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本好きholyの覚え書き的日常のあれこれ

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19年目のholyのブログをそのまま残します。 同じ時は二度とやって来ない。これからも毎日を「一期一会」の心で過ごします♪

澤田瞳子 著 『火定』

2018-01-12 | 本の紹介
澤田瞳子 著 『火定(かじょう)』(PHP研究所)読了しました。

舞台は天平時代の奈良の都、藤原四兄弟をはじめ都の人々を死に至らしめた天然痘。
疫病の蔓延を食い止めようとする医師たちと、偽りの神を祀り上げて混乱に乗じる者たち。
生と死の狭間で繰り広げられる壮大な人間絵巻。

400ページを超す長編で登場人物たちの名前や言葉遣いなどに初めは戸惑いましたが、
読み始めると怒涛のストーリーに引き込まれて一気読みでした。
薬草と経験値での医療しかない時代の流行病、死はとても身近にありました。
そんな中でも、医師たちはその使命感から病に立ち向かいますが、
その時代にも医師の間に格差や地位・身分の違い、嫉妬や僻み、など現代に通じるような問題もあります。
それでも「人の命を救う」ことへの使命に、我が身を顧みず患者に寄り添う医師たち。
特効薬の見つからない医療を諦めて、祈祷や怪しげなまじない、お札にすがる人々と、
弱みに付け込んで一儲けしたり人々を煽動しパニックを起こさせる詐欺師たち。
1000年の時を経ても、今に通じる人間の怖さ・弱さを感じました。

献身的に患者に尽くす医師のこの言葉が心に残りました。
「己のために行ったことは、己の命とともに消えうせる。
しかし、他人のために行ったことはその者とともにこの世に留まり、わしの生きた意味を継いでくれる。」
タイトルの「火定(かじょう)」という言葉の意味は「仏道の修行者が、火の中に自らの身を投げて死ぬこと」
を表す仏教用語です。
この作品の中では、どんな時もすべての患者を見捨てない施薬院の医師たちにその心意気を感じました。

この作品は直木賞候補作に選ばれています。
このところ直木賞候補作を選んで読んでいて、年末に読んだ『彼方の友へ』も良かったですが、
この『火定』も重厚な天平の社会派医療ドラマの傑作と思います。

明日からセンター入試が始まります。
すべての受験生、今までの努力が発揮できるよう落ち着いて試験を受けてくださいね。
がんばれ!ガンバレ!!