ノベラーエクスプレス関東

 自作の小説がメインのブログです。
 主にSF、ファンタジー、ミステリーの脳内妄想を文章化したものです。

“大魔道師の弟子” 「交渉の終わり」

2017-04-05 21:16:40 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月27日18:00.天候:曇 山形県山形市 ホテルメトロポリタン山形・レストラン]

 ダンテ:「皆、今日はよくやってくれた。少人数だけれども、夕食を取るとしよう。遠慮しないで好きなもの食べてくれ」
 稲生:「ありがとうございます」
 ダンテ:「特に、マリアンナ君」
 マリア:「はい!」
 ダンテ:「向こうの挑発に乗らず、よく我慢した。こちらから手出しをしていれば、もっと交渉が不利になるところだった」
 マリア:「お褒めに預かりまして、何よりです」
 ダンテ:「服とかケガとか大丈夫だったかい?」
 マリア:「ええ。服はボタンが飛んだくらいですし、殴られた所は回復薬がありましたので。それに、ユウタがキレるところでしたので、むしろそれが大変でした」
 稲生:「いや、だって……!」
 ダンテ:「それも向こうさんとしては、織り込み済みだったのだろう。だが、そうはいかなかった」

 マリアが東アジア魔道団の団員に掴みかかられた時、着ていた緑色のブレザーのボタンが取れ、顔を殴られた。
 稲生が思わぬ力を爆発させるところだったが、マリアの人形達がそれを取り押さえた。

 イリーナ:「こっちが完璧な被害者だったからね、『被害者ビジネス』の皆さん達も、形無しだったでしょう」

 そこへまず食前酒が運ばれてくる。

 ダンテ:「シェフのおすすめコースを頼んだから、それを食べてくれ」
 稲生:「はい、ありがとうございます」
 ダンテ:「まずは乾杯と行こうか」

 4人は乾杯した。

 ダンテ:「明日もまた祝賀会があるから大変だ」
 稲生:「明日、ですか?」
 ダンテ:「うむ。帰りの飛行機は成田からだというのは知っているだろう?」
 稲生:「はい」
 ダンテ:「飛行機の乗り継ぎの関係で、成田に一泊することも知ってるね?」
 稲生:「はい」
 ダンテ:「それを聞きつけたアナスタシア達が、私の宿泊するホテルのコンベンションホールを貸し切って、パーティをやるなんて言い出したんだ」
 イリーナ:「ナスターシャ、やりますねぇ……」
 ダンテ:「ま、こういう機会でもないとゆっくり過ごせないという点は認めるが……。キミ達は、そこまで付き合ってくれなくても構わんよ。祝賀会なら、今こうして行っている」
 イリーナ:「そうですねぇ……」
 稲生:「取りあえず、成田空港までは送らせてください。そのつもりで、もうチケットなどは取ってありますので」
 ダンテ:「構わんよ。彼らがちゃんと移動するまでは、単独行動は控えた方が良い」
 稲生:「まだ危険ですか?」
 ダンテ:「あの支部長や副長は何もしてこないだろうが、あの時みたいに血の気の多い者達が何をしてくるかは分からないからね」
 イリーナ:「言えてますね。分かった?このホテルからは出ちゃダメよ?私みたいに、早く休んで……」
 ダンテ:「イリーナ、食べながら寝ない」
 稲生:「はははは……。そうですね。分かりました。幸い、明日は出発がゆっくりなので」
 ダンテ:「おお、そうか。電車で移動するんだったな」
 稲生:「そうです。大師匠様を普通列車の普通車で移動して頂くのは、何とも気が引けますが……」
 ダンテ:「心配要らん。今でこそ、私は崇める者がいるようになってしまったが、昔は貨車や貨物船で移動していたくらいだ。あの時は大変だった。それと比べれば、ちゃんと旅客用の乗り物に乗れるのだから、これほどの贅沢は無い。そうだろ、イリーナ?」
 イリーナ:「そうですね。タイタニック号が沈んだ時も、予算足りなくて、やっと乗れたのは貨物船でしたからね」
 稲生:「タイタニック号ですか!」
 イリーナ:「おかげで、沈没に巻き込まれることは無かったけどね。今こうして高級ホテルに泊まって、そのレストランで食事ができるようになったのは、ここ数十年くらいの間だけよ」
 稲生:「そうだったんですか」
 マリア:「この数十年の間に、何があったのか興味があります。だけど、魔道書には殆ど書かれていません」
 イリーナ:「それはミドルマスターになってから、教えてあげるわ」

 イリーナは軽くウィンクした。
 まあ、政治家や富豪から資金を受けられるようになったというのが正解だが。

[同日20:00.天候:曇 同ホテル・客室]

 食事が終わってから、4人の魔道師は部屋に戻った。
 東京の時と同じく、イリーナとダンテはツインルームに入っていた。
 稲生とマリアは、それぞれシングルルームに入っている。
 マリアは部屋に戻ると、すぐに入浴の準備を始めた。
 緑色のブレザーを脱いで、ハンガーに掛ける。
 夕食前にもしたのだが、もう1度消臭剤をスプレーした。
 ゴミ箱には破られたストッキングや、相手の返り血が付いたブラウスが捨てられている。

 マリア:「チッ……!汚らわしい……!」

 相手方の魔道師は男だった為、尚更マリアのトラウマに火を点けた。

 マリア:「ブレザーとブラウス、もう1着ずつ持って来るんだったな……。ユウタ、あと何泊するんだったっけ……?」

 ブラウスとグレーのプリーツスカートを脱いで下着姿になっていると、部屋のインターホンが鳴った。

 マリア:「う……ユウタか?こんな時に……」

 マリアは今しがた脱いだ服を急いで着直すと、ドアの所へ向かった。
 一応、ドアに付いている覗き窓から外を見ると、確かに稲生だった。

 マリア:「なに?」
 稲生:「マリアさん、一緒に映画を観ませんか?」
 マリア:「あー、えーと……」
 稲生:「あ、いえ無理にとは……」
 マリア:「ま、いいや。入って」
 稲生:「お邪魔しまーす!」

 稲生が中に入ると、バスルームから水の音がした。

 稲生:「! もしかして、これからお風呂でした?」
 マリア:「まあね。他にやること無いから、さっさと入ろうと思った」
 稲生:「あ、だったら、やっぱり……」
 マリア:「いいよいいよ。ユウタがいてくれた方が気が紛れる」
 稲生:「気が紛れる?」
 マリア:「せっかくバスタブにお湯を張ったんだから、私はちょっと入ってくる。映画は何時から?」
 稲生:「VODなので、いつでもOKですよ」
 マリア:「分かった。じゃあ、ちょっと待ってて」
 稲生:「はい」

 マリアは部屋備え付けのワンピースタイプのナイトウェアと、換えの下着を手にしてバスルームに向かった。

 稲生:「何の映画がいいかな……」

 後で、この事を知った他の門内魔道師達が大騒ぎしたらしい。
 1番大きく騒がれた内容は、魔女であったマリアが同じ部屋に男を招き入れた上、ドア1つ隔てただけのバスルームに入っていたことである。
 入浴剤を入れたマリアは、そのままバスタブの湯に浸かった。

 マリア:(ユウタは特別……)

 そんな稲生は、

 稲生:「てか、何か外が騒がしいんだけど……」

 部屋の外から見える何台ものパトカーと、それらが放つサイレンや赤ランプの波に、好きな元魔女の無防備さを気にする余裕が無かっただけであろうか。
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