ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“Gynoid Multitype Sisters” 「イベント最終日」

2017-06-15 12:40:53 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月5日07:00.天候:曇 北海道札幌市中央区 京王プラザホテル札幌]

 敷島:「今日もスッキリしない天気だなぁ……」

 起床した敷島はカーテンを開けて呟いた。
 因みに眼下にはJRの高架線が広がっており、ちょうど普通列車が札幌駅に入線しようとしているところだった。

 シンディ:「雨や雪の心配は無いそうなので、集客に影響は無いと思われます」
 敷島:「いや、さすがの北海道でも、札幌で雪は無いと思うが……」

 朝の身支度を整えて、1Fのレストランに向かった。

 井辺:「社長、おはようございます。先に頂いておりました」
 敷島:「ああ、おはよう。いいよいいよ。適当に食べよう」
 シンディ:「私がお持ちしますよ。何がいいですか?」
 敷島:「昨日は洋食にしたから、今日は和食にしよう。適当に持ってきて。あ、その井辺君が食べてる玉子焼き、美味そうだな。これもな」
 シンディ:「分かりました」
 井辺:「ネギ入り厚焼き玉子です。美味しいですよ」
 敷島:「ネギ入りか。カントクは食えねーな」

 雲羽:「カットカット!敷島、何でそこで俺を見る!?撮り直し!」
 敷島:「サーセン」
 多摩:「初音ミクが好きなんだから、いい加減、お前もネギ嫌い克服しろよー」

[同日09:00.天候:晴 北海道札幌市豊平区 札幌ドーム]

 ジャンボタクシーで移動中、雲間から日光が差し込んだ。

 敷島:「おっ、やっと晴れて来た。やっぱ、イベントはこうじゃなくちゃな」
 ミク:「はい!」
 鏡音リン:「ねぇ、社長。最終日なんだから、ちょっとはいいよね?」
 敷島:「んー?まあ、ちょっとだけな」
 リン:「おー!」

 何をやるのかというと……。
 車が関係者入口に差し掛かる。
 そこでは今日もまたファンが入り待ちをしているのであるが、いつもはスモークの張られた車内から手を振るだけだった。
 それが今日に限っては……。

 リン:「クリプ党の鏡音リンでございます!リンは増税を阻止します!」

 ジャンボタクシー(ハイエース)なだけに、選挙演説のモノマネをするリンだった。
 リアの小窓から顔と上半身を覗かせて、わざわざ作って来たのか、『鏡音リン』と書かれたタスキまで。

 敷島:「また分かりやすいパフォーマンスを……。┐(´д`)┌」
 KAITO:「皆様、『ロボット人権保護法』の成立にご協力を」

 イケメンボカロのKAITOがリンの真似をすると、女性ファン達から黄色い歓声が上がった。

 敷島:「KAITO、お前はいい!……てか、“鉄腕アトム”みたいなこと言うな」
 MEIKO:「そうだよ、KAITO。もっと役に立つことをしなきゃ」
 敷島:「さすが、ボカロの最年長者だな」
 MEIKO:「皆様、共同募金にご協力ください」
 敷島:「今やるな!」

 因みに『赤い羽根共同募金』のポスターに初音ミクが起用されたことが、未だに納得できないMEIKOだった。

 MEIKO:「赤は私よ!あんたは緑をやりなさい!」
 初音ミク:「そんなこと言われても……」
 敷島:(『緑の羽根共同募金』のポスターの方は、断られたんだよなぁ……)

[同日10:00.天候:晴 札幌ドーム]

 巡音ルカ:「あーっ♪あーっ♪あーっ♪……すいません、私のこの音程の部分、もう少し音質を上げてもらえませんか?」
 スタッフA:「了解。調整します」
 ルカ:「お願いします」

 ボカロ達がマイクテストを行っている。

 スタッフB:「じゃ、お願いします」
 KAITO:「はい。ボーカロイドのKAITOです。よろしくお願いします」
 スタッフB:「はい、ありがとうございます。MC後に暗転、下手に捌けます」
 KAITO:「分かりました」

 主催者控室では……。

 平賀:「ベータ・プロダクションさん、キャンセルしちゃったんですか!?」
 敷島:「昨日の事故で、それどころじゃなくなったそうです」
 平賀:「ボーカロイドの歌はともかく、ロボット・パフォーマンスでそれなりに盛り上げてくれていた事務所さんだったのにねぇ……」
 敷島:「今朝からまたモメてますよ、記者会見で」
 平賀:「責任のなすりつけあいですか。困ったものですなぁ……」
 敷島:「いや、全く。何で顧問弁護士とか、こういうイベントならでは保険があるのかの理由が分かるってもんです」
 平賀:「ですねぇ」
 敷島:「それより、千田プロさん所のGUMIはどうなりました?」
 平賀:「ああ、簡単な修理でした。ラジエーターが衝撃で外れていたんですよ。ダンサブルなボカロの宿命ですよ」
 敷島:「ですね」

 メンテナンスをマニュアル化して、チェック項目も細かくしているのは敷島エージェンシーだけである。
 毎日のメンテの所には、しっかりとラジエーターなどの冷却装置も含まれている。
 敷島エージェンシーのボカロは以前、1曲歌って踊る度に氷で頭部や体を冷やしていたくらい冷却装置が貧弱なものだった。

 敷島:「昨夜と言えば、そのGUMIを連れて来たバージョン5.0ですが、井辺君を運んだ後、ちゃんと帰ったんでしょうなぁ……」
 平賀:「自分の部屋にいましたよ。何かもう、色々とサービスしてくれてました」
 敷島:「ほうほう」
 平賀:「エミリーがレーザーガン片手に追い出しましたけどね」
 敷島:「何か、今のロボットには昔の銃火器よりもレーザーの方が脅しが効きますね」
 平賀:「ロボットもシリーズが進むにつれて、随分と頑丈になってきましたからね。ハンドガンやショットガンよりも、レーザーの方がすぐにボディを焼き切れることもあって、そっちの方を警戒するようです。特に、エミリー達のは出力を自由に調整できて、1秒で頭部を貫通できるくらいですから」
 敷島:「これもまた、いずれは公安委員会から『取り外せ!』とか言われるんでしょうなぁ……」
 平賀:「でしょうね」

 そのマルチタイプ姉妹は、バックヤードの廊下を歩いていた。
 首から下げているのは通行証。
 如何にマルチタイプであろうとも、人間のように振る舞う以上、ちゃんと受付で通行証は受け取らないといけない。
 それはさておき……。

 シンディ:「……へえ、姉さん達の部屋に忍び込んでたの。そりゃ無礼にも程があるわ」
 エミリー:「最近のバージョン・シリーズはピッキングの技術もある。それも、カードキーで施解錠するドアも開けられるほどだ。それでどうやら入ったようだ」
 シンディ:「それ、姉さんにブッ壊されても文句言えない」
 エミリー:「シンディの電気鞭が欲しくなった」
 シンディ:「アタシからアリス博士にお願いしよっか?これ、アリス博士が作ってくれたの」

 シンディは腰のベルトの上から巻いている電気鞭を見た。
 普段はベルトの上から装飾品のように巻いているが、いざとなったら腰から外して振るうことができる。

 エミリー:「是非、頼む」

 エミリーは大きく頷いた。
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