セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「荒野の決闘」

2013-03-13 23:21:00 | 外国映画
 「人に言えない、観てない」シリーズ、今年7本目。
 「駅馬車」を観たのなら、これも観なきゃイカンだろうと言う事で「荒野の決
闘」(汗)
 西部劇の二大傑作、J・フォードの二大傑作の一つと言われてる作品。
 どうも、僕は入り方が悪かった。
 これは「荒野の決闘」ではなくて「愛しのクレメンタイン」だと、頭では解って
た積りなのですが、「駅馬車」を観た後だったし、ワイアット・アープ、ドク・ホ
リデイ、クラントン一家とくれば、気持ちがどうしても「ガッツ石松」へ行っちゃ
ってた。(大汗)
 ですから、ちょっと肩透かしを喰った感じがして・・・。
 でもこれは、きっと後から来るだろうなと思ってたのですが、一晩明けたら
案の定、ジワジワ~っと。

 「荒野の決闘」(「My Darling Clementine」1946年・米)
   監督 ジョン・フォード
   脚本 ウィンストン。ミラー サミュエル・G・エンゲル
   原作 スチュワート・N・レイク
   撮影 ジョー・マクドナルド
   音楽 シリル・モックリッジ アルフレッド・ニューマン
   出演 ヘンリー・フォンダ
       ヴィクター。マチュア
       リンダ・ダーネル
       キャシー・ダウンズ

 一晩経って一番印象に残ってたのは、クライマックスの撃ち合いじゃありま
せんでした。
 床屋の髭剃り辺りからの平穏な日曜日の描写の数々、そして一連のシー
ンのクライマックス、アープとクレメンタインが踊るフォークダンス、ここが最高
に良かった。
 二人で踊る直前、初恋のウブな青年みたいにモジモジしてるアープ、「何時
になったら誘ってくれるの?」と表情をコロコロ変えながら待ってるクレメンタ
イン。
 凄く微笑ましいんですよね、この時の二人。
 (クレメンタイン、先っきまでドクの事で泣いてたのに~フォードさんの描く淑
女は、いつもミステリー~笑)
 何処となく「寅さん」を思い出してしまいます。
 このシーンを例えるなら、さしずめ村祭りの盆踊りを見てる寅とマドンナって
所でしょうか。
 他にも、クレメンタインの初登場シーンは、ニヤけながらマドンナの荷物を持
って「とらや」へ入って来る寅みたいだし、マドンナが居るとも知らず、彼女の前
で身だしなみを整えてるのも、何処かで見たような・・・。
 スイマセン、話が横へ逸れました。

 この一連のシーン、やっぱり戦争の影響が出てるのかもしれませんね。
 髭もオチオチ剃っていられない町だったトゥームストーン、それが仮初めにし
ろ平穏な町になって日曜の朝には近在の人達が安心して集まってこられるよう
になった。
 それは、長い戦争が終わり、ようやく訪れた平穏、だからこそ感じられる硝煙
の匂いのない清らかな朝の空気、祈る場所を作り始める人々、アメリカの194
5年が象徴されている気がします。
 明日が有る世界だから、明日を信じて、明日の話が出来る。
 J・フォードの戦後第一作になる本作、これらのシーンには監督の思いが強く
滲み出ていて、その平穏な日々の有り難さが、不器用な男の精一杯の告白と
いう有名なラストシーンにも繋がっている、と思うのは考えすぎでしょうか。

 主要人物ワープ、ホリデイ、チワワ、クレメンタインは、流石にJ・フォードでよ
く描けていて、4人共、それに応えた的確な演技だったと思います。
 特にH・フォンダのワイアット・アープは、この長閑な西部劇のアープにピッタリ。
 V・マチュアのホリデイも、後の「OK牧場の決闘」より遥かに描き込まれた人物
になっていて、それを観客に納得させるだけの演技をしていました。
 でも・・・、でも、僕の個人的好みを言えば、本作に較べ数段落ちる「OK牧場の
決闘」のバート・ランカスター&カーク・ダグラスの二人の方が好きです。
 アープって、日本で言えば「地廻りと岡っ引き」の二枚鑑札をやってるような人
間なんだから、もう少し強面の方が真実っぽいし、ドクに至っては結核病みなの
に顔の肉付きが良すぎる。(笑)
 フォークダンスのシーンやラストの台詞も、好男子のフォンダより厳ついランカ
スターがやったほうが面白い気がしないでもないんですよね。
 でも、やっぱり、この作品にはそぐわないか。(笑)
 (大体、この頃はまだ二人共無名だし)
 ヴァンプで鼻っ柱の強いチワワを演じたリンダ・ダーネルも感じを良く出してい
て、尻軽女だけどもドクに対する「やるせなさ」は充分感じ取る事が出来ました。
 さて、タイトルにもなってるクレメンタイン役のキャシー・ダウンズ。
 正に「荒野に咲いた一輪の清らかな花」
 この作品に気品を感じるのは殆んどこの人のお陰。
 「西部劇」という事もあって、大ファンは男が圧倒的に多いのですが、そればか
りでなく、この映画のクレメンタインの存在が男性ファンを増やしてるのは間違い
ないと思います。
 彼女の役者人生は残念な事に「一発屋」で終わってしまったようですが、この作
品が有る限り永遠に観る者に強い印象を与え続けていくし、誰もが知ってる「代
表作」が有る役者さんって幸運だと思います。
 (彼女が演じたクレメンタイン、記憶が霞んで顔は思い出せなくなっても、この映
画のクレメンタインという存在は決して忘れる事は出来ないでしょう、・・・男なら~
笑)

 良い作品だと思います。

※たった一ヶ月前、西部劇のトップだった「リオ・ブラボー」が、今では第3位。
 この先、どうなるんだろう。(笑)
 
 
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4 コメント

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Unknown (宵乃)
2013-03-14 09:17:07
もう忘れ始めてるんですが、いい作品ですよね~。邦題からドンパチやるのかと思ったら、意外にもロマンティックなドラマで驚いたんですが、さすが名作と唸らされました。

>J・フォードの戦後第一作になる本作~その平穏な日々の有り難さが、不器用な男の精一杯の告白という有名なラストシーンにも繋がっている

なるほど、時代背景を考えるとさらにラストシーンが味わい深くなります。
アープの初心な少年のような告白シーン…確かに平穏な日々があるからこそですね。

顔は思い出せないけど、クレメンタインの身にまとう清楚な雰囲気は思い出せます。音楽と相まって、彼女と別れるアープの切ない心情が伝わってきました。
昨夜はコメントを有難うございました☆ (miri)
2013-03-14 14:24:54
>床屋の髭剃り辺りからの平穏な日曜日の描写の々、そして一連のシーンのクライマックス、
>アープとクレメンタインが踊るフォークダンス、ここが最高に良かった。

そうですね~そのあたり、良かったです☆

>(彼女が演じたクレメンタイン、記憶が霞んで顔は思い出せなくなっても、
>この映画のクレメンタインという存在は決して忘れる事は出来ないでしょう、・・・男なら~笑)

女性目線でも良い女性だと思います☆
顔はまだ覚えていますよ・・・どちらかというと「キレイ」ではなく「愛らしい」方ですよね?

女優さんを続けなかったのは、きっと良い私生活を過ごされたからだと、私は思いたいです♪

>良い作品だと思います。

ハイ、皆さまのように大絶賛までは思いませんが、
特に悪くもないし、良い作品だとは思います。

>※たった一ヶ月前、西部劇のトップだった「リオ・ブラボー」が、今では第3位。
>この先、どうなるんだろう。(笑)

まだあれもあれもあるじゃん! なんちゃって、ジョーダンですよ☆
「リオ・ブラボー」も見て時間が経っているなら再見なさらないと公平感が薄れそうな気が・・・
余計なお節介でした。。。
遅くなりました! (鉦鼓亭)
2013-03-15 22:49:22
 宵乃さん、コメントありがとうございます

「いとしのクレメンタイン」というタイトルからロマンスが入った映画だとは思っていたのですが、ここまで「純情物語」だとは思っていませんでした。(笑)
 それもこれもクレメンタインというキャラクターが有っての事。
「リオ・ブラボー」なんかも純情物語が入ってますけど、相手が玄人さんだから、ここまで清々しくないんですよね。

昨日、暇な時「荒野の決闘」を検索していたのですが、皆さん、日曜の朝のシーンを褒めていました。
やっぱり、いいシーンは誰の記憶にも残るようです。(笑)
遅くなりました! (鉦鼓亭)
2013-03-15 23:23:31
 miriさん、コメントありがとうございます

「キレイ」ではなく「愛らしい」方>僕は「愛らしい」に弱い。(笑)
行動力が有って清楚で愛らしい>僕の理想。(爆)

美しいモノクロ>
多分、miriさんは、柔らかいタッチで深みの有るモノクロが好みなんじゃないかと推測しています。
僕はクリアでクッキリしていてコントラストの強い画調が好きですね。
だから「第三の男」、「椿三十郎」、「赤ひげ」は非常に美しいと思っています。
特に「赤ひげ」は、世界のモノクロ史上、最高の部類に入る作品だと考えます。
(ただ、この作品は死んでいく話が多いので、無理なさらない方がいいですよ)
美しさで有名な宮川一夫撮影の「羅生門」は、角川が完全?リマスターした版を観てないので何とも言えません。

「リオ・ブラボー」>実は一昨年、再見していま~す。
これは、昔、まだTVで吹き替えの映画を観てた時から、ずっと好きな映画・・・なんだけど、もしかしたら、年季が入ってるだけかも。(笑)
でも、あのオチは大好きです。

まだあれもあれもあるじゃん!>J・フォード騎兵隊三部作から「黄色いリボン」、他には「リバティ・バランスを撃った男」、「西部開拓史」が一応リストに入ってます。
あ、「トゥール・グリット」も有ったっけ、これ元の「勇気ある追跡」(結構好き~これも去年観てます)を観てるので、今年中には観ようかなと思っています。

西部劇は大モノを2本片付けたので、次は少し方向を変える積りです。

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