廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

見た目が100%、なのか?

2017年05月06日 | Jazz LP (Savoy)

Hank Jones / Quartet - Quintet  ( 米 Savoy MG 12037 )


事実上、ドナルド・バードのワンホーン・カルテットに一部でマティ・ダイスが加わったセッション、という内容だが、契約上の関係でハンク・ジョーンズ名義に
なっているというところだろう。 それくらい、ドナルド・バードのトランペットが輝かしく上手く録れている。

マティ・ダイスというトランペットはリーダー作もなく、サヴォイのハンク・ジョーンズの別の1枚に参加しているくらいで他のアルバムも見当たらない。
だからどういう人なのかよくわからないが、バードとよく似たタイプのプレイをしていて、なんでこの人を2曲だけ参加させたのかもよくわからない。
1955年11月1日の録音だからSPのような寄せ集め集ではなくアルバムとしての録音のはずだけど、こういう意味のわからなさ加減が如何にもサヴォイらしい。

ただ、あまりにトランペットの音がきれいに録れているからそちらに耳が奪われがちだけど、ハンク・ジョーンズのここでのピアノは絶品だ。 ラッパが前面に
立っているからピアノの音数を落としたプレイに徹底していて、真骨頂を見せる。 例の "Somethin' Else" でのプレイ・スタイルだ。 鍵盤の上に指を
そっと置いていくような弾き方で、こんなデリケートなタッチで弾ける人は他にはいないだろう。

非常に穏やかな曲調の楽曲が多く、全体の印象がとてもしなやかで洗練されているのに驚かされる。 バードのクセのない澄み切った音色、ハンクの音数の
極端に少なく柔らかい音、それらを邪魔しないベースとドラムの控えめな態度、そういうものが一体となってこの上品な音楽を作り上げている。

そして、ヴァン・ゲルダーの録音も最高の仕上がりで、ブルーノートやプレスティッジとは少し傾向が違う、サヴォイだけの高品質な音になっている。
私はそれら2つのレーベルのものより、このサヴォイの音のほうが遥かに好きだ。 

2管の曲もあるけれど、テーマをユニゾンで演奏するくらいの参加のしかたなので、これはワンホーンの内容と言っていい。 ドナルド・バードのワンホーンは
他には "ビーコンヒル" くらいしかなく、更にRVGの音で彼の伸びやかなワンホーンが聴ける作品はこれだけだ。 そこにこのレコードの大きな価値がある。

でも、そういう素晴らしさがまったく伝わらないこのジャケット・デザイン、一体何なんだろう。 これじゃ、誰からも見向きされなくて当然だよな。


コメント
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