青みかんと準惑星

小ネタ乗せようかと思ってます。
時々二次系の下書き・・・

10年目の嵐 10

2007-02-15 00:10:43 | 二次系
悠理は私と清四郎が一緒に暮らしていないことを知らない。
私は清四郎にあっさり断られてしまったのだ。
某ホテルの喫茶店で、私は清四郎と待ち合わせた。悠理が出て行ってから、一週間目のことだった。清四郎と会うのは、久しぶりだった。なんとなく緊張して、朝から落ち着かなかった。
この着物を着たら落ちついた美しさを引き立ててくれるかしら、清四郎から私を見たとき艶めいて見えるかしら、そんなことを考えながら、着物を選んでいた。顔色が明るく見える色の着物を選んで、私はいそいそと待ち合わせのホテルに向かった。
清四郎は既にきていて、コーヒーを飲みながら、本を読んでいた。
「早いですのね。」
「おや、今日も綺麗ですね。」
にっこりと清四郎は微笑んだ。
優しい微笑みに、私は清四郎がOKの返事を持ってきたものだと思っていた。
清四郎の向かい側に腰掛けると、コーヒーを注文した。
コーヒーが運ばれてくるまで、雑談をし、運ばれたコーヒーに口をつけると、私は清四郎に切り出した。
「私は…、美童とも別れてしまいましたし、清四郎も悠理とはもう離婚されたんでしょ。…私は清四郎に傍にいて欲しいんですの。」
伏目がちに清四郎に言う。この角度が憂いを感じると美童は言っていた。その美童ももういないけれど。
涙も一粒こぼして、清四郎を見上げた。
「もう、別れてしまいましたが、僕が愛しているのは悠理です。野梨子、君とは一緒に生活することはできません。」
見た目上、穏やかな表情だったが、目は凍えるほど冷たかった。
私のことを好きだと言い、私を求めていた清四郎はそこにはいなかった。
それ以上、清四郎に縋ろうとは思わなかった。けれども、やはり悔しくて、私は清四郎に言い返した。
「では、勝手にすればよろしいんですわ。あとから私のことを愛していたと気づいても遅いんですのよ。」
そう言うと、清四郎は苦笑しながら、「そう願いたいものです。」と言った。
それはありえない。
清四郎はそう言っていた。
自尊心が傷つけられた。
けれども、自分でも痛いことを言ったということはわかっていた。
「失礼しますわ。」
私はコーヒーをそのままに、その場を立った。
清四郎は二度と私のところには戻って来ない。
もう、私の周りには、誰もいなくなった…。
そう思うと寂しくて、とても魅録に会いたくなった。
どんなに誘っても、悠理のことしか見えてなかった男。
けれども、どんなときでも優しくて…。
男女の関係にならなくともよいから、私の傍にいて欲しかった。
私が傍にいたかった。
私は家に帰ると、古いアドレス帳から魅録の携帯の番号を探した。今の携帯には登録していなかった。魅録に思いを馳せたりしないように、封印のためでもあった。
思い切って、電話をかける。
けれども、既に使われてはいなかった。
実家に掛けてまで魅録に連絡をとるのもはしたないと思い、なんとか堪えた。
千秋さんにでも、ばれたら、大変なことになる、そうも思った。
でも、連絡先がわからない、会えないと思うほどに、私の魅録への思いは増していった。
”魅録に会いたい…。”

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野梨子は寂しいだけで清四郎を・・・


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