劇場でひとりごちてみる。

職業、ライター。趣味、観劇。というわけで、芝居の感想なぞをつれづれなるままに綴ってみました。

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三鷹芸術文化センター『時には父のない子のように』

2005-06-12 | ストレートプレイ
モダンスイマーズっていう劇団名は耳にしたことはあったけど、蓬莱竜太という人、知らなかった。佐々木蔵之助が彼の舞台を観て、感激して今回の作品を依頼したってことなんだけど……。う~ん、下手だとは思わないけれど、ね。無難というか、想像の範囲を超えないっていうか、小さくまとまってる感は否めなかった。
物語は、“ひとり漫才”で名を広めたある芸人の息子2人が主人公。佐々木蔵之助扮する長男は、父親の後について小屋を回り芸人としてデビュー。とはいえ、二世タレントによくある父を超えられず、いまだくすぶり続ける男。次男の佐藤隆太は、そんな父親の影から逃れるように東京に出、いまはバイトで生活しながら売れないバンドのドラムスをしている。父親の跡を継いで“ひとり漫才”を世に残そうと必死の長男。しかしその父親は、彼に内緒で、命よりも大切なネタ帳を次男の元に送り続け、自分の跡を継がせようとしていた。
いわゆる、芸のことしか頭になかった天才の父親を持った2人の息子の苦悩を描いているんだけど、長男が父親を超えられずに苦悩する→父親が書き溜めてたネタ帳を探す→じつは弟の元に送られていたことがわかる→弟はそのことで兄に対するすまなさと、父親からのプレッシャーに悩む→天才だった父親からの卒業。っていうパターンが、すごく型通りで意外性がないんだよね。優等生芝居っていうのかな。まるで、高校生の演劇コンクールで先生方から絶賛されるような芝居っていおうか。もっと、意外な苦悩とか、2人の肉親ゆえの互いに対する愛情と憎悪とか、父親への尊敬と軽蔑とか、生々しく描いてほしいなと思ってしまった。よくも悪くもサラッとしてて、印象に残らない。「おもしろくなかった~、金返せ~」みたいなこともないけど、来月には、どんな芝居だったのか観たことすら思い出せない、みたいな感じ。兄弟って私にはよくわからないけれど、姉妹のことならわかる。同性の姉妹ってさ、どこかライバルみたいな意識があると思うんだよね。でも、どうしてもアイツのここには勝てない、っていう認めている部分もある。しかも、20歳を超えると、血が繋がっているからこそ言えないこととかでてくるもの。それは、多分、お互いのことがわかりすぎるくらいわかっているから。だからこそお互いに、相手の一番触れて欲しくないところ、自分の一番触れられたくないところには触れずに、表面上の会話を続けちゃったりすることもある。でもそれは他人同士の上っ面な会話とはちがう、何気ない言葉のなかに、複雑な思いが込められてるもの。……でも、そういう部分がいまいち感じられなかった。兄には、父親の亡霊から逃れて自由に生きる弟を羨ましく思っている部分があっただろうし、もっと長男としての責任感から、父親の跡を継ぐって口にしちゃった部分があると思うんだけど。あれじゃ、単に父親がすごくて子供の頃からずっと憧れていて、いざ芸人になってみたらダメだった、くらいの単純さしかない感じ。普通、子供の頃から小屋に通って芸を観てたら、自分のダメさにもっと早く気付いていただろうし、才能のなさにも気付いていたはず。それなら、父親が期待をかけてた弟が家を出てしまった途端、土下座して“跡を継いでくれ”って頼まれたとかにしたほうが納得する。責任感の強い長男は、断りきれずに義務感でやる、っていう。弟は弟で、父親からおまえには才能があると言われ続けているんだけれど、父親のようになれる自信がない、だから家から飛び出した、っていうほうがわかる。兄に遠慮して、ってあまりにも狭過ぎやしないか?って。あんな天才の芸、ちゃらんぽらんな俺に継げなんて、そんな重荷を背負いたくないから芸人にはなりたくないんだよ~って言って欲しかった、なと。
2人の芝居はというと、隆太君は、まあいつもの通りでした。芝居が下手とはいわないんだけど、力入りすぎてるんだよね、いつも。彼自身がそういう人なんだと思うけれど、もっと若者特有の怠さ、緩さが表現できるようになるといいのに。あの、熱血演技だと、目的もなくフラフラとフリーターにはならなそうだし。蔵之助さんは、うまいんだけどね、それだけって感じもあった。もっと奥の深い役がやれる人だと思うんだけれど、苦悩とか浅~い感じがしたな。ドラマ(離婚弁護士2)との掛け持ちで全力投球できなかったのかしら? 芸人の軽さと、全部を背負った長男の重さをもっと出して欲しかった。そう考えると、『タイガー&ドラゴン』の阿部サダヲはうまいなぁ。多分さ、状況的には似たような感じだと思うんだけれど、もっともっとバカゆえに哀しい、って感じが出てるもの。あの『まんじゅうこわい』の回は、ほんとうに素敵でしたわ。
ま、三鷹芸術文化センター主催公演でこのキャスティングっていう豪華さはある。よくがんばりました。でも、キャスティングの部分で満足していた感はあると思う。プロデューサーっていう役目って本当に大事なんだなぁ。
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