ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“大魔道師の弟子” 「魔界の不思議な旅 〜魔王城〜」 5

2016-11-05 22:12:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[10月24日10:45.天候:晴 アルカディアメトロ1番街駅]

 稲生を乗せた旧国鉄101系電車は、高架線の上を軽やかに走行していた。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。「まもなく1番街、1番街です。お出口は、右側です。中央線、1号線、3号線、軌道線ターミナルはお乗り換えです。尚この電車、準急で参りましたが、1番街から先は各駅停車となります。準急運転への御協力、ありがとうございました(※)」〕

 旧国鉄101系の一部編成には、通勤電車でありながら、車内チャイムを搭載していたものがあったらしい。
 曲名は“ハイケンスのセレナーデ”。
 高架鉄道では通常、各駅停車と急行電車しか運転されていない。
 準急電車が臨時に運転されるのは、ダイヤが乱れた時の調整用という日本では有り得ない運行管理である。
 各駅停車が遅れていると準急に格上げしたり、先行の急行電車を準急に格下げして間隔調整を行ったりしているという。
 地下鉄線ではそのようなことは無いが、高架線ではこのようにしている為、明確な時刻表が無かったりする。
 どのタイミングで各駅停車や急行が準急に化けるのかは運行管理センター次第であるが、大抵は1番街駅などターミナル駅を境に変更するようである。
 1番街から先は各駅停車ということは、稲生が乗っていた電車は遅延していた各駅停車の可能性がある。
 つまり、遅れを回復させる為の回復運転が『停車駅飛ばし』というトンデモ運行なのである。
 実は何もこれ、アルカディアメトロに限らない。
 ニューヨークの地下鉄でも似たようなことが行われている。
 各駅停車が遅れていると、急行に格上げして停車駅飛ばしを行うのだという。
 ニューヨークの場合は突然行われるので、まだターミナル毎に変更するアルカディアメトロの方がマシか。
 団子運転に陥った場合、団子の先頭にいる電車に対して停車駅飛ばしの指示を行うもよう。

 稲生:(僕は準急に乗れて助かったけど……)

 電車がホームに滑り込む。
 プシューとエアの音がしてドアが開くと、稲生は電車を降りた。

 稲生:「あっ!」

 環状線ホームからは、中央線ホームを見ることができる。
 中央線ホームは2面4線なのだが、通常の各駅停車と急行は1面2線のホームだけで事足りるので、もう1面のホームは臨時ホームである。
 で、実質的にそこから冥鉄列車が発車するわけである。
 稲生がそれを見ると、臨時ホームに焦げ茶色の電気機関車に同じ色の旧型客車を8両繋いだ列車が停車していた。

 稲生:「凄いED16だ!」

 稲生がホームの上からスマホで写真を取った。

 稲生:「一体、いつの車両なんだろう?」
 駅員:「あれは第二次世界大戦中に被災した列車の幽霊です」

 ホームにいた駅員が稲生に話し掛けてきた。

 稲生:「えっ?そんな昔なの!?」
 駅員:「はい。何でも大戦末期、中央本線を走行中に米軍の機銃掃射を受けた列車があって、多数の死傷者が出たそうです。冥界鉄道では、そういった列車も運行させているのですよ」
 稲生:(僕が乗る列車は、どういうヤツなんだろう……?)

[同日11:15.天候:晴 魔王城新館]

 通常、臨時ホームへの立ち入りはできないのだが、稲生だけは魔道師ということで特別に立ち入りが許可された。
 そこで写真を撮っていたのだが、どうも撮る度に死者を冒涜しているような気がして、数枚だけ取って引き揚げた。
 魔道師は人間界と魔界への行き来に便乗しているが、本来、冥鉄はあの世とこの世を結ぶ幽霊列車で、死者の魂を運ぶ鉄道なのである。
 稲生は1番街駅をあとにすると、急いで魔王城に戻った。
 正門では当然ながら厳しい出入管理が行われているのだが、稲生が既に発行されているパスを魔族の衛兵に見せると、すぐに中に入れてくれた。

 マリア:「勇太!」
 稲生:「マリアさん、戻りました」
 マリア:「ああ。無事で良かった」
 稲生:「無事ですよ」
 マリア:「妖狐に食われたりしてないか心配だったんだ」
 稲生:「はははっ(笑)、威吹はそんなヤツじゃないですよ。それより、イリーナ先生は?」
 マリア:「宮廷魔導師と会談中」
 稲生:「ポーリン先生と?よく、ポーリン先生が許可しましたね」
 マリア:「『別に、ただ政治的な会談をするだけなんだからねっ!』といった感じらしい」
 稲生:「ツンデレ!?」
 マリア:「つんでれ?これはまた難しい日本語を……」
 稲生:「あ、いや……。それで、僕達はどうしてましょう?」
 マリア:「今日出発の冥鉄列車に乗るらしいけど、師匠達が長話するようだと、もう少しここでゆっくりするハメになりそうだ」
 稲生:「そうですか」
 マリア:「まあ、私達は城内の移動の自由が確保されているから、暇つぶしに城内を歩いてもいいだろう。但し、旧館だけは行かない方がいい」
 稲生:「旧館は危険ですからね。でもまあ、僕はちょっと休んでいようかと……」
 マリア:「確かに疲れた顔してるな。ま、しょうがないか。真夜中に400ml献血させられて、ほとんど寝不足のままサウスエンドまで行ったんだからな」
 稲生:「それもそうですね」

 で、南端村では坂吹との話で夜半過ぎまで起きていたというのもある。

 マリア:「あの様子じゃ、高い確率で長話になりそうだから、休んでた方がいいな」
 稲生:「そうさせてもらいます。長くなりそうですか?」
 マリア:「婆さん同士の話ってのは、往々にしてそういうものさ」

 マリアは肩を竦めた。

 横田:「クフフフフフフフフ……。先般の理事会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 稲生:「出たっ!」
 マリア:「何しに来た!?」
 横田:「ゲストルームをご希望とのことで、ご案内させて頂きます。さあ、こちらです」
 マリア:「どこで聞いた?」
 横田:「もちろん、通りすがりでありますよ。クフフフフフフフ……」
 稲生:「絶対、ウソだ」
 横田:「ところで稲生さん、本日のマリアンナさんの下着の色と形状は……ヒソヒソヒソ……」
 稲生:「マリアさん、このオジさん、スマキにして旧館に放り投げて来ましょうか?」
 マリア:「やっちまえ!!」
 横田:「そんな、御無体な!」
 マリア:「変態行為もいい加減にしろよ!」
 稲生:「そうだそうだ!(でも、今日のマリアさんは、少し派手目のものを着けてるんだな)」

 稲生とマリアは横田を【自主規制】した後、鍵だけ頂戴してゲストルームに向かった。
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小説
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1 コメント

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つぶやき (雲羽百三)
2016-11-06 19:24:32
それにしても、リアル横田さんも顕正新聞に出てこなくなったな……。
この人も粛清されたか……。

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