に移つて四年目。私自身が卒業生を送り出して初めての学園祭である。つまりは、今の職場が私自身の意識のなかで初めて在校生と卒業生との会話が生まれる空間になつたといふことである。

 浪人生も含めて多くの卒業生が来てくれた。私立学校と公立学校の違ひはどこにあるかと訊かれると、卒業しても恩師がそこにゐるといふのが私立学校ですと答へてゐたが(私自身はこれまでに東京、九州、大阪と学校を変はつてきてしまつたので、さういふ言葉を裏切つてゐる。それでも継続して御勤務されてゐる先生は卒業生を歓迎してくれてゐるから、真実である)、やうやくこの場所も私自身にとつての私立学校になつた。

 「男子三日会はざれば刮目して見よ」の言葉通り、まづは彼らの言葉を聞いてみる。離れて分かる彼らの姿に、数か月前まで毎日見てゐた姿に重ねて、そのズレたところはこちらの認識を補正していく。結構スリリングな時間である。なるほどなるほどと思ひながら、言葉を重ねて接点を見つけていく。ただ私の関心は専ら学問の世界であるから、恋愛その他の武勇伝を語りたい人にはつまらないだらう。もつともさういふ話をしたい人は近づいてこない。それでいいし、それしかできない。

 さて、そんな中で、いろいろな言葉に出会つた。私にとつては最高に楽しい時間であつた。

 メディアについて学びを始めたといふ。現代社会は移動の距離も質も一世代前とは隔世の感があるほど変化してゐる。したがつて、人と人とのつながりは、よく言はれるやうにメディアを通じてなされていくのは必定だ。しかし、人間の本質は変はらない。だから、ある面むしろその本質的なものがメディア社会になつてより顕在化してきてゐるのではないかといふ話になつた。例へば、フォロー数、アクセス数、「いいね」の数など、それらの数の多さによつてそれを使用する人の満足度が高まるといふ。決して読者の質は問はずにひたすら「つながりの数」に還元される。それは民主制度が目指す理想であるかのやうである。承認願望を満たしたいといふ、自我を発見してしまつた私たちが手放すことのできない本能がSNSの流行を支へてゐる。それはかつてであつたら、イベントであり、運動であり、祭りであつた。さういふ話になつた。学園祭の最中にさういふ話ができたといふのは結構刺戟的で楽しいものであつた。これからの研究に期待したい。

 それから、現役生との間ではこんな話になつた。学者の言葉は果たして対象の実態をとらへてゐるかといふことである。例へば、「反抗期」たとへさういふ時期があるとしても、それを「反抗」としてとらへるのは大人の視点である。それを子供の視点で言へば当然別の言葉になる。となれば、「反抗期」と名付けることで、すでに先入観に支配されてゐるといふことにならないかといふのである。なるほど、その通りであらう。しかし、子供自身がその実態に言葉を与へることは不可能であらうし、成長といふことが右肩上がりに上昇していく座標軸でとらへてゐる以上、「反抗」といふ状態は一時停止か下方への移動としてとらへられてしまふのは致し方ない。「自立揺籃期」と名付けても学者としては構はないのかもしれないが、「発展的停滞」であることには変はらないのであれば、「反抗期」でもいいのではといふことで落ち着いた。自己に表現を与へようとする疼きが彼の心を動かしてゐるのであらう。

 学校に働く一職員としては学園祭とはとても忙しい期間である。それは一見華やかな行事であるが、我々にとつては無縁である。今回も駐車場の管理から始まつて、売り子、金券販売、片づけまで、忙殺される二日間であつた。生徒の活動などほとんど見られない。これで良いのかといふ忸怩たる思ひがあるが、これはどこの学校も同じであらう。それだからこそ時にかういふ「出会ひ」があると嬉しくなる。

 今日は一日代休。先生によつては今日も片付けをされてゐる方もゐる。さういふ裏方の先生方の支への中で、生徒たちが育ち巣立つていく。学校とはさういふところである。市場主義で価値を測る場所ではない。

 

 蛇足ですが。

全寮制の学校ならではの光景です。別れが辛かつたのでせうか。それとも怒られてゐたのか。

 何かある泣きぢやくる子の傍らに黙り聞き入る母親がをり   

 

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