高齢者情報技術問題研究所

高齢者等のITに関する環境問題

最初に

2012-07-06 | 最初に

ITと高齢者社会

 日本は、高齢化社会に突入したと言われていますが京都市は、すでに高齢社会です。

老人の介護に関する環境は、ここ数年、急速な発展を遂げていますが、身体的、

精神的、能力の衰えを介助すると言う域を出ていません。

ITの本来持つメリットの一 つに、地域格差の是正。

サービースの均一化があげられますが、これは、地域の問題だけでなく、

能力の格差の是正や、補助としての役目もあります。

 現実の問題としては、狭い生活範囲に陥りやすい高齢者に手軽に

社会参加を可能にする手段となります。

また、パソコンの技術習得の過程での、目標の設定と達成感は、

高齢者に生き甲斐を提供し、脳への刺激は、認知症防止などの予防効果もあります。

この事は、物理的、身体的要素にとどまらず、精神的要素も多く含まれます。

一人暮らしの高齢者の安全確認や閉塞感の解消。

遠隔地にいる子孫とのコミュニケーション、

介護関係者や医療機関とのきめ細かい連絡など、その利用価値は、無限にあります。

 しかし、現在の高齢者を取り巻く環境は、ITへの参加を拒む要因が多数存在し、

その多くがITの恩恵を受けていません。

 そのほとんどの障害は、本人の能力の問題よりも、機器や用語の問題であり、

指導方法の問題です。

介護士は、介護の仕事に忙殺され、高齢者の知的欲求や希望まで手が回りませんし、

パソコン・インストラクターの養成も専門分野に特化し、老人の視点を考慮してき

ませんでした。


 ここで、高齢者がパソコンになじめない理由のいくつかを上げてみましょう。



 ○パソコン教室に行って、専門用語を質問したら、専門用語が3つ帰ってきた。
 ○子供に解らない事を聞いたら「何回、同じ事を聞くの!」と言われた。
 ○耳が遠いのでパソコン教室にいっても聞こえるように話してもらうと
  他の人に迷惑がかかる。
 ○モニターの表示が小さくて見えない。
 ○IT講習会に行って使えそうだと思って、帰りにパソコンを買って帰ったが、
  講習と画面が違うので解らない。
 ○TVのパソコン講座をビデオに取って勉強しようと思ったが、
  同じソフトが自分のパソコンに入っていない。
 ○英語(アルファベット)が解らない。
 ○次から、次とアラートが出て来るが、意味が解らない。
 ○手や指を宙に浮かせて安定出来ないのでマウスやキーボードの
  誤操作が起こる。
 ○せっかくボタンの位置を憶えたのに、毎回位置が変わったり、ボタンが消えて  無くなる。
 ○メーカーや接続サービスによって、用語の名称が異なっていて、理解出来ない。
 
 これらは、ほんの一例に過ぎません。せっかく、皆さんやる気があるにも関わら

、指導員の理解のなさ、機器の不適合で挫折してしまっているのです。

 高齢者の皆さんは、改良されれば十分に対応出来るにも関わらず、

我々、指導員やパソコンメーカーは、その実体の研究や改良を怠って来たのです。
 
そのほとんどは、これから、取り組んで行かなければならない問題ばかりです。

しかし、この問題は、用語の名称の統一と行った行政の問題、介護とIT指導の融合、
機器の改良、開発とメーカーも含めた、産官学の相互乗り入れでの
取り組みが必要です。
 
使用する高齢者、介護者、医師、ソフト・ハードの開発・設計者、通信事業者、

福祉行政担当者、デザイナー、人間工学、パソコン・インストラクター、 e.t.c. 

と広範囲の人員の協力が必要です。指導方法もさることながら、

私たちが、メーカーに現場の声をフィードバックして、

機器の改良、ソフトの開発、指導法の研究を進めて行く必要があります。
 
その人に合った機器・ソフトの選定も含めて、

個々人々の状況を見極めた指導が望まれます。
 
 IT技術は、あくまで、個々の人々の道具であって、

道具によって生み出される物こそが目的なのですから。

物を生み出す前に道具の使い方で振り回されていては、何も始まらないのです。

これらの事例を京都の現場からレポートして行きたいと思います。

東京発信とは、違った、京都のITの考え方です。
                          2006/6