廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

同じフランス録音なのに・・・・

2014年02月09日 | Jazz LP (Europe)

The Ronnell Bright Trio / ( 仏Polydor 46 106 )


これはもちろん欧州ジャズではなく、アメリカのジャズです。 サラ・ヴォーンの専属歌伴だった当時のロンネル・ブライトたちがサラの欧州ツアーに
ついていった際にたまたまフランスで録音をしただけなのですが、きっと現地ではとても手厚い待遇を受けたのでしょう、上機嫌な気分が演奏の
隅から隅までほとばしっている好盤です。 全編ブルースのオンパレードで、当時はこんな演奏ができるアーティストは欧州にはいませんでしたから、
それはそれは大歓迎されたに違いない。

私はこの人のリージェント盤やヴァンガード盤を聴いたことがないのでそちらの演奏との比較ができませんが、きっと演奏自体は特に大差はなく、
同じような演奏なんだろうと思います。 何なら、リージェント盤なんかのほうがフレッシュな感覚では優っているのかもしれません。

ただ、このレコードは完成の頂点を迎えていたモノラル録音が素晴らしくて、そのおかげで演奏の瑞々しさが際立ったレコードになっています。
言うまでもなく、当時のレコード製造技術は欧州が世界一で、アメリカはその後ろ姿を懸命に追いかけていた時期です。 このレコードは1958年録音で、
ちょうどその頃は独グラモフォンや英国デッカがモノラル録音の技術的ピークを迎えた時期です。 だから、このレコードも幸運なことに、その恩恵を
享受することができたようです。 

とにかくピアノの運指さばきが澱みなく素晴らしくて、アート・モーガンのドラムの音も残響感が生々しくて、全身で音の洪水を浴びるような感じです。




George Arvanitas Trio ( 仏Pretria 30 J. 3000 )


それに比べて、ちょうど同じ時期に同じ国で録音されたこちらはピアノに覇気が全く無くて、せっかくアメリカから迎えたベースとドラムスの
巨匠の良さが曳き出されずに終わってしまっていて、残念です。

アルバニタは技術的にも演奏家としてもとても上手い人だとは思いますが、ロンネル・ブライトの後で聴くと、音楽的な快楽度は半分以下です。
ブルースを弾いてもフレーズはブツブツと細切れでブルース感も全くないし、音も粒立ちはいいですが小粒で、タッチも弱い。 
このレコードは、ダグ・ワトキンスのスムースなウォーキングベースと品のいいアート・テイラーのドラムだけが気持ちいい。
トリオにしても、クインテットにしても、上手いが故に物まね感ばかりが際立ってしまったような気がします。
「好みの問題」という言い方だけでは解決しない違いがやっぱりあります。

ちなみにこの2枚、表のジャケットデザインがよく似ています。 きっと同じ人がデザインしたんでしょうね。


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2 コメント

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Unknown (森彦)
2019-05-17 10:53:22
寺島靖国さんあたりに「なんだ! それはっ!!」と怒鳴られそうですが、やはりミュージシャンの“格”というものが厳然と在るのだと思います。
聴き手が「これは好き、あれは嫌い」と言うのは簡単ですが、それは同時に音楽の方も聴き手を選ぶ、ということだと思います。嫌いだから遠ざけるということは、実はその音楽を理解できない、ということなのでは…と思います。
Unknown (ルネ)
2019-05-17 23:32:07
その通りだと思いますね、私も。 1度聴いてピンとこなくても、時間をあければよく感じる場合もありますし、
体調の良し悪しもありますからね。

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