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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

近代法治国家の根本原則を否定する磯崎発言は安倍政権の本音

2015-08-05 | 集団的自衛権

安倍首相の側近中の側近、政権の中枢から出た、近代法治国家の根本原則否定発言

 磯崎陽輔首相補佐官は7月26日、大分の講演会で集団的自衛権に関する政府見解の変更について「法的安定性は関係ない」と発言した。「法的安定性」とは、憲法・法律の定着した解釈や運用については、ときの権力者の都合に合わせて勝手に変えてはならないという意味で、これは近代法治国家の根本原則である。なぜなら、憲法・法律の解釈や運用が勝手に変えられると、国民は憲法・法律を信用しなくなり、法秩序が崩壊するからである。この意味で、磯崎補佐官の発言はこの根本原則を蹂躙するものである。彼は参院特別委員会に参考人と招致され、発言を取り消し謝罪したが辞任は拒否した。安倍首相も彼の更迭を拒否している。
 [礒崎氏発言]
 憲法9条全体の解釈から、我が国の自衛権は必要最小限度でなければならない。必要最小限度という憲法解釈は変えていない。
 政府はずっと、必要最小限度という基準で自衛権を見てきた。時代が変わったから、集団的自衛権でも我が国を守るためのものだったら良いんじゃないかと(政府は)提案している。考えないといけないのは、我が国を守るために必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない。我が国を守るために必要なことを、日本国憲法がダメだと言うことはありえない。
 本当にいま我々が議論しなければならないのは、我々が提案した限定容認論のもとの集団的自衛権は我が国の存立を全うするために必要な措置であるかどうかだ。「憲法解釈を変えるのはおかしい」と言われるが、政府の解釈だから、時代が変わったら必要に応じて変わる。その必要があるかどうかという議論はあってもいい。
 来年の参院選は、憲法改正が絡む話でしっかりと勝たなければならない。参院もできれば、自民党で単独過半数を取りたい。その中で憲法改正を有利に進めたい。
※憲法解釈変更「法的安定性は無関係」 礒崎首相補佐官(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASH7V5T5MH7VULFA004.html
※安倍首相、礒崎補佐官の続投を明言 参院特別委(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASH843HNKH84UTFK004.html

 磯崎発言は、発言取り消しですまされるような、単なる思い違いやうっかり失言ではない。彼のホームページでも「法的安定性など形式的論議に終始すべきではない」と述べ、大分発言の前日にも同様の発言を行った、全くの確信犯である。しかも、この考えは、安倍内閣全体の本音でもある。先に中谷防衛相は、憲法解釈を法律にあわせる旨の逆立ちした意見を述べが、憲法秩序をないがしろにしたという意味では、磯崎発言は同じ発想法に基づくものである。だが、磯崎補佐官の場合、罪はもっと重い。彼は安倍首相の側近中の側近である、5名の首相補佐官のうち、安全保障担当のキーマンであり、今回の戦争法の立案者の一人であり、特定秘密保護法制定にも深くかかわった。安倍内閣以前にも有事法のうち国民保護法の整備を行い、自民党憲法改正推進本部事務局長でもある。

 磯崎補佐官の不遜で人を喰った発言は今回が初めてではない。2012年のツイッターでは、立憲主義について「学生時代の憲法講義では聞いたことがありません。昔からある学説なのでしょうか」とか、某雑誌では4月、集団的自衛権が憲法違反であると聞いたことがない、等と空とぼけているという。彼は東大法学部卒で、自治省・総務省の官僚として立法技術に長けた経歴を持つ人物とされている。
 さらに、彼は戦争法の審議を9月中旬までに終わらせたいと述べていたが、これについて、参院特別委員会委員長(自民党)さえ、参院は衆議院や内閣の下請けではない、先の戦争は貴族院で止められなかったことに鑑みて、参議院はしっかりと審議する旨の苦言を呈した。
※参院特別委:鴻池委員長、参考人の礒崎氏を「説教」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20150804k0000m010029000c.html

戦争参加に反対は「極端な利己主義」―馬脚を現した戦争法

 自民党議員のタガの外れた暴言ぶりは、磯崎発言だけに尽きない。武藤貴也衆議院議員は、SEALDsなどの学生たちの行動に対して、彼らが戦争に行きたくないというのは「極端な利己的考え」だと非難した。この発言は、若者たちの行動を侮辱したのみならず、本人は気づいてはいないと推測されるが、彼は迂闊にも今回の戦争法の本質を暴露したのである。振り返れば、安倍内閣は5月、「平和安全整備法案」と名付けてこの「戦争法案」を提出したが、これにたして福島瑞穂参議院議員が、「平和安全法」ではなく「戦争法」であると批判した。安倍首相は激怒してこの発言の取り消しを求めた。しかし、この首相の態度にマスコミと世論の批判が強かったので、結末はうやむやに終わった。これ以後、法案反対陣営では、戦争法という名称が定着した。このような経緯の中で、武藤発言ははからずも、「平和安全法制」が実は戦争参加を目的としていることを自ら暴露したのである。
  さらに彼は、憲法の3原則である国民主権・平和主義・基本的人権を否定する発言もしている、と報道されている。国会議員は一般国民と異なって、憲法遵守義務を課せられているにも拘わらずだ(第十章 最高法規 第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議院、裁判官その他の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負ふ)。このような彼が、戦争法の衆院特別委員会の一員であり、安倍首相の応援団「文化芸術懇話会」のメンバーでもある。先に、沖縄の2紙を潰せとか広告を止めてマスコミを懲らしめろ、と論議した同懇談会にも出席していた。もとより、安倍首相を始め自民党は、これらの発言を咎めることは一切していない。

武藤氏ツィート· 7月30日 
SEALDsという学生集団が自由と民主主義のために行動すると言って、国会前でマイクを持ち演説をしてるが、彼ら彼女らの主張は「だって戦争に行きたくないじゃん」という自分中心、極端な利己的考えに基づく。利己的個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろうと思うが、非常に残念だ。
※自民党武藤貴也議員「トンデモ発言」憲法3原則否定(日刊スポーツ)
http://www.nikkansports.com/general/news/1518205.html
※自民・武藤貴也議員 「憲法が日本精神を破壊」の暴言で大炎上(日刊ゲンダイ)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162357
※武藤氏、ツイッター撤回せず(ロイター)
http://jp.reuters.com/article/2015/08/04/idJP2015080401002292

 これらの磯崎・武藤発言は、単に個人の偶然的な発言ではなく、安倍内閣全体の本質的な政治姿勢を示すものである。問われているのは、単にこれら個人だけの責任ではなく、安倍首相の任命責任であり、内閣全体の基本姿勢である。
  かつて選挙民に団扇を配って辞任やむなきに至った安倍内閣の閣僚もいたが、磯崎・武藤発言は、団扇どころの問題ではなく、法治国家と憲法の根幹をないがしろにする問題である。野党は果たして磯崎補佐官・武藤議員の追求をやり遂げるのか否かを含めて、安倍首相をどこまで追い詰めることが出来るか否か、野党の鼎の軽重そのものが同時に問われているのである。(岩)

(ハンマー)

 


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