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“大魔道師の弟子” 「稲生の孤独な戦い」 3

2017-05-12 10:19:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[月日不明 時刻不明(当該内部の時計が正しいという保証が無い為) 天候:晴 東京中央学園・旧校舎(幻影)]

 稲生は再び校長室に戻ってきた。
 すると校長室の中にはテレビがあり、ビデオデッキまであることが分かった。
 通電していることは照明の点灯で分かる。
 因みにブラウン管テレビのスイッチだけ入れてみても、チャンネルは全て砂嵐になっていた。
 通電はしていても、テレビ線は繋がっていないらしい。
 校長室にはビデオテープは無かった。

 稲生:「ん?」

 職員室に行こうとして気になったのはトイレ。
 元々は汲み取り式のトイレだった旧校舎だが、教育資料館として再生された後は職員用トイレだった所以外は使用禁止になっている。
 で、1ヶ所だけ使用可能の元職員用トイレにあっては、水洗式に改築されている。
 改築といっても、元々は取り壊す予定だった旧校舎ということもあってか、そのリニューアルは最低限のものになっている。
 具体的には和式だったトイレが洋式化され、水洗式になったというだけ。
 新校舎のトイレも直されたのだが、その時に使用されていた便器を中古品として持ってきたというものだった。
 実は旧校舎のトイレに関しては、そんなに怪談話の数は多くない。
 それは、“花子さん”がボスとして君臨していたからだろうと思われる。
 逆に旧校舎から追いやられたトイレ怪談の者達が新校舎や外部トイレに流れてきて、それでかなりの数になったのだろう。
 1つの大きな犯罪組織を潰してみたら、それに抑圧されていた小さなギャング団が大っぴらに活動を始めて余計治安が悪化するのと同じことだ(日本でも暴力団を簡単に潰せない理由がここにある)。

 稲生:「何だか血の臭いがする」

 稲生は男子トイレの中に入った。

 稲生:「うわぁ……」

 そのトイレの中は血だらけだった。
 誰の血かは分からない。
 それらしき死体だのは無かったからだった。
 洋式化されている便器の中も血で真っ赤になっていた。

 稲生:「気持ち悪いから流そう」

 稲生は水洗レバーを引いた。

 稲生:「あれ?」

 ところが、タンクに水が入っていないせいなのか、全く水が流れる気配がしない。
 試しに小便器のボタンも押してみたが、水が出てこなかった。
 通電はしていても、断水はしているらしい。

 稲生:「気持ち悪いから、何だか流したいよ。確か、ここに水道の配管があったナ……」

 稲生はトイレの中の壁にある点検口を開いた。
 するとそこには配管があって、本来はあるはずのバルブハンドルが無くなっていた。

 稲生:「水を流させない気か……」

 稲生は水を流すのを諦めて、他の場所を探すことにした。
 少なくともトイレの中にビデオテープは見つからなかったからだ。

 それから……。

 稲生:「あった!」

 稲生はビデオテープを見つけた。
 それは先ほど開いた防火シャッターの中、2階へ上がる階段を塞いでいたキャビネットの引き出しの中にあった。

 稲生:「この中に脱出のヒントが隠されている!」

 稲生は急いで校長室に戻り、テープをデッキに差し込んだ。
 すぐにデッキが『▶ Play』の表示を出す。

 稲生:「わっ!?」

 稲生がびっくりしたのは、画面にいきなり男の顔のアップが映ったからだった。
 すぐにその男の顔が画面から離れる。
 どうやら男達は、この東京中央学園の男子生徒達のようだ。
 いつ頃撮られたビデオテープなのかは分からない。
 ただ、撮影されたのが深夜であること、バックに新校舎が映っていたことから、そんなに大昔というわけでもないようだ。
 そして旧校舎は放置されたままの廃屋状態。
 曲がりなりにも教育資料館として、最低限のリニューアルだけでもされた今とは状態が異なっている。

 以下は撮影者達の視点となる。

[月日不明 時刻不明(深夜) 天候:晴 東京中央学園・旧校舎]

 新藤:「おい、こいつ本当に大丈夫か?」
 笠間:「心配するなって、新藤。あれでも元・映画研究部の部員だぜ?」
 新藤:「いいか?素人なんていらねーんだ。摩耶観光ホテルの二の舞はカンベンだぞ?分かったか?」
 笠間:「もう2年も前の話だろ?」
 新藤:「撮り直しなんてしねーからな」

 新藤と笠間は旧校舎の入口に向かう。
 その2人を追って撮影するカメラマン役の者が別にいるから、最低でも3人組か。

 昇降口の入口に着く。

 笠間:「なあ、入る前にタイトルちゃんと言ってくれよ?」
 新藤:「心配すんな」

 新藤は自分の顔を懐中電灯で下から照らした。

 新藤:「本日の『廃墟ゲッターズ』は不気味な旧校舎を探索!……どうだ?」
 笠間:「……最高だな」

 笠間は肩を竦めた。
 そして、旧校舎入口の鍵を取り出す。

 新藤:「ちゃんと鍵合ってるか?」
 笠間:「大丈夫だ」

 笠間は合鍵と思われる鍵を差し込むと、ちゃんと開けることができた。

 新藤:「カメラ回ってるか?よし、行くぞ」

 新藤達は旧校舎の中に入った。
 教育資料館の今でもそれなりに不気味だが、魔の巣窟と化している放置時代の旧校舎はもっと不気味だった。

 新藤:「で、何で今夜はこんな旧校舎に?」
 笠間:「資料読めよ。せっかく作ったのに……」
 新藤:「んなもん必要ねぇよ。だいぶ昔、新聞部が特集した奴だろ?どれもインチキ臭ぇもんばっかだ」

 しばらく朽ちた木の床を踏みしめる新藤達。

 新藤:「ったく、何で俺が……。サッカー部のレギュラーだったんだぞ」
 笠間:「といっても補欠ね。センターフォワードの」
 新藤:「何だ?」
 笠間:「……別に」
 新藤:「じゃあ、確認だ。校舎内を一通り映して、それからいつも通りにやるんだろ?」
 笠間:「そうだ。新聞部の特集だと、教室とかトイレとかを上げていたみたいだな。俺達は新聞部以外のことをやろう」
 新藤:「で、どうする?」
 笠間:「新校舎でも話題に出てこなかった職員室とか校長室とか見るのはどうだ?」
 新藤:「おっ、いいな、それ」

 新藤達はまず職員室を見ることにした。
 教育資料館では殆どもぬけの殻状態である職員室だが、放置されていた当時は、古い事務机やら本棚などが並んでいたようだ。

 新藤:「上手い具合に廃墟だな」
 笠間:「だろ?教室もそれなりに不気味に荒れてるらしいぜ?」

 その時、何か新藤が踏んづけたらしい。

 新藤:「うわっ、何だよ!?」

 すぐにカメラがそれを映す。
 どうやら、野良猫の死体を踏んづけてしまったらしい。

 新藤:「くそっ!いい靴なんてはいてくるんじゃなかったぜ!……けどまぁ、ちょうどこの絵はいい背景になるんじゃねぇか?」

 新藤は職員室内に掲げられている絵画の前に立ち、自分とそれを懐中電灯で照らした。

 新藤:「どう思う、笠間?」

 しかし、笠間の反応は無かった。
 カメラが職員室内を映すが、どこにも笠間の姿は映っていない。

 新藤:「笠間?笠間ァ!……おい、洗井。笠間見なかったか?」

 どうやらカメラマン役の名前は洗井というらしい。
 カメラが僅かに左右に振れたことから、首を横に振ったらしい。

 新藤:「笠間!?あいつどこ行った!?」

 新藤と洗井は職員室の外に出た。
 廊下にも笠間の姿は無く、ただ真っ暗な廊下が続いているだけだった。

 新藤:「おい、笠間ぁ!?」

 しかし、返事は無かった。

 新藤:「信じらんねぇ!あいつ、何考えてんだ、バカヤロー!だからあいつとは一緒に来たくねぇんだよ!こうなったら、俺達だけで探索するぞ!ちゃんとついてこい!」

 新藤と洗井は職員室と隣り合わせの事務室に向かう。
 その隣には校長室がある。
 思えばこの時既に、新藤達は捕らわれていたのだ。
 旧校舎の中の悪魔に……。
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