報恩坊の怪しい偽作家!

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“Gynoid Multitype Sisters” 「上りの旅」 3

2017-08-10 12:39:15 | アンドロイドマスターシリーズ
[月日不明 時刻不明 天候不明 東京都江東区東雲 マンスリーマンション]

 敷島:「お?今日はシンディが俺の当番か」
 シンディ:「はい。姉さんがオーバーホールに入りましたので、私が代理です」
 敷島:「まあ、以前はお前がメインだったんだがな。それにしても珍しいな。お前がゲームやってるなんて。リンとレンはよくやってるけど」
 シンディ:「ええ。そのリンから借りてきました」
 敷島:「で、何のゲーム?」
 シンディ:「“スーパーロボットハンター”です」
 敷島:「自虐か!」
 シンディ:「いや、別にそこは所詮ゲームですから」
 敷島:「お、気持ちいいくらいにスッパリだな」
 シンディ:「割り切りは現代社会に必要なアイテムです。姉さんもそのように言ってましたし」
 敷島:「さすがは同型の姉妹機だな。設定された性格は違うものの、思考は同じか」
 シンディ:「それに、プレイヤーの名前を社長にしていますので、ダメージを与える度に私を攻めて下さっているような気がして……」
 敷島:「高度なマゾプレイだな!……てかお前、本来は完璧なドSだろ?本当ならプレイヤーの名前はお前自身にして、あのザコロボット達をブッ壊して行くのがセオリーだろうが。……あっと、そこでボス戦か。ボスは何だ?……あー、人間型のロイド。……うーむ、金髪ロングに碧眼の所がお前そっくりか……」
 シンディ:「そうなんですよ!セーブしてやり直しして、何度もヤッてるんです!」
 敷島:「無限ループか!」
 シンディ:「な、何とも言えない快感が……」

 と、プレイヤーキャラ、ボスの女ロイドから顔面に銃撃を受ける。

 シンディ:「下等で愚かなロボットよ!社長の顔に傷を付けるとはいい度胸だ!その罪、鉄塊と化して償うがいい!!」

 シンディ、両目をギラリと鋭く光らせる。

 敷島:「おい!いきなりキャラ変えるな!……つか、俺じゃねーし!」
 シンディ:「何でしたら現実に嬲って頂いても構いません。いや、むしろお願いします。さあ、この電気鞭で私を引っ叩いて!」
 敷島:「だが断る!」
 エミリー:「ちょっと待った!」

 エミリー、玄関のドアを蹴破って入って来る。

 エミリー:「社長、シンディは所詮私の代理!今しがた研究所で、私用の電気鞭を作ってもらいました!私から先にこれで引っ叩いてください!」
 シンディ:「ダメ!私が先よ!」
 エミリー:「社長!これで私を!」
 シンディ:「私にはローソクを垂らして頂いても構いませんわ!」
 エミリー:「ならば私は亀甲縛りを!」
 シンディ:「さあさあ!」
 エミリー:「さあさあ!」
 シンディ:「さあさあ!」
 エミリー:「さあさあ!」
 敷島:「わーっ!」

[7月31日18:05.天候:晴 JR函館本線特急“スーパー北斗”16号3号車内→JR新函館北斗駅]

 敷島:「わっ!」

 そこで目が覚める敷島。

 アリス:「びっくりした。なに?どうかした?」

 隣の席に座るアリスが目を丸くして敷島を見た。

 敷島:「戦ってる夢を見た。丸腰なのに、クソ化け物のように強いロボット2機に追い詰められて……」
 アリス:「もうKR団は完全に崩壊したわ。KR団と手を組んでいた極左ゲリラとか、国際テロ組織も次々摘発されてる。だからもう何も心配することも無いのよ」
 敷島:「あ、ああ。そうだな」

〔♪♪♪♪。まもなく新函館北斗、新函館北斗に到着致します。北海道新幹線は、お乗り換えです。新函館北斗の次は、五稜郭に止まります〕

 アリス:「ちょうどそろそろ駅に着く頃ね。良かったわね。シンディに起こされなくて」
 敷島:「なに?」
 シンディ:「社長、奥様が私に、『普通に起こして起きなかったら、電気ショックで起こせ』との御命令でした」
 敷島:「殺す気か!」

 エミリーは荷棚に置いたキャリーバッグを軽々と下ろした。
 その際、左手からギギギと金属の擦れる音がする。

 敷島:「エミリー、左腕どうした?」
 エミリー:「中の部品が……」
 アリス:「動き自体は悪くないみたいね。分かった。明日、診てみましょう」
 エミリー:「お手数お掛けします」
 敷島:「それじゃ、しょうがないから、明日はシンディが代わりに俺と来てもらおう」
 シンディ:「かしこまりました」
 敷島:「あくまでエミリーの代理だから……あれ?」
 シンディ:「どうされました?」
 敷島:「いや……」

 一瞬、敷島の頭の中で、先ほどの夢がフラッシュバックで蘇った。
 列車が在来線ホームに滑り込む。

〔「ご乗車ありがとうございました。新函館北斗、新函館北斗です。北海道新幹線ご利用のお客様は、乗り換え改札口をご利用ください。東京行きの最終列車に接続しております。お乗り換えのお客様は、お乗り遅れの無いようお気をつけください。……」〕

 ここで降りる乗客は多い。
 もちろん、目当ては北海道新幹線だ。

 アリス:「ここで途中下車はしないの?」
 敷島:「しねーよ」
 アリス:「でも、お腹空いたんだけど」
 敷島:「車内で弁当のサービスが……ああっと!グリーン車は無いのか。グランクラスだけだ」
 エミリー:「シンディ、だから言っただろう?こういう所で差が出るんだ」
 シンディ:「でも、あまり予算を使うと本社から……」

 お金の計算はシンディの方がシビアらしい。
 エミリーの場合は必要とあらばと判断すれば、どんどん計上するのだが。
 その為、南里研究所時代は常に敷島が調整しなくてはならなかった。

 敷島:「まあまあ。それに、グランクラスの弁当は軽食サービスなわけだから、アリスは腹一杯にならんだろう」
 エミリー:「まあ、そうでしょうね」
 敷島:「あそこに弁当屋があるだろ。あれを買ってきてくれ」
 シンディ:「かしこまりました。何がいいですか?」
 敷島:「昼はジンギスカン食ったからな、今度は海鮮系で」
 アリス:「肉」
 シンディ:「かしこまりました」

 敷島は財布の中からシンディに紙幣を渡して買いに行かせた。

 敷島:「俺の今の指示、昔の七海だったら間違えただろうな」
 アリス:「なに?」
 敷島:「駅弁屋ごと買おうとする」
 アリス:「まさか、そんなことが……」
 エミリー:「いえ。昔の七海でしたら、その確率が高いです」
 アリス:「そうなの」

 そして、そこはマルチタイプ。
 ちゃんと敷島とアリスの希望通りの物を購入してきたのである。

 シンディ:「お飲み物までは購入しませんでしたが……」
 敷島:「あ、いや、それはいい。向こうの自販機で買うさ」

 4人は最北の新幹線ホームへと足を進めた。

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