Train of thought

wish you were here

福祉労働の問題点

2005-12-23 22:27:27 | 社会福祉(その他)
気がつけば、福祉の業界で働いて十数年。
この分野も時代の流れにもまれている。
高齢者の福祉は介護保険制度と「自由化」による企業の参入により、すっかり荒らされてしまった。
障害者の分野もまた、『障害者自立支援法』により、これまで整えられた環境が荒らされようとしている。

現場は、いつも問題に満ちている。
スタッフの努力は、徒手空拳のなかから見出されることも少なくない。
時代のある部分を切り取った現実と格闘しなければならないのに、バックアップは脆弱。
なのに、福祉に商業主義が持ち込まれ、「福祉サービス」ということばが生まれた。
高齢者分野の場合、以前は運営費は公費からまかなわれていたので、給料も公務員並みだった。
介護保険が始まって、介護は「サービス」となり、「商品」になった。
仕事はきつくなり無機質化し、給料が切り下げられた。
正規職員であっても、都市部では生活がままならない。
仕事はきつい、給料は安い、じゃ誰も寄り付かない。
児童分野は、今も辛うじて公費での運営が守られている。
ただ、その公費自体が粗末。生活保護費以下の水準。
また、虐待などの問題も大きくなり、これまでの体制では対応しきれない。
制度的硬直性が、的確な対応を妨げている。

福祉労働は、価値を生産しない。生産しないのに、競争原理を持ち込むとなると、どうなるか。
一般に、福祉とは、生存権の保障である。ある意味、敗者復活の可能性でもある。
他方、競争原理とは、勝者と敗者を作り出すシステムでもある。
故に、福祉に競争原理を持ち込んだ時点で、自家中毒を起こす。
福祉の概念は崩壊し、競争だけが暴走を始める。

既に介護保険制度はシロアリの巣窟となっている。
狙われているのは、高齢者のいる世帯。月に何十万も払っている世帯はいくらでもある。
その裏で、福祉労働者の賃金形態は劣悪化し、人材は育たない。
このままでいけば、あと20年もすれば今の「団塊の世代」が要介護状態になった頃には、
日本の産業は「はげ山」のようになっている。そして、介護保険制度も破綻している。
今、福祉労働のあり方そのものが転機にさしかかっている。
「競争原理によらない質の向上」の論理による、福祉的援助の再構築が求められる。

私の職場の経営者が、人事・給与制度の改定を言い出している。
基礎給与を切り下げたうえに、人事考課・査定を持ち込み、差別化を図るとしている。
人事考課自体はどこの企業でも普通に行われていることだが、
福祉の分野ではまだなじみの少ない方法論。何を持って評価の基準にするのかすら
全く確立されていない。「競争原理によらない質の向上」の論理をどれだけ具体化
できるか、ひとつの実験場になりそうである。

ところで、OCNはいつまで工事をやっていれば気が済むのだろう。