laisser faire,laisser passer

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沼津は遠かった

2013-09-21 | spectacles

そりゃ、江戸時代歩いて何日も掛かったのに比べれば・・ですが新幹線使わなくても二時間かからないはずなのに、11時開始で沼津は2時過ぎだった。

いや、国立劇場での文楽・伊賀越道中双六 第一部での話ですが。

歌舞伎のなんちゃって通しを遠い昔wに見たことがあるのだけれど、文楽ほどかっちりやってくれるわけでもないし(歌舞伎って役者がかっちょよくみえない場は容赦なくカットしちゃうからねぇ)、本当は後半も見たかったのですが日程とチケットの都合がつかず、とはいえ、運よく人気の一部を見ることができたので喜んだのだけれど。

いやあ、前半、沼津にたどり着くまでがなかなかの退屈道中でしてw

特に円覚寺の段は、ほぼ夢の中・・・なので肝心の刀すり替えの部分がまったく分からず、刀すり替えがわからないと、あの段はナニがナニしてなんとやら・・・が五里霧中状態になっちゃうので、なんでこの人たち泣いてんの?(板の上でも下でも)でひさびさに「取り残され感」を味わったのでした。いや、寝てた私が悪いんですが。

…その前後の和田行家館も、唐木政右衛門屋敷も、長いし。唐木政右衛門はこの芝居全体でも3番目くらいのいい役なんだけど、なんだか今日文楽見た限りではいい男には思えなかったなあ。
11月国立劇場の通し狂言(といっても歌舞伎だから半通しだけどね)で橋之助がやるらしいので、イメージが変わるかどうか、楽しみ。

ここまで好きな太夫が誰一人いなかったのも退屈に輪をかけたかも。最初の最初に小住くんが出てたんだけど、なんと文楽では珍しい御簾内でorz

しかも出番数分。いわゆる前説的な感じね。まあいちばん下っ端で語らせてもらえるだけいいのかもしれませんが。
あ、出番は短かったものの大広間の段の咲甫さんはさすがの美声と表現力。やっぱり若手ナンバー1の地位はまだまだ呂勢には譲ってもらえないw

 

というわけで三時間、ようやく沼津到着!

やっぱり有名な段は有名なだけのことがある。よくできてるわ。

歌舞伎とあちこち段取りが違うのも面白かった。
客席お散歩がないのは当然としてw、全体にあっさりしてる。とんとんストーリーが進む感じ。
なかで一番びっくりしたのが、十兵衛が平作と自分が親子であると悟るのがずいぶん早い段階である、ということ。
お米へのプロポーズwも純粋にお米にほれたから、というのではなくて、平作にお金を受け取ってもらうための口実っぽい感じになってる。
歌舞伎は役者中心なので、色事師w的な十兵衛の人間性を浮き出させることを主眼に、文楽はストーリー主に、あくまで義理と人情wに苦しむ十兵衛を見せることに徹する、という感じかしら。
個人的には文楽の十兵衛のほうが好きだなあ。
逢っていきなりプロポーズwはいくら二ザ様wでもちょっと軽薄すぎると思ってたんで。

ここに来てまとめて好きな太夫さんが!

平作内で呂勢+清治。マイベスト文楽コンビ!
…この地味な場面を語って唸らせるにはまだちと年期が足りない感じかなあ呂勢さん。
全盛期なら住さんが千本松原とあわせて語るところだろうけれど、まあ正直つなぎで出てるんだろうが、だからこそのチャンスだと思うけれど。
どうしても住さんで聞きなれた耳が比較しちゃう感じ?って私ニ度くらいしか聴いてないけどwww長年聞いてるファンならますますそうなんだろうな、と思います。耳足りないwって感じ。
いや、逆に言えば住さんと比べても、その程度の不満で済むくらいに進歩してるってことでもあるのか。ぽじてぃぶしんきんぐ!

三味線もまあいわゆる曲弾きとか一切ない場面なので、パフォーマー清治としても物足りなかった?w

続く千本松原。うん。ここは住さんお帰り!と取り合えずもろ手を挙げて祝福しましょう。
正直声は往年の1/10かな。そして表現も極限のミニマリスムというかw褒めれば削ぎ取れるものはすべて削ぎ取った、貶せば棒読みw
いや本当にスレスレのところ。半分不満半分喜びだったのです。これ、絶賛してる人は絶対過去の栄光分をプラスしてるよなあ、などといぢわるなことを思いながら。
だけど不思議なことに平作最期の場面ではオエツしてる私がいたんで・・・
淡々と語られるほうが、よりドラマティックだってこともあるのねぇ。
どんな歌舞伎より、今までの住さんの沼津より、泣けた。
もちろん語りの技術だけではなく、そこには住さんが倒れて、また戻ってきてそこにいる、ということのありがたさや、年老いた平作に住さん自身を重ね合わせての妄想とか、最後の最後の台詞

♪わかれゆく・・・を本当に淡々と、だけど万感こめて語る住さんの姿に自分のいろいろな思いを重ね合わせちゃったとか、もちろんいろんな要因があってのことなんですが、まあ演劇なんて本来そういうものよね。
舞台から投げかけられるいろいろなものをこっちがどう受け止めるか、そういう意味で、本当にチケット無理して取って、あげく沼津まで遠かったwけど、行ってよかった、と思ったのでした。

白湯汲みの小住さんが心なしか泣いていたような気がしたのも、また感動に輪をかけてしまったwww
もし本当に泣いてたなら、師匠に怒られたのかなあ。でも内心では嬉しいんだろうなあ師匠・・・

人形遣いに関してあまり興味がないのですが、今回、私にとって唯一の例外、特別な人形遣いさんであるところの蓑助さんがちょっと衰えていたのが気になった。彼の女形は出てくるだけで「違う!」と思わせる独特の体使いだと思うのですが、正直今回は普通の女形使い並み。そして段差があったのもあるけれど、移動のときに四人目の黒子が腰を支えてサポートしてたのも気になった。
来月のパリ公演で私は彼とあえるのだろうか!(チケットは無事ゲットしたのだ!)。

 

 


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