世界変動展望

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白紙・STAP論文:/4 iPS超え、成果過信 予算獲得偏重、疑惑に「大丈夫」

2013-02-28 23:52:26 | Weblog

毎日新聞 2014年07月06日 東京朝刊

 理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹副センター長が、明るいピンクのコートをまとった女性を伴って内閣官房を訪れたのは、今年1月下旬。笹井氏と旧知の官僚は「STAP細胞論文発表の4~5日前。笹井さんは論文のゲラを示し、熱心に研究の概要を説明してくれた」と振り返る。

 自らはほとんど口を開かなかった女性は、小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダーだった。別の日には、笹井氏の姿は文部科学省でも見られた。

 論文への疑義を受け、いち早く撤回を呼びかけた若山照彦・山梨大教授も論文発表直後は、文科省を訪れて論文への貢献と今後の研究戦略を語っていた。文科省幹部は「(予算などの)陳情のためだった」と話す。

 政府は近年、科学技術予算配分の重点分野を掲げ、審査を経て獲得できる研究費の割合を拡大している。その結果、研究者は予算獲得競争にしのぎを削る。「iPS細胞(人工多能性幹細胞)に続く」と目されたSTAP細胞への期待は、当然だったとみられる。

 毎日新聞が情報公開請求で入手した、竹市雅俊・CDBセンター長が小保方氏を研究ユニットリーダーに推薦する野依良治・理研理事長にあてた文書では「iPSの技術はがん化などのリスクを排除できていない」などと研究の意義を訴え、「(小保方氏が)最適任」と書かれていた。

 理研は論文への疑義が浮上した2月上旬、調査を始めたが、その後の当事者たちの危機感は薄かった。

 2月下旬、CDB所内の懇親会に現れた笹井氏は、目を輝かせて「一緒に(STAP細胞研究を)やろう」と研究仲間に声をかけた。その様子を見た研究者は「疑惑にも『大丈夫』と断言し、自信があるんだと思った」。だが、その1週間ほど前、笹井氏は、小保方氏から博士論文に酷似した画像のSTAP論文への使用を知らされ、内々に画像の撮り直しを指示していた。

 理研は研究者約3000人、年間予算約830億円の世界有数の研究機関。研究者中心の巨大組織が不正への反応を鈍らせた可能性がある。CDBに所属した経験のある国立大教授は、こう分析する。「小保方氏自身の問題は言わずもがなだが、理研もすぐ潔く論文の誤りを認めるべきだった。処理がまずかった」。iPS細胞を使った臨床研究を進めるCDBの高橋政代・プロジェクトリーダーも3日、毎日新聞の取材に「理研の対応は遅い」と痛烈に批判した。

 STAP論文の不正の全容解明や処分の見通しが立たない中、理研の予算獲得への熱意は衰えていない。5月下旬、研究室主宰者たちに理研本部からメールが届いた。「課題解決型の研究目標と、研究課題・体制を提案してください」。「来年度予算要求に間に合わせるため」と、締め切りはわずか数日後。「理研はやっぱり何かおかしい」。メールを受け取った研究者はあきれ顔で言った。=つづく