廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

波紋が拡がっていく

2016年10月01日 | ECM

Jakob Bro / Gefion  ( 独 ECM 2381 )


水面に雫が落ちて、そこを中心にして波紋がゆっくりと拡がっていく光景を何度も繰り返し見つめているような感じ、と言えば一番近いだろうか。

そういうこの地上で無限に繰り返されるであろう、永久運動にも似た所為を暗喩しているようなところがある。 人知の及ばぬ遥か遠いどこかで、
我々には解読できない言語で美しく設計された、修正することも消去することもできない律の存在のようなものを感じる。

一応、音楽としてスタートはするものの、やがてそれは森の中で風が通る時の音だったり、深夜の街頭に降り積もる雪の音だったり、断片的な記憶を
思い出す時に聴こえる音だったり、というふうに何か違うところへと我々を誘い、音楽と情景と記憶のようなものの境目が無くなってしまう。

他のECMのアーティストたちのような時には煩わしい自我の強さのようなものがなくて、立ち上がってくるサウンドスケープに無意識のうちに入って
行ける。 誰かの描く世界ではなく、自分の描く世界として受け入れることができるのだ。 そこが他とは違う。

エレキ・ギターでしか描き得ないサウンドスケープが美しい。 エフェクターの使い方が上手く、録音もECMらしい仕上がりで、とてもいい。
ウッド・ベースの木の肌触りやシンバルの柔らかい金属音も分離よくくっきりと鳴っている。 CDは未聴なので質感の違いはよくわからないけれど、
このレコードで聴いている限りでは他の媒体で聴こうという気は起きない。 最新作も同様のトリオ形式なので、できればアナログで聴いてみたい。


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2 コメント

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素晴らしいですね (ken)
2016-11-14 18:34:58
>エフェクターの使い方が上手く、録音もECMらしい仕上がりで、とてもいい。ウッド・ベースの木の肌触りやシンバルの柔らかい金属音も分離よくくっきりと鳴っている。

CDで聴いてみると、音圧をレコード並みにしようとしたためか、僅かに歪んでいて、質感を損なっているように思えました。この記事で、ECMの近作のレコード入手を決断しました。
Unknown (ルネ)
2016-11-15 09:11:13
散財させちゃいましたね。 でも、やっぱりレコードの再生感は音場の間口が広いように感じます。ダウンロードのライセンスも付いているので、CDも買わなくて済むし。
他の盤の感想も楽しみにしています。

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