ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
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“私立探偵 愛原学” 「最終電車」 東北新幹線編 2

2017-07-17 12:14:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月3日23:18.天候:晴 JR東北新幹線“やまびこ”60号10号車内]

 私の名前は私立探偵、愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は仙台での仕事を終え、最終の新幹線に飛び乗って帰京している最中なのだが、まさかあんなことになるとは……。

 愛原:「……!」

 私は仕事に疲れていたこともあり、大宮駅に到着するまで仮眠することにした。
 幸い、助手の高橋が到着前に起こしてくれるという。
 ところが私の探偵のサガというヤツか、ちょうど列車が大宮駅に到着する時間に目が覚めた。

 愛原:「おい、高橋君。もう大宮か!?」
 高橋:「いえ、それが……」

〔「お待たせ致しました。安全の確認が取れましたので、まもなく発車致します。本日、列車遅れまして大変ご迷惑をお掛け致しました」〕

 窓の外を見ると、列車は宇都宮駅に停車していた。

 愛原:「あ、なに?」

 車掌の放送通り、ホームから発車ベルの音が車内にも微かに聞こえて来た。
 新幹線ホームの発車ベルにしては短いもので、列車は慌ただしくという表現がピッタリと言った感じで発車した。

 高橋:「実はフザけた話でして……」

〔「大宮〜上野間におきまして、線路内人立ち入りの影響により、当列車は約25分ほど遅れての発車でございます。列車遅れまして、大変ご迷惑をお掛け致しました。……」〕

 愛原:「線路内人立ち入り!?新幹線に!?」
 高橋:「現場が近くでしたら、俺が捕まえてボコすところですが……」
 愛原:「せんでいい。おいおい、埼京線の乗り継ぎ、大丈夫なんだろうな?」

〔「大宮駅でお降りのお客様にお知らせ致します。大宮駅より、各線最終電車の接続待ち合わせを行います。大宮駅より各在来線、会社線にお乗り換えのお客様はお急ぎください」〕

 高橋:「大丈夫……みたいですね」
 愛原:「よし!……てか、なに?じゃあ、また大宮駅で全力ダッシュか?」
 高橋:「心配要りません。俺は足腰には自身があります」
 愛原:「若いっていいねぇ……。ま、しょうがない」

 私は席を立った。

 高橋:「先生、どちらへ?」
 愛原:「ちょっとトイレ行ってくる」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「せんでいい!」
 高橋:「俺もついでに用を足そうかと」
 愛原:「ったく、しょうがないな」

 私と愛原は連れションする形となった。
 10号車にはトイレが無いので、隣の9号車のトイレを利用することになる。
 9号車と言えばグリーン車。
 トイレくらいはビジネスクラスのものを使用させてもらってもいいだろう。
 仕事は順風満帆になってきてはいたが、私も早く出張はグリーン車を使えるようになりたいものだ。
 もっとも、ヒマだった頃は新幹線代ですら捻出できぬ有り様で、地方出張の時は普通電車や高速バスなどの交通費を安く抑えるパターンしか使えなかったのだが。
 それが今や普通車とはいえ、指定席に乗れるくらいなのだから良しとしよう。

 高橋:「さっきツイッターで見たのですが、新幹線を止めやがったバカ野郎はサツから逃げ切ったらしいです」

 高橋はニヤリと笑った。

 愛原:「そうなのか」
 高橋:「霧生市のバイオハザードの時といい、サツは役に立ちませんね。ダサくゾンビ化しやがりましたし。やはり先生のお力が1番最強ですよ」
 愛原:「バイオハザードの時はしょうがない。誰がいつゾンビ化してもおかしくなかったし、第一、高橋君だって大山寺で一時期ゾンビ化しかけたじゃないか」
 高橋:「も、申し訳ありません!」
 愛原:「とはいえ、さすがに線路内立ち入り犯を捕まえられなかったのはイタいな。大宮〜上野間って言っても随分と断片的だけど、具体的にはどの辺なのやら……」
 高橋:「さすがにそこまでツイートするヤツはいないですねぇ……」

 高橋は自分のスマホを見ながら首を傾げた。

 愛原:「! てことは、埼京線も遅れてるんじゃないのか!?」

 埼京線の大宮〜赤羽間は東北新幹線と併走している。

 高橋:「あ、そうですね。やはり、少なからず影響は出たようです」
 愛原:「そういうことなら、慌てなくても大丈夫っぽいな」
 高橋:「そうですね」
 愛原:「ま、調子に乗って乗り遅れるのもアレだから、少し急ぐくらいはするか」
 高橋:「はい」

 私と高橋はトイレで用を済ませ、私の場合はその後、洗面台で顔を洗ってから座席に戻った。

[同日23:40.天候:晴 同列車内]

 左手から上越・北陸新幹線の線路とニューシャトルの軌道が並行するようになってくると、大宮駅は近い。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。大宮の次は、上野に止まります〕

 高橋:「先生、大宮です」
 愛原:「よし。降りる準備するぞ」
 高橋:「はい。荷物は全部俺が持ちますから、先生は俺についてきてください」
 愛原:「さすがは高橋君、頼もしいな」

 私が高橋を褒めてやると、私は背後に何かの気配を感じた。
 私は降りる準備の為に、窓に背を向けていた。
 それが人の気配がするのだから、窓の外に何かいる?

 愛原:「!?」

 私がバッと振り向くと、窓の外には2つの光る物体がいた。

 高橋:「先生、どうしました?」
 愛原:「高橋君、これは……」

 私が高橋の方を向いてまた窓の外に目を向けた時、白く光る2つの物体は消えてしまっていた。

 愛原:「あれ?」
 高橋:「何かあったんですか?」
 愛原:「いや、窓の外に、丸い光るボールみたいなのが浮かんでいたんだ。列車と並行するような形で。キミは見なかったのか?」
 高橋:「すいません。降りる準備に忙しくて……。確かに何か光る物は見えたような気がしますが、街中なもので、街の明かりだと思ったんです」

 確かに、そう見えなくもない。
 だが私が見たものは、明らかに何か意思を持って飛んでいたかのように見えた。

 愛原:「まるで人魂みたいだったなぁ……」
 高橋:「ホラーネタですか?大丈夫ですよ。あのバイオハザードの時だって、人魂なんてものは無かったですし、むしろそれ以上の化け物共を俺達で殺ってきたじゃないですか」
 愛原:「まあ、そうだな」

 私はまた窓の外を見たが、人魂らしき物は無くなっていた。
 きっと、幻でも見たのだろう。
 窓の外に県道2号線の大栄橋が見えてきて、それからすぐに列車はホームへと滑り込んだ。

 愛原:「じゃ、高橋君。ドアが開いたら急ぐぞ」
 高橋:「ハイ!」
 愛原:「但し、慌てない程度にな」
 高橋:「分かりました!」
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