ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
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“Gynoid Multitype Sisters” 「“はやぶさ”1号」 3

2017-06-02 10:23:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[5月2日08:45.天候:雨 JR東北新幹線“はやぶさ”1号→JR盛岡駅新幹線ホーム]

 強い雨が降る中、17両連結の高速列車は北へと向かっていた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、盛岡です。山田線、花輪線、田沢湖線、IGRいわて銀河鉄道線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。盛岡を出ますと“はやぶさ”号は二戸(にのへ)、“こまち”号は田沢湖に止まります。盛岡で切り離しとなりますので、お乗り間違えの無いよう、ご注意ください〕

 盛岡市内に入ると列車は自動でブレーキが掛かり(ATCブレーキ)、グングン速度を落として行く。
 時々ガクッと揺れるのは雨でレールが滑り、車輪が空転しているのだろう。
 在来線の通勤電車ほどではないが、新幹線でも起こる現象というわけだ。

〔「盛岡駅14番線に到着致します。お出口は、右側です。盛岡で“はやぶさ”1号と“こまち”1号の切り離し作業を致します。“こまち”1号は8時48分、“はやぶさ”1号は8時49分の発車です。引き続きご乗車のお客様、発車までしばらくお待ちください」〕

 敷島:「おっ、もう盛岡ですよ」
 平賀:「ついつい話し込んでしまいましたよ。敷島さん、話しやすい人ですからね」
 敷島:「そうですか」
 平賀:「さすがは、ボーカロイド営業の第一人者」
 敷島:「そのボーカロイドを造った南里所長って、やっぱり凄い人だったんですね」
 平賀:「そりゃそうですよ」

 列車が駅に停車し、ドアが開いた。

〔「おはようございます。ご乗車ありがとうございました。盛岡、盛岡です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。在来線お乗り換えのお客様は……」〕

 平賀は煙草の箱を手に、席を立った。

 平賀:「ちょっと一服してきます」
 敷島:「どうぞどうぞ」

 敷島は手持ちのスマホを取り出した。

 敷島:(アリスはもう出勤したか。トニーは二海が見ててくれてるからな。保育園不足の待機児童解消策に、メイドロイドを売り込むという方法は……)

 こんな時でも営業には余念が無い。
 が、あいにく敷島エージェンシーの業種ではメイドロイドの売り込みはできない。
 一手に行っているのはDCJ(デイライト・コーポレーション・ジャパン)である。

 敷島がスマホとPCの画面を見ていると、車内放送が流れた。

〔「お待たせ致しました。8時49分発、“はやぶさ”1号、新函館北斗行き、まもなく発車致します。ご利用のお客様、ご乗車になりましてお待ちください」〕

 平賀が戻ってきた。
 煙草を吸わない敷島にとっては、平賀の煙草の臭いはすぐに分かる。

 平賀:「秋田新幹線にメイドロイドが乗ってましたよ」
 敷島:「ほー、そうですか。平賀先生規格の量産機ですか?」
 平賀:「そうです。今では高給取りの若年層もユーザーになっているようです」
 敷島:「なるほど」

 そういう点においては、敷島夫婦も似たようなものだろう。
 列車は雨の中、定刻通りに発車した。

 平賀:「ただ、大雨で秋田新幹線は山脈越えが大変みたいですよ。雨量規制掛かってるみたいです」
 敷島:「そんなに強い雨ですか?」

 敷島は窓の外を見た。
 確かに窓に打ち付ける雨粒は大きい。

 敷島:「さっきそのLED表示板に出て来た天気予報を見たら、札幌は晴みたいですけどね」
 平賀:「ええ。北海道は天気が良いみたいなので、東北を越えたら安心なんだと思います」

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北新幹線、“はやぶさ”号、新函館北斗行きです。次は、二戸に止まります。……〕
〔「盛岡からご乗車のお客様、お待たせ致しました。おはようございます。本日も東北新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。8時49分発の“はやぶさ”1号、新函館北斗行きです。停車駅は二戸、七戸十和田、新青森、奥津軽いまべつ、木古内(きこない)、終点新函館北斗の順に止まります。【中略】終点、新函館北斗には10時57分の到着です。【中略】次は二戸に止まります」〕

 平賀:「どれ、ちょっと後ろのコ達の様子でも見てきましょう」
 敷島:「私も井辺君に話が……」

 9号車に行くと、リン達がはしゃいで……はいなかった。

 敷島:「ヤケに静かだな」

 向かい合わせになっている座席を見ると、リン達が携帯ゲーム機でカチカチカチとボタンを連打していた。

 井辺:「あっ、平賀教授!今日からよろしくお願い致します」
 平賀:「いえいえ、こちらこそ。それより、何だか静かですね」
 井辺:「元々ゲームが好きな鏡音さん達なんですが、新しいゲームをやり始めてから、ずっとあの調子なんです」
 平賀:「まあ、学習能力を上げるという意味では、けして悪いことではないですが……」

 他のボーカロイド達は手持無沙汰になっている為か、省電力モードが働いている。
 つまり、スリープ状態に入っているわけだ。

 敷島:「ミク、起きろ。平賀先生だぞ」
 ミク:「……はっ!」

 小さくモーターが再起動する音が聞こえた。

 ミク:「あっ、平賀博士!おはようございます!」
 平賀:「おはよう。特に、不具合などは出てないな?」
 ミク:「はい。特に異常ありません」
 平賀:「よし。問診終了」
 敷島:「問診なんですか?!」

 因みに移動中、ボーカロイド達は宣材写真(という名のクリプトン公式イラスト)通りの衣装を着ているわけではない。
 あれはあくまで、ステージ衣装。
 ミクの場合は白いブラウスの上に紺色のベストを羽織り、エメラルドグリーンのリボンを着けている。
 スカートも黒いが、裾の所にリボンと同じ色のラインが入っていた。
 衣装は1番露出度の高いMEIKOでさえ、移動中は普通の服を着ている。
 ただ、赤いコートを着たり、もしくはチュニックを着たりとイメージカラーに沿った私服ではある。
 リンだけは殆ど宣材と変わらない恰好だった。
 顔も隠さないのですぐにファンに顔バレしてしまうのだが、リン達にとっては別に苦というわけではなく、笑顔でファンサービスをしている。

 平賀:「人間と違って、こういう受け答えができればOKなんですよ」
 敷島:「なるほど。あ、井辺君。さっき、ドームの関係者からメールがあって……」
 井辺:「はい」

 フル規格の東北新幹線は、多少の大雨でも平気である。
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