マダム南平台のサロン

法とことばと社会についてのおしゃべりコーナー

4月まで春眠

2006-02-16 17:10:25 | Weblog
いろいろアクセス頂きまして、ありがとうございます。申し訳ございませんが、4月まで春眠に入ります。4月以降のアクセス、お待ちしております。

わかりやすい司法プロジェクト:公開セミナー

2006-02-12 21:35:32 | Weblog
これも以前にご紹介しましたが、昨日、公開セミナーが開催されました。予想以上の人にお集まりいただき、感謝申し上げます。

研究会として下記のの提言をいたしました。
Ⅰ 当事者の立場から
【提言1】当事者の主張、証明の「対象」のわかりやすさ~裁判員の認識に沿って
【提言2】当事者の主張、立証「方法」のわかりやすさ
   ①情報「媒体」のわかりやすさ:法廷で見て聴いてわかる媒体
   ②情報「検証」のわかりやすさ:裁判員にわかる検証の研究
   ③情報「技術」のわかりやすさ:コミュニケーターの総合力を

Ⅱ 刑事版Nコート
【提言3】書面中心主義から口頭主義へ~法廷における質問等を通して裁判員の積     極的参加を~
【提言4】単なる取調べ対象としての被告人から、本人の手続き参加へ
【提言5】事件の特質等に相応しい証拠調べを
【提言6】論告・弁論後の裁判官、検察官、弁護人及び裁判員の口頭による議論の     活発化を

Ⅲ 評議のあり方~合意のためのコミュニケーションの視点から、構成員全体がコミュニケーション能力を養う道を提起する~
【提言7】全ての関与者の脱「先生」化
【提言8】グループダイナミックス、非言語の活用を
【提言9】裁判官:聴き、観察し、話を促す能力養成
     裁判員:合意に向けて話し合う能力養成

Ⅳ 審理の透明化~刑事裁判における判断過程の「透明化」を実のあるものするた  めに~
【提言10】評議の場に、市民の「目」と「口」を持ち込もう
【提言11】法廷の「公開討論会化」を
【提言12】メディアを通じて透明化の社会共有を

補足
◆法教育の深化・普及を通して「健全な非専門家」の育成を
 ~「能動的人民」の育成(三谷太一郎)~
◆IT手段の積極的活用により、情報共有を進め、わかりにくさの壁の克服を


大河原ゼミ:公開シンポジウム(裁判員制度)

2006-02-09 07:31:01 | Weblog
以前にこのブログでもご案内しましたが、7日にゼミ生による裁判員制度に関するシンポジウムがありました。

裁判員制度に関するシンポジウムは、全国で多く開催されていますが、ゼミ生のシンポジウムの「売り」は、法学部でない学生が、非法律家の、即ち、市民の目線からの企画であったことです。

シンポジウムは、裁判官、検察官、弁護士による制度やわかりやすさに向けてのご報告、参加者に質問を書く時間として10分の休憩、ゼミ生による評議の分析報告、パネルディスカッションという構成でした。

当日は、卒論発表会や就職の説明会と重なったりして、学生の出席は当初の予想ほどでなかったですが、意外にも市民の参加が多く、結局、全体で40名程度の参加となりました。裁判員制度に関する周知と関心が、市民には一定の効果があがっているが、学生はまだまだであることを実感しました。

質問を書く時間を10分設けたもののあまり質問が出ないのでないかと心配していましたが、参加した人ほとんど全員が質問を書いてくださいました。この反応には正直言って大変驚きました。

やはり法曹三者にお集まりいただいたことが、何よりも新鮮だったようです。事前に、ラジオ高崎での放送、高崎市報、生活情報誌(パリッシュ)、朝日新聞のマリオンでも掲載して頂き、当日は、報道機関も三社お越しいただき、読売新聞(群馬版)やFM群馬でシンポジウムについて報道して下さいました。

質問やアンケートの結果は、今、ゼミ生がまとめています。質問の中に、法学部でない学生の「素朴」な質問も多く、また、このブログでご紹介します。


被疑者への警告:オーストラリア

2006-02-05 21:09:06 | Weblog
オーストラリアにも、アメリカのミランダ警告のようなものがある。被疑者が外国人であれば、当然、通訳がつく。

私自身、ひょんなことからオーストラリアにおけるある被疑者への警告の資料を目にすることがあった。ただ、直接に捜査機関や当事者側から入手した資料でないことをお断りしておく。

警察は、尋問を始める前に被疑者に下記の点を言うように義務づけられている。
1、communicate, or attempt to communicate, with a friend or relative to inform that person of his or her whereabouts
2、communicate, or attempt to communicate, with a legal practitioner of the person’s choice (省略)
3、(被疑者が外国人の場合)inform the person that he or she may communicate with, or attempt to communicate with, that consular office(省略)

1の趣旨は、「親に連絡するか」であろうが、これを「友人か親戚」にと訳すると、被疑者にはことの重大さが伝わらない。英語のrelativeには親が含まれるが、relative=親戚というのが日本では定着しているので、通訳が適切に訳さない可能性が高い。
2の場合も、「国選弁護人」が趣旨であろうが、通訳が「法律の専門家」とでも訳したら、これも何のことかわからなくなる。仮に「弁護士」と訳してもらっても、外国で費用が払えるのかなと悩んでしまうであろう。
3の場合、「領事館に連絡するか」であるが、大使館がない町でも、大使館としてもらった方がわかりやすい。

そもそも、自分が全く関与していない犯罪に巻き込まれ嫌疑をかけられた日本人の場合、こういう警告の意図がまったくわからないであろう。警官が、柔和な顔をしてcommunicateやrelativeを使って規定どおりの警告を言うならば、仮に通訳抜きに英語を聞き取ったとしても、どれだけ重大な権利がかかっているかが全くわからない。寧ろ、犯罪に関与している人の方が、被疑者の権利を「正当に」行使できると思う。

盗み聞きからの供述?

2006-02-02 10:32:34 | Weblog
1970年代の後半の事件である。アメリカである男性がショットガンでタクシーの運転手を殺害した。5日後、この男性は警察に捕まったが、決め手となる凶器はまだ発見されていなかった。警察は、男性に「ミランダ警告」を告知して、男性は、弁護人の援助があるまで黙秘する意思表示をした。

パトカーで男性を護送中、警官の一人がもう一人に、「殺人現場のそばに障害者の学校があったな。あの子達が弾の詰まったショットガンを見つけて、間違って発砲して死んだりしなければいいのにな、、、」と話した。すると、この話を聞いていた男性が、警官の話に割り込んで、凶器のありかを教えた。

警官のこの話は、自己に不利な供述の強要になるのだろうか?一審は、男性のミランダの権利放棄と判断した。しかしながら、ロードアイランド州最高裁は、一転して、一種の供述の強要と判断して一審の有罪判決を破棄した。連邦最高裁は、自己に不利益な供述の強要は、直接的な言葉による質問以外に態度なども含むが、この場合の警官同士の話はあてはまらないとして、二審を覆して男性を有罪にした。

おそらくは、警官は意図的にこの会話を被疑者のいるパトカーの中でしたのであろう。勿論、新米の警官であれば、単なる世間話であることもありうるが、年季の入った警官であれば、意図的と解釈するのが自然である。しかし、捜査側の経験度の調査までして、発言の意図の特定に努めていくとすれば、本末転倒であろう。この男性は、殺人を犯し、それに対して正当に償う義務がある。

ただ、一つのガイドラインとして、警官同士の会話が、被疑者に向けられたか否かの区別。被疑者に向けられれば、供述の強要。次に、警官同士の会話の中で、会話の焦点が、事件に関係がある被疑者か関係がない第三者か。つまり、「あいつ(被疑者)が(自分達に)協力的だとこっちも助けてやれるんだけど」といった会話は強要。しかし、この場合のような「障害者が、、、」は強要にあたらない等が考えられる。

この被疑者に不利にみえるガイドラインかもしれないが、被疑者の「善意」は、むしろ、一種の「自首」と解釈して、刑の減軽を考えればよいのではないか。