廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ハーモニカの美音

2017年11月13日 | Jazz LP (70年代)

Toots Thielemans / Captured Alive  ( 米 Choice Records CRS 1007 )


新宿やお茶の水のようなジャズ専門館は年末セールという嵐の前の静けさで中古の動きがまったくなく、行くだけ無駄の状態。 こういう時は
目先を変えて下北沢に行ってみたりする。 ここはジャズの在庫数は少ないので日参する必要がなく年に1~2回しか行かないけれど、場所柄か
客層が他店とは違うので、新宿なんかじゃ見かけないようなものが転がっていたりするから、たまに行くと面白い。 6枚試聴して、2枚拾って
来た。 無論、安レコである。

トゥーツがジョアン・ブラッキーン、セシル・マクビー、フレディ・ウエイツのピアノトリオをバックにハーモニカ1本で臨んだストレートジャズ。 
如何にも70年代のアメリカジャズのメンツが揃った中で、ホーナーのハーモニカの美音が宙を舞う。 トゥーツの音は形容し難い切なさで鳴る。
ピアソラのバンドネオンやウラッハのクラリネットのように、楽器から流れてくる音色にはどうしようもないほどの哀しみが満ちている。 
そういう特別な音を鳴らすことのできた人が昔はいた。

このレコードは音が良くて、トゥーツのハーモニカの音がとてもクリアで生々しく録られている。 余計な残響は付けず、楽器本体の鳴っている
様子のみにフォーカスを当てたような音だ。 トゥーツの音に音像の中心が当たっているので、これがとてもいい。

バックのトリオはこの時期らしい中庸なジャズのスタイルで、そこにトゥーツの繊細な感性が混ざり合い、独特な雰囲気を作るのに成功している。
ハーモニカは決して無理したアドリブフレーズに走ることなく、自身の美音さを誇るかのように進んで行く。 これには黙って聴き惚れるしかない。

ジョニー・マンデルの "I Never Told You" というバラードが切ない。 選曲のセンスも抜群で、これはいいレコードだった。


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