ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“Gynoid Multitype Cindy” 「マルチタイプの光と闇」

2016-12-13 12:11:08 | アンドロイドマスターシリーズ
[12月12日09:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 豊洲アルカディアビル前]

 敷島を乗せたタクシーがビルの前に到着する。
 そこの前には大勢のマスコミが待ち構えていた。

 記者A:「おはようございます、敷島社長!」
 敷島:「おはようございます」
 記者B:「昨日のマルチタイプ暴走事件について、どう思われますか?」
 記者C:「昨日の事件は敷島エージェンシーさんにとっても、他人事ではないと思いますが?」
 敷島:「昨日の事件については、とても残念なことだと思っております。確かに元々暴走していたルディを抱え込んでしまったサーカス団さんには気の毒でしょうが、まだ暴走の原因がはっきりしていないことには、具体的なことは申し上げられません」
 記者A:「敷島社長の秘書のシンディさんの損傷具合はいかがですか?」
 敷島:「修理可能な範囲です。只今、デイライト・コーポレーションさんにて鋭意修理を行っております」
 記者D:「そちらの方、えーっと……すいません、代替機ですか?」
 敷島:「えーと、ですねぇ……」

 記者Dが敷島と一緒にタクシーから降りて来た者を見ながら聞いた。
 で、何故か答えに詰まる敷島。
 そこにいたのは……。

 エミリー:「秘書代行として・シンディの・代わりに・3日間・お世話に・なります。エミリー・ファースト・です。よろしく・お願い・します」
 敷島:「ちょっと待て。俺はまだ承認してないぞ?別に3日くらいシンディがいなくたって、俺1人で何とかする。一海もいるしな」
 エミリー:「プロフェッサー平賀の・ご命令・です。御理解・願います」
 記者E:「あの平賀教授の?やはり今回の事件は、KR団が関わっているということですか?」
 敷島:「ああ、いえ!そういうことじゃなくて……!ま、まだ現時点では何も言えません。その辺につきましては、むしろ警視庁の方から何かあると思いますので、そちらにお願いします」
 記者F:「こちらのロイドに対して、何か暴走対策の強化といった予定はあるのでしょうか?」
 敷島:「元々こちらは二重三重の対策を取ってありますので、こちらのロイドについては何も御心配は要りません。すいません、そろそろ会社に行きませんと……」

 敷島がエントランスから中に入ろうとする中、エミリーと出迎えに来た井辺が敷島を先導した。
 そして、ようやくエレベーターに乗り込む。

 井辺:「大丈夫ですか、社長?」
 敷島:「ああ。助かったよ。ありがとう、2人とも」
 井辺:「記者会見の準備とかはしますか?」
 敷島:「今回のは事件なんだから、警視庁の記者会見の方が先だろう?マスコミからの取材申し込みに対しては、そう言っといてくれないか。どうせ事件に絡んだ質問をするだろうから、警察の見解を待ってからだってさ」
 井辺:「分かりました」

 ピンポーン♪
〔18階です〕

 敷島達はエレベーターから降りた。

 敷島:「……ってか、本当にエミリーはシンディの代わりをやる気か?」
 エミリー:「イエス。よろしく・お願い・致します」
 敷島:「…………」
 井辺:「社長、エミリーさんはシンディさんの同型機ですから、特に心配は無いと思われますが……」
 敷島:「いや、仕事の出来に関して心配してるんじゃない」
 井辺:「は?」
 敷島:(シンディの監視が無くなったから、自由に遊びに行こうと思っていたのに……!今度はエミリーの監視かよ!)

 敷島は社長室に入ると、すぐに平賀に電話した。

 敷島:「あ、おはようございます。敷島ですが、今電話大丈夫ですか?」
 平賀:「もちろん。今、テレビで見てたんですがね、さすがは敷島さんだ。凄い囲み取材でしたね」
 敷島:「私はその囲み取材されるミク達を守る側なのに、される方になるってどんだけだよって思います」
 平賀:「敷島さんは……いや、敷島エージェンシーさんはただの芸能プロダクションじゃないですからね」
 敷島:「まあ、そうなんですけどねぇ……」
 平賀:「それより、そろそろマスコミが嗅ぎ付けそうですよ」
 敷島:「何がですか?」
 平賀:「アレックスと名乗っていたルディが、どうしてあのタイミングで爆発したかの原因です。どうも件のサーカス団は、団員のロボットに対して、お世辞にも厚遇とは言えない待遇をしていたようですね。それでいて、ミスしたらとんでもない仕置きをするといった、大昔の女工哀史もびっくりの待遇だ」
 敷島:「シンディのメモリーを見せてもらいましたが、確かにアレックス……ルディは仲間の団員を破壊された恨みがきっかけとなって暴走したようです」
 平賀:「そこで問題なのが、敷島エージェンシーさんなんですよ」
 敷島:「えっ?」
 平賀:「恐らく、マスコミが聞いてくるでしょう。サーカスもアイドルも、ロボットやロイドを人間へのエンターテイメントとして活動していることに共通点があります。敷島エージェンシーさんでは、まさかあのロボット大サーカスみたいな待遇はしていないでしょうね、と」
 敷島:「バカな!こっちはちゃんと定期的にメンテナンスを行っていますよ。DCJさんとも契約してね。今日なんか、MEIKOがオーバーホールに入ってます」
 平賀:「それならいいんですが……」
 敷島:「それより私が電話したのは、エミリーのことなんですよ」
 平賀:「エミリーがどうかしましたか?」
 敷島:「いえ、あの……シンディがいないのは3日間だけですし、それくらいでしたら私1人で何とかできるので、別にエミリーをお貸し頂かなくても……と」
 平賀:「それは甘いってなもんです。敷島さんはKR団の残党から命を狙われかねない身です。やはり護衛は必要ですよ」
 敷島:「でもそれは、平賀先生も同じなのでは?」
 平賀:「大丈夫。代わりに七海を連れて来てるので。自分の護衛には七海で十分です」
 敷島:「ですかねぇ……」

 七海の仕様は、もはやただのメイドロイドではなく、簡素的なマルチタイプと言って良いくらいの頑丈さと力を持っている。
 なので、最高顧問には七海みたいな仕様のものを造れば良いのではないかと思われている。

 平賀:「ま、ずっと記念館に閉じ込めておくのも何ですから、こういう機会に外に出してやらないとエミリーもかわいそうなんでね。シンディだと思って使ってやってくださいよ」
 敷島:「かわいそう……ね。分かりましたよ。レンタル料はサーカス団にでも請求してください。どうせ払ってもらえないだろうけど……。それじゃ、失礼します」

 敷島は電話を切った。

 エミリー:「敷島・社長。コーヒー・です」
 敷島:「ありがとう。財団時代……いや、南里研究所時代からそれやってくれてたな」
 エミリー:「イエス」
 敷島:「あの頃は七海もよく研究所に来ていて、七海にコーヒー頼むと、紅茶とコーヒーをブレンドした『紅ヒー』なるものを持って来て、よくお前に怒られてたっけな。『ふざけるな!どこを・どう・漢字変換したら・そうなるのだ!』ってな」
 エミリー:「お恥ずかしい・ことです」
 敷島:「もはや俺と平賀先生で、『おっ?またメイド長さんの指導入ったー!』なんてネタにしてたよ」

 今や七海がメイドロイドの長みたいなものであるが、その七海が未だにエミリーのことを「メイド長」と呼ぶのだ。

 敷島:「あれから10年くらい経つのか?懐かしいなぁ……」

 敷島はコーヒーをズズズと啜った。
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