ロシアによるウクライナ侵攻と新型コロナウイルスに翻弄された今年も、いよいよ終わろうとしています。
今年は有名人であれ身近な人であれ、自分が影響を受けた人々が多数亡くなりました。自分の年齢からして、今後そのようなことはますます増えていくことでしょう。仕方のないこととは思いますが、寂しく、また身に堪えます。自分自身の健康と死についても、考えざるを得ません。
仕事の面で言えば誠に忙しい1年でした。毎年忙しい忙しい言ってる気もしますが、今年はホントに忙しかったんだよぅ(泣)。その忙しい中で、年末に新刊書を書き上げることができました(発売は来年早々)。これは大きな励みとなりました。来年は2冊書いてやろうと目論んでいます。
さて、実生活の忙しさとは裏腹に今年も閑散としたこのブログ、年末大晦日に何を書こうかと思ったのですが、かつて3年ばかり続けて「気になる言葉」を書くのが年末の定番となってました。
気になる言葉2012
気になる言葉2013
気になる言葉2014
毎年恒例の行事にしようかと思いましたが、止めました。なぜなら、飽きたから(呆)。というより忘れてたよ。で、今年はこれを復活させようと思います。なぜなら、気まぐれです。
早速始めます。
1「ネタ」と「シャリ」
Web上のある記事を読みました。「正式な寿司屋でタブーとされること」みたいな記事です(笑)。こういう雑学が大好物なんです。
寿司屋における「正式」とは何なのか?その定義が気になるところですが、突っ込みどころはそこじゃありません。記事では、大意次のようなことを言ってました。
――お茶のことを「あがり」、お勘定のことを「おあいそ」というのは寿司職人の符丁であって、客の側でそれを使うべきではありません。それは恥ずかしいことです。また、寿司に醤油を付けるときは、ネタに付けるようにしなければなりません。シャリに醤油を付けてはいけません。
って、分かりますかねぇ突っ込みどころ。「ネタ」も「シャリ」も寿司職人の符丁だろがよお(爆笑)。「ネタ」は「種」をひっくり返した言葉。種には料理などの具、材料という意味があります。「シャリ」は「舎利」。舎利とは仏の遺骨のことで、米の白い粒粒を遺骨になぞらえた表現なのでしょう。
ネタもシャリも一般化した言葉になっているから客側で使ってもいい?それを言うなら、「あがり」も「おあいそ」も同じことになってしまいます。
妙に「通ぶって」一般には分からない符丁を使うのは、確かに恥ずかしいことと思います。しかし言葉によるかな。「あがり」と「ネタ」はいいんじゃないですかねぇ?ネタのことを種と言ったら、「ププー!間違えてるよこの人」と逆に笑われてしまいそう。「あおいそ」は語源的に「愛想尽かしのようで申し訳ありませんがお会計をお願いします」という意味のようなので、確かに客の側で言うべきではないかも知れません。「シャリ」は骨でしょ?イメージが悪すぎなんで(客のみならず職人も)使わない方がいいでしょう。
2卑下
最近、こういう表現をよく目にします。
――彼は「岸田氏にはそもそも政治的能力が不足している」と述べて、岸田総理を卑下した。
分かりますかねぇ?他者を「けなす」「貶める」というような意味で「卑下する」と言っているのです。
これは落ち着かない表現です。私の中のボキャブラリーでは「卑下する」は謙遜の意味であり、他者を批判するために使うことはあり得ないと思っていました。
――岸田総理は、「私は開成高校という名門校の卒業ですが、東大に3回も落ちた劣等生ですよ」と卑下した。
岸田総理自身が自分のことを卑下するのは分かりますが、他人が卑下しちゃおかしいだろと思うのです。
辞書で調べると、卑下には、「1自分を劣ったものとしていやしめること。へりくだること」という意味のほかに、「2いやしめて見下すこと」という意味もあるようです。それでは「卑下する」を「貶める」の意味で使っている人々は、この「2」の意味を自覚し意図して使っているのか?そんなワケねーだんべ!と思うのでございますことよ。そんな使い方、明らかに一般的ではありません。辞書には「2」の用例も載ってましたが、「自修の事を甚だ卑下なる田地に落ち沈ましむるなり」とありました。だけどこれねぇ、明治初期の「西国立志編(中村正直・訳)」の中の一節ですよ。「2」の意味が現代的に残っていることはあり得ないと思うのだけどな。
3躊躇う、彷徨う、蹌踉く
読めますか?順に「ためらう」、「さまよう」、「よろめく」です。難読漢字クイズみたいなサイトを見ていると(だから雑学が好物なんですっ!)よく出てくる言葉です。で、「社会人ならこれくらい読めるのが常識云々」みたいな攻撃材料に使われます。
だけどさ、これらはもともと「当て字」だよね。文法的には「熟字訓」というのが正しいのかな?意味を取って読み方を当てただけで、「躊躇」が本来的に「ためら」と読むわけじゃないですよ。俗なたとえで言えば、「本気」と書いて「マジ」と読む、みたいなもんです。
一般的には全てひらがなで書きますし、ひらがなで書く方が正しい(漢字はない)ものだと思います。したがって、これらが読めなくても社会人失格とは言えないでしょう。
と、著しくどうでもいい記事でしたね!来年もまたよろしくお願いいたします。来年も大晦日に「気になる言葉」を書きます!かな?約束はしません。