報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

「共謀罪」という戦争プロパガンダ

2006年05月11日 22時23分36秒 | ■メディア・リテラシー
「共謀罪」をめぐる法学者の見解について見てみたい。
これが日本の法学関係者を代表する見解なのかはわからないが、特に法学関係者から反論もないようだ。

 桜美林大学の加藤朗教授(国際政治学)は「テロから身体の安全を守ることを優先するのか。それとも思想信条の自由を優先するのか。重大な選択を迫られているのだと思う。無差別爆弾事件が起きたとき、犯人に爆弾の作り方を教えた人間は処罰されなくていいのか。危険な薬品が管理されているように、危険な知識も管理されるべきではないのか。何らかの法律は必要だろう。ただし運用は厳格な枠にはめられなければならない」との見方だ。

 慶応大学の小林節教授(憲法学)は「この類(たぐい)の法律がなければ、日本がテロリストにとって極めて居心地がよい国になってしまい、国際的に孤立してしまうのはまちがいない。ただし日本の警察が法律を乱暴に運用するのは昔からの体質で十分な監視は必要だろう。従って法案を通すときには厳格な運用をするようにと付帯決議を必ず付けて、乱用するなよ、と念を押すべきだ」と話す。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060510/mng_____tokuho__000.shtml

二人の学者は、テロと「共謀罪」を関連付けて述べておられる。一見自然な流れであるかのように語っているが、ちょっと待って欲しい。「共謀罪」は、国際組織犯罪防止条約の批准のための法整備の一環だとされている。しかし、国際組織犯罪防止条約の中では”テロ””テロ組織”という言葉は一切でてこない。”テロ”が扱われているのは国連テロ対策関連条約だ。二人の学者は、条約とは関係のないテロの話しを持ちだして「共謀罪」を納得させようとしていてはいないか。

もちろん、国際組織犯罪にテロ行為は含まれると言われればそれまでだが。そのためには、テロとは何かから議論をはじめなければならないだろう。少なくとも、条約の文言には”テロ””テロ組織”という言葉はない。

しかし、いまや、テロに関連づけさえつければ国家は何でもできるようだ。テロ対策のためなら、人権侵害も許される。「テロ」「テロリスト」「テロ対策」というのは実に便利な魔法の言葉になりつつある。

しかしそもそものアメリカによる「対テロ戦争」は、架空の脅威に対する戦いだと僕は考えている。テロとは、捏造され、演出された脅威にしかすぎない(ここでは詳しくは述べない)。したがって、それに付随するあらゆるものは茶番だ。もちろん、条約や法律もだ。

ありもしない「脅威」と戦うために、われわれの人権がどんどん狭められようとしている。
これは「対テロ戦争」に対する「戦争プロパガンダ」と言えるだろう。
「共謀罪」のような法律こそが人権に対するテロ行為だ。
ロマン・ロランがこの状況を見たら何と言うだろうか。


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4 コメント

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Unknown (Yegy)
2006-05-12 12:45:02
leonloboさんの記事を必ずしも全部読んでいないからわからないのかもしれませんが、

テロを捏造し、対テロ戦争のために共謀罪を作り、私たちの人権に制約を加えることは、国に対してはどのような利点があるのでしょうか?
Yegyさんへ (中司)
2006-05-12 22:31:04
いま、世界はアメリカの「対テロ戦争」を軸として回っていると思います。かつての「共産主義との戦争」とおなじ図式です。



そして、こうした脅威から国民生活を守るためには、人権や生活権がある程度侵害されても仕方がないという論調が横行しています。



「対テロ戦争」というのは、アメリカの覇権と利益を拡大するための道具です。敵が強大であればあるほど、アメリカの価値は高まります。世界は、アメリカの傘下に入ることで安心を得られます。そしてアメリカは世界をコントロールできるわけです。当然、世界の富もアメリカに誘導できます。



いま、アメリカはこの敵をもっと実体のあるものにしたてあげたい。世界で起こっている爆弾事件のほとんどに不可解な要素が見出せます。それから対テロ国際条約をつくって、「テロの脅威」を世界の共通認識としたい。



この流れに逆らう国は、「テロ支援国家」の烙印をおされます。見え透いていると分っていても、世界は条約に署名し批准に向けて法整備を行います。「テロの脅威」に現実味が付加されるほど、アメリカの「対テロ戦争」は強力に進めることができます。



これがいまの世界の流れだと思います。

「テロの脅威」が架空のものですから、国際法の整備そのものも茶番です。得をするのは基本的にアメリカだけです。





日本の「共謀罪」というのは、この「テロの脅威」をダシにして国民監視を実現しようとしているのだと思います。テロに対する脅威などは感じていないと思います。要するに、この機会を利用しているだけだと思います。



たいていの国家の政治経済は、特権階級によって独占されています。富は一極に集中しています。そこに生じる様々な矛盾を隠し通すことは難しいです。矛盾に対する抗議や反発は必ず発生します。国家は、特権階級の利益を守るために、そうした抗議は当然弾圧します。



しかし、抗議が起こる前に弾圧できれば、なおのこと都合がいいわけです。つまり、「共謀罪」のような法律はたいへん便利なわけです。テロにかこつけて、国民の基本的人権や生活がどんどん侵害されていると言えます。

Unknown (BB)
2006-05-13 00:52:28
Yegyさん,中司さん

通りすがりの者ですが,失礼させていただきます。



「テロとの戦い」というお題目が欺瞞であるという理由はたとえば,こんなメーリングリストを読まれたらいががでしょうか?



 NHK・BS1「BS世界のドキュメンタリー」

 『「テロとの戦い」の真相』

http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/550





また,上の記事の中でレオ・シュトラウスという,ネオコンの教祖的人物について触れられていますが

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 注目に値するのは、カーティスが最初から対テロ戦争の真相究明をテーマにし

たのではなく、1950年代のシカゴ大学でアメリカの再建を夢見たドイツ生ま

れの哲学者レオ・シュトラウスを軸に、現代アメリカ保守主義の台頭を跡づけて

いった結果、自然とこのような番組になったと語っていることです。よく知られ

ているとおり、政治目的達成のために大きな神話を用いることを説いたシュトラ

ウス門下からは、ポール・ウォルフォウィッツやリチャード・パール、ウィリア

ム・クリストル、フランシス・フクヤマといった主要なネオコン論客が出ていま

す。

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下記などを読むとなかなか興味深いことです。

http://adbusters.cool.ne.jp/strauss.htm
BBさんへ (中司)
2006-05-15 11:37:52
確かに、レオ・シュトラウスの記述は興味深いです。



『「テロとの戦い」の真相』のストリーミングは少し前に紹介したことがあるのですが、いかんせん字幕はありません。NHKからDVD化されるとか・・・ないでしょうねぇ。