天使の図書館ブログ

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Grand Stroke-5-

2012-08-17 | エースをねらえ!

(※漫画「エースをねらえ!」の二次小説です。内容にネタバレ☆等を含みますので、一応ご注意くださいm(_ _)m)


 今回の言い訳事項は、前回も前文で書いたとおり、宗方コーチの過去について、です

 何かと名言の多い「エースをねらえ!」ですが、その中でも有名な言葉のひとつに、「岡には女であることを越えてもらう」っていう科白があると思います。


 >>「自分のテニスを目指すということがどういうことか、おまえにわかるだろうか。
    女がひとつの道なり仕事なりを貫こうとした時、どうしなければならないか、おまえにわかるだろうか」

   「い、いいえ……」

   「女であることを越えなければならない」

   「?」

   「誰も女は、女ゆえの悩み弱味を持って、女ゆえに苦しみ、そこで血を流しきる。
    だが、おまえはまだその先へ進まねばならないのだ。女ゆえの悩み弱味を越えなければならないのだ」

   「………」

   「恋をしても溺れるな。一気に燃え上がり、燃え尽きるような恋は決してするな」

 (旧こみくす☆4巻より。文庫版はたぶん2巻あたりに収録されてそうって思います。^^;)


 原作のこういう科白を読んでると、宗方コーチって過去に女性関係で何かあったとしか思えないですよね(笑)

 もちろん、幼くして亡くしたお母さんのこととか、異母妹のお蘭ちゃんのことであるとか、色々あるとは思うんですけど……でも旧こみくす6巻のラスト、>>「人間何ごとも知ってしまったら、知らなかった昔には戻れない。藤堂の胸も腕も、もうおまえの意識から消えることない」とか、こういう科白を冷静に言えるのって――やっぱり宗方コーチって、過去に女性関係で(以下略☆)としか思えないというか(^^;)

 でも第二部を読むと、DAIGOさんが(その表記やめろ☆)「宗方は女と関わらないと思ってた」とおっしゃってるので、この言葉をそのとおり取るなら、宗方コーチは実はそれほど深く女性と関わったことがない、みたいにも読めるんですよね

 当然ながら、あのルックスでテニス選手としても一流プレイヤーでっていうだけでも、女の人は盛りのついた雌犬のように群がってきたと思うんですけど(盛りのついたとか言うな・笑)、でもそういう女子たちには一切興味なくお過ごしになってきたのでしょうか。。。

 まあもちろん、いくら親友とはいえ、DAIGOさんにも宗方コーチのことで知らないこともあったんじゃないかなとは思うんですけどね(^^;)

 なんにしても、自分で書く分には、宗方コーチにもそういう過去がないのは不自然……との観点から、↓のような本文になったような次第です(土下座☆m(_ _)m)

 今もわたし、何回となく原作を繰り返し読んでるんですけど(特に第一部^^)、アニメとのギャップというか、違いについては悩まされますww

 えっと、この悩まされるっていうのは、(いい意味で)悩ましい思いをさせられるっていうことなんですけどね(笑)

 原作とアニメの宗方コーチ、どっちが好きかって言ったら、わたしの場合より原作が上、高い位置にくるんですけど……そういう意味でわたし、アニメの宗方コーチは原作とは若干別の人☆みたいな感覚で見てるかもしれません(^^;)

 ん~と、なんていうか、原作の宗方コーチはわたしにとってあまりに完璧すぎる人で、突っこみどころが何ひとつないにも関わらず、アニメの宗方コーチは突っこみどころが多すぎるんですよww(でももちろん、そこが好き

 旧エースの第1話のタイトルって、「テニス王国のシンデレラ」ですけど、わたしに言わせたらあれ、絶対タイトル「テニスラケットを持ったヤクザ、宗方仁の巻」としか思えませんてばww

 しかも女子高生に向かって情け容赦なくラケットで攻撃してるあたり……過去に女性関係で何かトラウマがあって、八つ当たりしてるだけのように見えなくもなかったり(単に力量を試してるだけにしても・笑)

 うん、何より原作だけ読むとしたらわたし、宗方コーチがロリコン☆だとは一切思わないのに――アニメの動いてるひろみの姿を見てると、宗方コーチがただのロリコン☆にしか見えてこないという

 ゆえに、常に真顔のあの表情の下では、実はこんなこと思ってるんじゃないかとか、余計な妄想が生まれやすいんですよね(笑)

 たとえば、アニメには実際にはこんなシーンはないにしても、似たような違う場面からこーゆーことを連想してしまったり(^^)ゞ


 ~こんな宗方コーチは本当にイヤだ!!(笑)~

 宗方コーチ:「よし、あとは最後に全員、素振りを100回しろ!そのあと1年生はボール拾いをして、今日は解散!!」

 ひろみ:「(四つん這いになって、せっせとコートに落ちているボールを拾い集める☆)」

 宗方コーチ:「岡、おまえはそのあとでさらに特訓だ。わかったか!?」

 ひろみ:「は、はいっ!!」
(コーチの怒声にビクッ☆とするあまり、ボールを目の前でぼとぼと落とす)

 宗方コーチ:「……………」
(もしかして、今のはわざとか?俺の目の前でボールを落とし、四つん這いになってそれを拾い集めるとは。もしかして、俺を誘っているのか、岡)」

 ひろみ:「(うわああんっ!!また怒鳴られた(泣)コーチなんて嫌いっ。大っ嫌い!!迫力だけの男なんて、最低なんだからあっ!!)」(←本音☆)


 みたいな。。。

 う゛~ん原作ではこういう妄想は生まれないんですけど、何故かアニメにおいてのみ、この種のことがよく思い浮かびます(笑)

 なんかもう、本当は好きでしょうがないのに、そう言えないから意地悪してしごいてるんじゃなかろーか☆というようなww

 なんにしてもエースは、原作とアニメでそれぞれ違う味わいが楽しめて最高ですね♪(^^)

 それではまた~!!



       Grand Stroke-5-

          Side:仁

「かれこれもう、十年ぶりくらいの再会になるかしらね?」

 屋敷の応接室に通され、俺はそこで黒革のソファに腰掛けながら――室内を彩る品のいい美術品をなんとなく順に見回していった。飾り暖炉の上に掛かるルノワールの絵や、コンソールに飾られた清時代の壺、螺鈿細工のテーブルや、そこに飾られた薔薇の花といったものを。 

「もう、そんなになりますか。リンデロイス先生……いえ、Mrs.エバハート」

「コニーで結構よ。わたしはもうあなたの先生ではないし、仁、あなたはすでに優れたコーチとして世界的に名を馳せてるんですもの。そういう意味で、わたしたちの関係というのは対等だわ」

「それでも俺にとって貴女は、やはりいつまでもリンデロイス先生ですよ」

 束の間、互いに見つめあい、過去に共有してきた懐かしい思い出の数々が、ついきのうのことのように甦る――けれど、やはり過去は過去。時間の螺子を巻き戻すことは不可能なのだということを、俺はリンデロイス先生の瞳の中に見る思いがした。

「そうね。あの頃わたしはすでに結婚していて、姓のほうはエバハートだったんだけど……プロのテニスプレイヤーとして活躍していた頃は、リンデロイスだったから、日本の生徒たちはみんなそう呼んだのよね。<あの>リンデロイス先生がテニスのコーチをしてくださる!なんて、日本の学生たちは本当にみんな真摯でひたむきで、とても可愛かった。その中でも仁、わたしが一番えこひいきしたのはあなた。一応、みんな平等に教えなくちゃとは建前ではわかっていても――仁、あなたもコーチになってみてわかったでしょうけど、自分にとって見込みがあるって直感した相手には、やはりより熱心になってしまうものなのよね」

「ええ、わかります。俺も岡に対してそうでしたから」

 日本では、どんなに親しくなっても、互いを名字でしか呼ばないこともあると、リンデロイス先生は当然知っている。ゆえに俺は、英語でも岡のことは名前で呼ばなかった。

「ふふっ。仁、今のあなたの一言で――あなたがあの子にどんなふうに接してきたのか、全部わかったような気がするわね。じゃあ、そろそろ本題に入りましょうか。ヒロミがファースト・セットを落としやすい傾向にあるのは、おそらく彼女の性格的なことが原因だと、そう手紙に書いてあったけど……わたしなんて、娘のクリスティンにその部分についてこそ、「ヒロミを見習いなさい!」って繰り返し言ったものだったのよ。ファースト・セットを取られ、セカンド・セットでもまた3-0でありながら、そこから盛り返すことの出来るあのガッツとパワー、それに強い精神力。仁、あなたが一体どんな特訓を授けたから、あの子はあんなにも強くいられるのか、むしろ逆にわたしのほうこそが、その秘訣を教わりたいくらいだわ」

「手紙にも書きましたが、岡はあの歳でもまだあがり症で、人見知りをするんですよ。プロの選手に練習を申し込む時でも、いまだに俺が「やれ!」とか「いけ!」と尻を叩いてからでないと、自分からはためらうんです。あの引っこみ思案な性格が直れば、おそらく岡はプレイヤーとしてまだまだ伸びる……そう思い、積極性を養わせるために、色んな場所にも放りこみました。ですが、いまだにあのとおりです。こういう時、先生ならどうされるのか、俺はそのことを聞いてみたいと思ったんですよ」

 リンデロイス先生はくすりと笑うと、コーヒーに角砂糖を入れ、銀のスプーンでかきまぜてから、どこか優雅な手つきでそれを飲んでいた。

「そうねえ。でも面白いとは思わない、仁?普段はそんな大人しいタイプの子が、コートに立った途端に別人になる……むしろそのギャップにこそ、あなたは惹かれているのではなくて?」

「かもしれません。ですが、ある意味テニスプレイヤーとしては致命的な欠陥にもなりかねない。俺はそのことを心配してるんですよ。時々、こうも思います。自分が過去のある時点において、もっと別の教育指導をしていたらよかったのかもしれない……とすら」

「女子の場合はね、仁。恋をしている相手と結ばれると、精神的に安定していいプレイが出来るようになることがある。まあ、わたしは親日家の両親を持ったから、日本や欧米の文化の違いっていうものを、それなりに理解しているつもり。その部分を踏まえて言わせてもらうなら――<欧米型>のテニスプレイヤーと<日本型>のテニスプレイヤーには当然、大きな隔たりがあると思う。DNA的に見て、当然欧米型のプレイヤーのほうがパワーの強いテニスをするのは当然だとしても……まあ、男子と女子では当然話が違ってくるから、今は女子のプレイヤーについてだけ話すわね。うちのクリスティンなんか見てると、本当にわかりやすいわよ。新任のコーチがちょっと格好良かったりすると、肩に力が入ってサーブミスしたり、いいところを見せようとしたばかりに、ボールがアウトになったりね。でも小さい頃からそんなことを繰り返してたら、十七になるくらいには、コートに入った途端何ごとにも動じないようなポーカーフェイスになっちゃって、まったく可愛げがないったら!」

 結論に結びつくまで、話が長くなりそうだと思った俺は――というより、それがリンデロイス先生の昔からの癖だったので――青い薔薇の描かれたティーカップを手にとり、ブラックのままコーヒーを飲んだ。

「ああ、ごめんなさいね。今はクリスティンのことじゃなくて、ヒロミの話だったわね。つまりわたしが何を言いたいかっていうと、欧米の子っていうのは大体、うちのクリスティンみたいな感じだってこと。どこへ行ってもみんな、可愛いとか綺麗だとかって言われ慣れてるもんだから、それが当たり前みたいになっちゃうのね。でも日本の女の子にはそれがないでしょう?結論を言わせてもらうなら、仁――ある意味あなたの教育指導は確かに間違ってたのかもしれないわね。でもそれをこれから埋めたいと思うなら、ヒロミに選手としてでなく、<女>として自信を持たせてやることよ」

「まさかこの俺に、毎日あれに可愛いだの綺麗だのと言ってやれと?」

 自分でも気づかぬうちに、おそらく俺はひどい渋面を作っていたのだろう。リンデロイス先生がそんな俺の様子を見て、くすくすとさらに笑いだす。

「そうよ、仁。わたしが気づかないとでも思って?ヒロミはあなたに恋をしている……でもあなたは、それをコーチと愛弟子とのあるべき姿ではないと考え、あの子にテニスにだけ集中するよう指導してるんでしょう?わたし、気になってたのよ。それはもしかしたら、わたしのせいなんじゃないかって。仁、もしそうなら――」

「俺は……貴女とのことは、すべていい思い出だと思っています。俺は英語が下手で、リンデロイス先生、あなたは日本語が下手だった。でも、お互いに少しずつ歩みよることで、心からわかりあい、最後には魂が通じあっているといってもいい絆が出来た。その絆を俺は恋だと思い、あなたは一線を越えたことを後悔し、日本を去っていった。先生、あなたは手紙に書いていましたね――『いつかすべていい思い出になる』と。俺はそれを読んだ時、こう思いました。先生は何もわかっていない、と。でも、今では俺も大人になり、あなたが手紙に書いていたことの意味が、よくわかりますよ。何より、あなたは再起不能になった俺のために、エア・メールを数え切れないほど送ってくれた。その手紙を何度泣きながら読み返したか、今思い返してみても胸が熱くなります」

「仁……」

 自分でも話していて、まだこんなにも動揺するものなのかと、驚いていた。あれから十年――本当に、色々なことがあった。母さんと俺という存在がありながら、他の女との間に子供を作り、家庭を捨てた父が俺は許せなかったはずなのに……気づけば、その父と同じ過ちを犯していた自分。リンデロイス先生には夫も子供もいると知っていながら、俺はそのことをほとんど気にかけてすらいなかった。『一夜限りのこととして忘れるように』と言われても、彼女のことを忘れることが出来ず、テニスにその激情を向けることで勝ち進んでいった日々――それから、失恋の痛手も癒えたかと思った頃に、再起不能という悲劇が起きた。『あなたにテニスを教えられるのを待っている若い人たちがいる』と、リンデロイス先生に手紙の中で諭され、日本中に自分にとっての<運命の相手>ともいえるプレイヤーを探し歩いた。そして俺は奇跡的に岡ひろみという選手を発見し、今日に至っているわけだが……今、岡と俺の間に起きていることというのは、かつてのリンデロイス先生との間にあったことを思い出させるだけに、俺は時間の流れというものが奇妙なところでねじれ、そして同じところを起点として結びついているような――奇妙な錯覚を覚えていた。

「あれから十年も経った今だから言えることだけれど、仁、わたし手紙の中でひとつだけあなたに嘘をついたわ。あの時起きたことは、決して『あやまち』などではなかった。ただ、わたしは怖かったのよ。自分より、十七歳も年下の子に本気になっている自分がね――だからあなたのことを突き放し、急いで日本という国を去ることにした。夫がいるとか子供がいるとか、あなたとふたりきりの時にはそんなこと、まるで関係なかったわ。モラルがどうの、社会的保身がどうの、そんなこともどうでもよくって……離婚してクリスティンのことは夫に預け、宗方仁というテニスプレイヤーにだけ打ちこみたいって、本気でそう思った。でもね、結局それでは先が見えてたって、今なら仁にもわかるでしょう?もちろん、あなたの怪我のことを言ってるんじゃないのよ。ああした激情といったものは、心身ともに互いを滅ぼしていくものだっていうこと……夫が亡くなった時、あなたは本当に真心のこもった手紙をくれたわね。とても嬉しかった。そして今、あなたの瞳の中には岡ひろみというテニスプレーヤーがいて、かつてわたしがあなたのことを見ていたのと同じ目で――彼女のことを見てるって、仁、あなたは自分で気づいてる?」

「ええ。結局、俺とあなたは性格がとてもよく似ていたのだと思います。表面的にはリンデロイス先生は華やかで、俺はどこか陰があって暗い感じだったでしょうが……陰湿でひねくれ曲がっていて、相手の裏の裏をかこうとする頭脳プレイなんかは、本当にそっくりでしたから。俺は、あなたから教えられたことの多くを岡に伝えていると思いますが、それでもひとつだけ、その部分だけは何故か遺伝しなかったようです。師と弟子のプレイスタイルは自然とどこか似るものだと言いますが、俺はそのことについては本当にほっとしていますよ」

「まったくそのとおりね」

 そう言ってリンデロイス先生は笑い、青い薔薇の描かれたティーカップを、ソーサーの上へ戻していた。一度流れてしまった歳月は、もう二度とは戻って来ないのだと、互いの顔や目の表情を見て、再確認しあう。

「リンデロイス先生、俺は本当に……」

 あなたに感謝しています、と言いかけた俺の言葉を、先生が手ぶりで止めた。眼差しの中に、うっすらと涙が光る。

「ふふっ。それ以上は言わないでちょうだい、仁。泣いてしまうから。あの二年間はわたしにとっても本当に、輝ける日々だったわ。まるで自分の青春をもう一度生き直してでもいるみたいにね……あなたも今、人生というのは本当に、何度でもやり直しがきくものなんだって実感してるでしょう?わたしは何より、そのことがとても嬉しいのよ。だから、わたしが泣いてるのはね、仁、嬉し涙ってことなの」

「先生……」

 応接室のドアがノックされ、メイドのひとりが晩餐会のことで指示を仰ぎたいと訊いてきた。

「ちょっとごめんなさいね、仁。あなたも疲れたでしょうから、部屋へいって少し休むといいわ。それとも、コートで練習してる選手たちのことでも先に見る?」

「ええ、是非」

 リンデロイス先生は、「そう言うと思ったわ」と言って、くすくすと笑った。

 岡はおそらくクリスティンと一緒だろう。俺自身は彼女と面識はないが、それでも岡とはおそらく気のあうタイプだろうと見てとってはいた。今ごろふたりで、今期のウィンブルドン戦の予想を立てているのか、それとも女同士のくだらん与太話をしているかはわからないにしても――とりあえず、俺はひとりでコートの様子を見に行こうと思った。



 >>続く。





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