野元の詩

電車のなかで。トイレのなかで。ラーメン屋のなかで。一人の部屋のなかで。夜のなかで。あなたに、読んでほしい。

#500 優しい詩2

2017-03-20 19:48:30 | 
『優しい詩2』

新宿南口まえの歩道の真ん中でクロネコが死んでいました
人波がクロネコの死体があるところだけ避けていきます
ぽっかりとそこだけが孤独でした

ぼくはクロネコの死体のそばに立ちました
そうしてそおっとクロネコの死体を靴で裏返しにしました
クロネコの顔を見たかったのです
そうしたらドロッときたな汁が腹から流れて
ぼくの新品の靴(¥3240)のつま先を汚しました

ぼくがきたな汁をアスファルトに擦り付けていると
知れない女に叩かれました
「なにやっているの!」
女があまりにヒステリックに怒るのでぼくは怯みました
「なにやっているの! なにやっているの!」
女は持っていたプラカードでぺしぺしとぼくを叩きます
「あなたは悪魔だ!神をボウトクしている!」
そうぼくに怒鳴り付けプラカードを掲げて叫びます
「この男は猫を蹴飛ばし殺しました! いまの若者はみな病んでいます!」
人波は女とぼくとクロネコの死体をチラチラと見ていきます
女のプラカードには、“神は世界を救う”と書いてありました

女はプラカードを掲げて演説し始めるので
ぼくはひそかに立ち去ろうとすると 「逃げるのか!」と女に怒鳴られました

そうして女は狂ったように泣き始めます
「かわいそうに、かわいそうに」
女はクロネコの死体を我が子のように抱き締めて泣くのです
「かわいそうに、かわいそうに」
女の腹部がじわじわとクロネコのきたな汁で汚れていきます
「かわいそうに、かわいそうに」
その様を見て無性に気持ちが悪くなり
ぼくは吐き出しました
吐瀉物はぼくの新品の靴(¥3240)を汚し
アスファルトのきたな汁と交じりあいます

その時、クロネコが「にゃあ」と泣きました
女はびっくりしたのか
抱いていたクロネコをアスファルトに叩きつけました
クロネコは吐瀉物に交じりあいます
人波はくすくすと笑ってただ流れていきました
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