報恩坊の怪しい偽作家!

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“Gynoid Multitype Sisters” 「イベント前夜の魔の嵐 〜さいたま編〜」

2017-08-15 20:12:46 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月9日20:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島は帰宅後、夕食を取っていた。

 アリス:「今日はこのまま帰って来たのね。向こうのマンションに帰るかと思ったわ」
 敷島:「お前の言う通り、KR団も崩壊した今、向こうのマンションにいてもしょうがないって感じがしてさ。マンスリーマンションだから、今月一杯で引き払うよ」
 アリス:「ということは……」
 敷島:「ここから電車通勤にするよ。もっとも、井辺君からは役員車にしたらどうかって言われたんだけど、まだそんな立場じゃないし」
 エミリー:「いえ、十分その立場だと思われます」

 因みに、この日の会社泊まり(ボーカロイド護衛)の任に就いているのはシンディ。
 KR団が崩壊した今でも、ボーカロイドの価値を狙う輩の警戒は引き続き行っている。
 エミリーは敷島とアリスにビールを注いだ。
 ここでは護衛兼メイドである。
 本物のメイドロイドである二海(ふたみ)は、どちらかというとナースメイド(乳母)の役割が大きい。
 もちろんマルチタイプは、メイドの仕事全てこなせるハウスキーパーなのだが。
 因みにハウスキーパーは全てのメイドを統括する家政婦長のことであるが、自身はメイドではないことに留意する必要がある。
 “アルプスの少女ハイジ”に出てくるクララの家のロッテンマイヤーがその例である。
 つまり、エミリーとシンディの立場はロッテンマイヤーと同等なのである。
 とはいえ、そこはマルチタイプ。
 主人の求めに応じて、そこは臨機応変に対応できる。

 敷島:「いきなりそんな成金趣味したくないからなぁ……。大日本電機時代は大宮から京浜東北線に乗って、東京駅まで50分掛けて通勤したもんだ。因みにのその時の車両、まだ209系だったぞ」
 アリス:「そんなマニアックな話されても、読者の大半は付いて行けないから」

 今はE233系1000番台で統一されている京浜東北線。
 209系とはその一世代前の車両、6ドア車が連結されていた頃の電車である。

 敷島:「明日の夜、そのまま仙台入りするよ」
 アリス:「本当に3連休は休みが無いのね」
 敷島:「イベンターが連休に休んじゃイカンよ。なあ、トニー?」
 トニー:「パーパ。えみりぃ、だっこだっこ」
 エミリー:「はい、抱っこでございますね」

 エミリーは敷島とアリスの長男である幼子トニーを抱き抱えた。

 トニー:「むにむに♪むにゅむにゅ♪」

 トニーはエミリーの巨乳(93センチ)を小さな両手で持ち上げる仕草をした。

 エミリー:「お父様に似て、お目利き奇特にございますね」
 敷島:「何で俺なんだよ?」
 アリス:「いや、100パーあんた似だと思う」
 敷島:「俺はあんなこと教えてねーぞ」

 エミリーはピーンと来た。

 エミリー:(御夫婦の夜の営業の際、確か敷島さんがアリス博士のオッパイの重さを手で測っていたような……?)
 アリス:「アンタ、同じことしてたじゃない」
 敷島:「それとこれとは関係無いって」
 エミリー:「関係、大ありでございます」
 アリス:「ほらぁ!」
 敷島:「エミリー、そこは俺の味方してくれよ。俺がマスターなんだろ?」
 エミリー:「このエミリー・ファースト、嘘をつく能力は持ち合わせてございません」
 敷島:「くそ……」
 トニー:「ふたみ、おっぱいおっぱい」
 二海:「はい、少々お待ちください」
 敷島:「それにしても……」

 敷島はビールの入ったグラスを空けた。

 敷島:「マルチタイプにしろメイドロイドにしろ、どうしてこいつらのオッパイは皆揃ってデカいんだ?」
 アリス:「メイドロイドの場合は平賀教授の趣味でしょ?」
 敷島:「平賀先生、貧乳の赤月……もとい、平賀奈津子先生と結婚してからに……」

 当初、ボーカロイド達の間では敷島と奈津子が結婚するものとばかり思われていた。
 エミリーもその確率を高めに算出していた。
 だが、蓋を開けてみたらどんでん返しが待っていた。

 敷島:「お前らは?南里所長から聞いてないんだ」
 エミリー:「私達のモデルになった女性が巨乳だったからと聞いています」
 敷島:「そういうことか。皆してスケベ野郎だな」
 アリス:「アンタも人の事言えないでしょ」

 南里志郎、十条伝助、ウィリアム・フォレスト。
 トリオ・ザ・マッドサイエンティストだのマッドサイエンティスト版スリーアミーゴスだの呼ばれた3人組。
 そんな3人組の心を掴んで離さなかった女性研究者がいた。
 南里はエミリーを、ウィリアムはシンディをそれぞれ彼女に似せて設計したという。
 同型の姉妹機とはいえ、双子のようにそっくりなのはそこに理由がある。
 ただ、さすがに製作費用を出した出資元(旧ソ連政府)は見分けを付けるように注文を付け、髪の色と髪型、瞳の色を変えることで対応した。
 エミリーが緑眼である。

[1時間後]

 アリス:「だーかーらぁ!私は執事は初老派なの!ロイとかキールみたいなのは論外ッ!」
 敷島:「いやいやいや!昨今の鬼畜系美形執事には、なかなかの人気があるもんだ!これは売れるぞ!!」
 二海:「お2人とも盛り上がってますね、エミリー様」
 エミリー:「酒の力とはいえ夫婦円満だ」

 エミリーは大きく頷いた。

 エミリー:(この勢いでお2人目を作って頂ければ、私とシンディの相続先が……)

 うんうんと頷くエミリー。

 アリス:「おい、エミリー!……ヒック」
 エミリー:「な、何でしょう?」
 アリス:「ブハァー……!」(酒臭い息を吐くアリス)
 エミリー:「あの……?」
 アリス:「マルチタイプが勝手にアタシら未来予想図描くなぁーっ!」
 エミリー:「よ、読まれてる?!」
 アリス:「だいたい、あんたのそのメイド服はなに?あんたメイドなめてんの?髪は結ってキャップの中に入れてくれよフレンチはもうお腹一杯だよそれもうコスプレ!」
 エミリー:「あ、アリス博士!?それ以上の飲酒はお体に障りますので……」
 敷島:「てか、エミリーのその服、メイド服だったのか?」
 エミリー:「いえ、そういうつもりでは……」

 シンディとは色違いである。
 シンディがもっと青っぽい色合いなのに対し、エミリーは黒に近い紺色である。
 タートルネックにノースリーブの上半身に、下はスリットの深いロングスカートである。
 だがこの上に、メイドが着けているあのフリル付きの白エプロンを着けたらどうなるか。

 アリス:「おい、タカオぉ!せっかくこれからレベル高いメイド談義しよってんだからトークしろよ、ああ!?」
 敷島:「お前、そんな悪酔いするタイプだったっけ?」

 敷島はアリスが飲んでいるビールの瓶を見た。

 敷島:「なにこれ?輸入ビール?……ん?アメリカ合衆国ニューヨーク産“サブウェイアタック”?地下鉄特攻?……アルコール50パーって!?ビールじゃねーだろ、これ!?どう見ても!」
 アリス:「あっぱれジャパン♪春夏秋冬〜♪四季の〜色♪染めあ〜げて♪ヒャッハー!空は日本晴れ〜♪」
 敷島:「うわっ!?いきなり某有名パチ台確変テーマソング歌い出した!?アリス、しっかりしろ!」
 アリス:「めでためーでたーの♪祭りの夜♪キミと2人きり〜♪ヒャッハー!」
 敷島:「今度は別バージョンだぞ!?お前、俺に浮気するなっつっといて、自分はパチか!」
 アリス:「めでた♪め〜でた〜の♪……ヒック」

 完全に酔い潰れたアリスだった。

 エミリー:「……奥様をベッドに連れて行きます」
 敷島:「よろしく頼む。俺も別の意味で頭痛くなってきた」

 尚、アリスは後に、今回のことは敷島の自主的な単身赴任が終了するという嬉しさからついつい痛飲してしまったと述べている。

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