=電線の鳥blog=「今日もどっちつかず」

 一般的にどうなのか、みたいなことは、結局、重要なことではない~チップ・エクトン

美空ひばりデビュー60周年

2006年03月29日 | 文化・社会
 昨晩のテレビ朝日特別番組を途中から観て、改めて驚いた点があった。

 唇の動き、眉の上げ下げ、目配り、息遣い、涙…。
 彼女の場合、頭の先から足先まで、呼吸のひとつひとつが計算し尽くされた演技なのである。
 それは歌っているときだけでなく、インタビューを受けている時も同様だ。
 おそらくプライベートでも、人と会っている時は常に演技をしていたのではないかと想像する。
 それは「偽っている」というのではなくて、ファンを意識しているからなのだろう。
 だからむしろ彼女にとっては、そちらのほうが常態だったのではないか。
 平成元年には手塚治虫も逝去しているが、どんなに忙しくても自分のイメージを意識して振舞ったという。
 「素顔」だとか「本音」だとかを演技する近年の芸能人とは、次元の異なる真実がそこにある。
 
 美空ひばりは52歳で亡くなった。(番組で病名が出ていたし、病死であることは確かなのだろうが、
今ひとつ原因が判然としない。)早すぎた死であるが、彼女には「歳よりも若々しい」とかいう事とは違う、
年齢を超越したイメージがあった。それが顔立ちによるものなのか、少女にして完成された表現力が
備わっていたせいなのかは分らない。

 そして、今さらながら歌唱力は驚異的で、彼女の歌を聴いたあとでは、殆ど全ての歌い手が粗雑に
聞こえて仕方がないだろう。

 家庭の幸福が得られなかったことも含め、宿業としか形容しようのないものを持った偉大な歌手だ。
 あれ?「歌手」って大衆芸能では、死語になりつつあるような気がしてきたぞ。

 付記:この番組ではブラジル公演がひとつの目玉になっており、事実興味深い映像だった。これはテレビ朝日という、後発でソースが少ない(だろう)局ならではの余禄と言えるかも知れない。


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