報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「エミリーの初戦」

2017-02-27 15:14:43 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月4日21:00.天候:不明 北海道日高地方 廃ペンション別館・地下階]

 地下の監禁室のような場所でシンディを救出したエミリーと萌。
 シンディには特段損傷も無く、歩けるようだった。
 シンディの手引きで、脱出ルートを進む。
 だがその時、シンディが何かに気づいたようだった。

 シンディ:「姉さん、いつの間に滑らかな喋り方になったの!?」
 エミリー:「お前は……!」
 萌:「言語ソフトを更新したんだよねー」
 シンディ:「言語ソフトの更新は禁止だって……」
 エミリー:「くだらないことを言ってるヒマがあったら、さっさと出口へ誘導しろ!話は後だ!!」
 シンディ:「は、はいっ!」

 姉の恫喝に妹のシンディはすっかり怖気づいてしまった。

 シンディ:「こ、この奥よ……」
 エミリー:「そうか。どうして道を知ってる?」
 シンディ:「あの黄色いジャンパーの男に、ここまで引っ張られて来たの」
 エミリー:「引っ張ってきた!?」

 シンディの自重は100キロを軽く超えている。
 当初の200キロと比べればかなり軽量化することはできたが、それでもまだメイドロイドと比べれば重い。
 あの黄色いジャンパーの男は60歳くらいの初老の男で、確かに体格はガッシリしている感じはするが、それでもシンディを運べる力があるとは思えなかった。

 エミリー:「何だこれは?」

 途中にロボットの残骸があった。
 黒く塗装されたもので、何の用途で造られていたのかまでは分からない。
 だが、そのロボットが装備していたと思われる銃器も転がっていた。
 それも壊れていて、とても銃弾が放てるとは思えない。

 シンディ:「分からないわ」
 萌:「何か、科学館の研究室みたいだね」
 エミリー:「うむ……」

 シンディは狭い通路を身をよじらせて入り込む。

 エミリー:「本当にここなのか?」
 シンディ:「ええ。ここを通ったの、覚えてるわ」

 エミリーも身をよじらせて、隙間に潜り込んだ。
 萌が通るには余裕であるが。

 萌:「2人ともオッパイが大きいから、引っ掛かっちゃうね」
 エミリー:「黙ってろ」

 何とか狭い通路を通過すると、鉄製のドアがあった。

 シンディ:「これよ、これ!このドアだわ!」
 エミリー:「待て。向こう側に見張りがいるかもしれない。慎重に開けるんだ」

 あいにくと鉄扉だと、向こう側がスキャンできない。
 エミリーは右手を光線銃に変形させた。

 シンディ:「いい?開けるよ」
 エミリー:「ああ」

 シンディは鉄扉を開けた。
 エミリーはバッと身構える。
 だが、中から見張りのロボットや人間が襲ってくることはなかった。
 ドアの向こうは古びた机に椅子、ソファが置かれていた。
 机の上のスタンドは点灯し、後付けの工事用照明も点灯していて、中はそんなに暗くない。

 シンディ:「この先にもドアがあって……」
 エミリー:「ドア?」

 だが、あるのはどう見ても壁だ。

 シンディ:「無い!?ドアが無いわ!ウソ!?こんなのって無い!」
 エミリー:「落ち着け。もしかしたら、お前のメモリーに異常が出ているのかも……」
 シンディ:「本当よ!信じて!ここにドアがあったの!」
 エミリー:「分かった。私はこっち側を調べてみる。お前はここで休んでろ」
 シンディ:「うん……。姉さんが来てくれたから、やっと『家族』になれるわ……」
 エミリー:「……?」

 キャビネットやステンレスの棚が並んでいる場所があって、エミリーはそこを探してみることにした。

 エミリー:(ロボット用の機械油?さっきのロボット用か?)

 他にもハンドガンの弾やショットガンの弾などもあった。
 これは頂いて行く。

 エミリー:(もしあのロボットが他にも稼働しているとするなら、少なくとも武器はハンドガンとショットガンか……。ん?マシンガンも?)

 マシンガンの弾もあった。
 だが、肝心の銃器が無い。
 1番奥まで行くと、壁があった。
 少なくとも、ドアがあるわけではない。

 エミリー:「壁が薄い?」

 エミリーが壁を叩いてみると、軽い音がした。
 ここをブチ破れば、新たなルートが発見できるかもしれない。
 エミリーはそれをしようとした。

 シンディ:「姉さん……何をしてるの……?」

 ソファの方からシンディの声がした。
 エミリーは振り向かず、壁の方を見ながら答えた。

 エミリー:「壁の薄い箇所がある。もしかしたら、この向こうに何かあるかもしれない。シンディと一緒なら、破れるかもしれない。手伝ってくれないか?」
 シンディ:「そんなことする必要は無いよ……」

 ボコッ!という音がして、壁がブチ破られる音がした。
 エミリーがいる所ではない。
 さっき、シンディがドアが無いと喚いた所だ。

 エミリー:「シンディ!?」

 エミリーは急いでさっきの場所に戻った。
 そこにはシンディの姿は無く、代わりに新たな通路の入口があった。
 ドアが無くなっていたのは、壁で埋められていたからだった。
 それをシンディがブチ破ったのだ。

 エミリー:「シンディ、どこだ!?」

 エミリーと萌はシンディが開けた穴の中に入った。
 そこは倉庫になっているようだった。
 そして……。

 エミリー:「!?」
 ???:「ギャアアアアッ!ギュルルルルルルルル!!」

 ダクトから何かが現れた。
 それは黒塗りのロボット。
 さっき見た残骸によく似ていた。
 単眼で、そこからは赤く鈍く光るランプが点灯している。
 身長はエミリーよりもやや高いくらいだから、180cm台か。
 ダクトの中から現れるくらいだから、かなり柔軟な設計になっているようだ。
 エミリーのスキャンでも、ロボットと出ている。
 それならば、遠慮はいらない。
 エミリーに向かって、右手をハンドガンに変形させて発砲してきた。

 エミリー:「お前、言葉は喋れるか!?」
 ロボット:「フシュー!フシュルルルルルル!!」
 エミリー:「……ダメだな」

 狭い所での戦闘だが、相手はたかが1機。
 エミリーはレスリングのように、黒いロボットにタックルした。
 ロボットが転倒する。
 そして、持ち前の腕力でロボットの頭部を叩き割った。
 火花と煙が噴き出し、ロボットはガクンガクン震えていたが、ついに稼働を停止した。

 萌:「さすが!」
 エミリー:「初めて見るロボットだ。もしかして、社長達もこれに襲われたのか?」
 萌:「バージョンよりも動きやすそうだね。さすがにバージョンは、ダクトの中は通れないよ」
 エミリー:「うむ。それより、シンディだ」

 エミリー達は先へ進んだ。
 もちろんその前に、倒したロボットから銃弾を頂戴することは忘れない。
 部屋の外に出ると、上に上がる階段があった。
 そこを一気に上がると、またドアがある。
 開けると、どうやらさっきの廃ペンションの1階に出たようだ。

 萌:「外は吹雪だよ」

 窓は板張りがされている上、更にその外側にも有刺鉄線が張り巡らされている。
 ここをブチ破れば脱出できるだろう。
 だが、その前にシンディとアリス、そして敷島を救出する必要があった。

 エミリー:「シンディ!どこにいるんだ!?」

 時折強い風が拭くのか、それで古い窓がガタガタ言っている。
 エミリーが呼び掛けても、シンディが答えてくることは無かった。

 エミリー:「シンディのヤツ、一体どこまで行ったんだ?」

 階段室の左側は行き止まり。
 右側には廊下が続いている。
 取りあえず、エミリー達は右側の廊下を進むことにした。

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