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ネタバレ小説「お父さんと伊藤さん」感想 中澤日菜子

2016-11-20 | 小説・漫画他

友達からこの本の存在を聞くまで、全然知らなかったのですが、読み始めたら、ぐいぐい引き込まれて、最近読んだ本の中で、最も面白く読ませてもらいました。5つ★

手短に言えば、年老いて気難しい父親を、誰が面倒をみるか?というお話なのですが、コミカルな部分がちりばめられている為、重々しさをあまり感じ無いです。声を出して笑う程じゃないけれど(心の中でクフッと笑いそうになる程度)

父の故郷の古い柿の木、母が亡くなる前に家族で行った旅行等ノスタルジックな要素と、中盤くらいからは、数か所、鼻の奥がツンと来ちゃったところや、老人(将来は自分もその立場になるであろう)について考えさせられる処と、色々な要素が、程よい匙加減でミックスしているお話でした。

主要メンバーは、彩と伊藤さんとお父さんなのだけれど、中でも伊藤さんが個性的というか、印象的でした。
読み終わってみれば、実はすごい人なんだな!こういう人って羨ましい。ひょうひょうとして、物事にあまり動じなかったり、ここぞという時にはズバッと発言、行動もできるし、いやはや、本当に驚きました。

私が一番、胸が苦しくなったシーンは、
行く処がないお父さんが、コンビニ数軒や公民館、図書館などをめぐって、最後に小学校に来て、もう生徒がみんな帰ってしまった後も、そこにとどまって、ずっと小学校を見ていたシーン。あぁーーーー。

カンマニアさん(とっても良い人!仕事先の同僚)のお父さんの葬儀から戻って来た彩が元気がないのを見たお父さんが、なんでも具材を突っ込んだうどんを作ってくれるところ。
カンマニアさんのお父さん(フェイスブックの人)が亡くなって、葬儀場で泣いている彼女を見て、はたして自分は父が死んだら泣けるだろうか・・?と彩が考えるシーンは、まだ父親が存命中の人は、自分にもあてはめて考えてしまうシーンですよね・・。



以下から、ネタバレしまくりの、あらすじです
34才の主人公彩は、本屋さんで働いていて、54才の小学校の給食のアルバイト中の伊藤さんという彼氏と同棲中だ。
そこに74才のとっつき難く頑固ものの父がやってきて、突然3人で暮らす羽目になる。

そもそも、父と同居していたのは、兄とそのお嫁さんでした。そもそも一人暮らしをしたいお父さんを、お嫁さんが強く、同居しようと言い出したからでした。それから数年経って、双子の子供たちがお受験で大変なところ、なんとお父さんが、何度も万引きで警察のやっかいになり、それがご近所で少しづつ噂になりかけていたりして、心労がたたってお嫁さんは精神を病んでしまったのでした。
見かねた夫(彩の兄)が、彩にせめて受験が終わるまでの期間、父を家においてもらえないか?と言って来て、自宅に帰ってみたら、すでに了解を得る前に父がやってきていた!という始まりでした。

最初は娘が20才も年上の男と同棲してるなんて知らないお父さん、あまり歓迎ムードではないし、彩と伊藤さんは急にやってきたお父さんに慌てたりもするのだけれど、親孝行の一貫としてボーリングに連れて行ったり、ホームセンターで妙に男同士盛り上がったり・・という出来事があったりします。

ある日、お父さんは、酔っ払いがバスの中で暴れたのを捕えるという、立派な行動をしたのですが、その際に手に怪我をしてしまい、警察に呼ばれます。その際に、お父さんがスプーンなどを万引きする癖があって、それをおばさんや兄夫婦は、今までずっと彩にはかくしていたことがわかります。

その後、お父さんは黙っていなくなってしまいます。行方を心配していたら、伊藤さんが昔の友人に頼んで調べてもらい、お父さんが故郷の家にいるらしいことが解って、彩と伊藤さん、そして兄も誘って3人で向います。この時も2人きりで行くのを、伊藤さんが「お兄さんにもチャンスをあげなくちゃ」って言うシーンがあって、伊藤さんに感心しました・・。

3人で行ってみたら、お父さんは買い出しをしてタクシーで戻って来たところでした。
彩達はお父さんに帰るように言いますが、お父さんは一人でここに住むと言い張ります。伊藤さんは古いお家に興味しんしんで、あちこちをよろこんで見て回っています。

その後のシーンで、あの温厚な伊藤さんが、ビシッと言葉を言い放ちます。
お父さんが「ここで一緒に暮らさないかな?」と伊藤さんに言うんです(まずは、それにビックリ)
それに対して伊藤さんは「嫌ですよ」
「なんでおれがあなたと暮らさなくちゃならないんですか。おれはあなたの息子でもなんでもない。面倒みる責任も義務もまったくない。他人に甘えるのもいい加減にしなさい」!みんなが固まっていると、3人に向かって
「仕方のない人達だなあ・・・」と・・・。翌日の朝、迎えにまた来ますと行って、どこかに行ってしまいます。

その晩、親子3人で泊まることになって、父母の結婚のなれそめや、昔の旅行で立ち寄ったドライブインの話などが出ます。
さて翌日、伊藤さんがうまいこと父を持ちあげてくれて、とりあえず帰ることになった矢先、嵐が来て雷が柿の木に落ちて燃えてしまいます。その火が母屋に燃え移ってしまいます。
そして、いつも大事に抱えていた段ボール箱の中身は、大量のそれら万引きして溜めたスプーン類が入っていたことが、火事の最中に判明します。(何故、お父さんがそれらを万引きし続けたのか?集めたのか?は、理由が解りませんでした・・解る方いらっしゃったら教えてください)

その火事によるやけどのせいで、お父さんは2か月入院します。退院した後、また彩の家に来るのですが、以前と違って、枇杷の木や家庭菜園の手入れも怠る様になって、すっかり意気消沈、小さくなってしまって、ぼんやり座っているばかりになってしまいます。
そんな中、かつての教え子2人が火事のニュースを聞いてお見舞いにやってきます。それがきっかけとなって、お父さんは元気を取り戻すのでした。
伊藤さんは、もうちょっと都心から離れた場所に3人で引っ越ししようと提案してくれます。それを彩がお父さんに言い出すのに数日かかり、それを告げる前に、お父さんから、養老院に入ることを決めたと言われるのでした。行動の早いお父さん、決めたとなったら、あっという間に出ていくことになります。

ただ、最後のシーンは、一体どういう事なんだろう・・・?
去って行く、父の後ろ姿を見送った彩たちでしたが、伊藤さんから「俺は逃げないから」と言われ、ちょうどポツリポツリと雨が降り出したので彩は傘を握りしめ、お父さんを大急ぎで追い、何か言おうとする、という処で終わるのですが、3人で一緒に住もうよ?って言うのかな・・。

お父さんは、最初年を取ってるフリーターの伊藤さんに対して良い印象を持っていなかったみたいですが、段々親しくなり、あの古い母屋に一緒に住まないか?とまで言わせるほど、人格?が出来てるというか、認められるんですよね。
最後出ていく時に「彩をよろしく」って言い残すしね。

うーん、、でもな、もし、ラストシーンで彩がお父さんに3人で住もうよ?って提案して、お父さんは一度は断ると思うけれど、彩が食い下がって3人で暮らす・・となると、どうなんだろうなあ・・・と思います。
お父さんは、そう誘ってくれた事は、とても嬉しく感じるだろうし、最初のうちは、良いと思うのだけれど、長年となると、生易しい事ではないと思うし。この後何年お父さんが自分の事を自分ひとりでできるだろうか・・?と思います。
また、万引き癖が復活しないとも限らないし・・。 
難しいですね・・・。

木皿泉『昨夜のカレー、明日のパン』と、ほんのり似た匂いがする小説ですが、こちらの方が、より一層好きでした。
10月に映画公開もされているそうで、彩には上野樹里、伊藤さんはリリーフランキーさん、お父さんは藤竜也さんと、ナイスキャスティング!ですね。
映画もレンタルになったら、必ず見てみようと思っています。

映画版見ました映画版の感想

お父さんと伊藤さん 2014/1/8 中澤日菜子

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4 コメント

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Unknown (はまかぜ)
2016-11-27 16:53:20
こんにちは
「年老いて気難しい父親を、誰が面倒をみるか?」とは重い問題ですね。
誰の家にでも起こり得ることだと思います。
いきなりお父さんが家にやってきて同棲中の彼との三人生活になったら、それは凄く戸惑うだろうなと思います。
私の実家も今は亡き祖父、祖母のことでなかなか大変でした。
そしていつかは自分も世話をされる側になるだろうこともまた気分を重くさせます
はまかぜさん☆ (latifa)
2016-11-29 10:45:43
はまかぜさん、こんにちは
そうなんですよね・・・こういうお話は、多くの人が同じ様に悩んだり、ぶちあたる問題ですよ・・。

はまかぜさんの実家も、色々あったのですね・・。
そうそう、そして自分もいつか、その立場になるわけで・・・。

なんというか、日本の保健や施設の敷居を、もうちょっと低く、北欧レベルに近づけて、安心して年を取って、逝けるようにして頂きたいです!
初めまして! (やま・ゆり@風の雑記帳)
2016-11-29 12:59:35
レビューを見て「お父さんと伊藤さん」を図書館から借りました。
とても面白かったです。
もっと中澤日菜子さんの本を読みたいと思いました。

他にも、本を選ぶ参考にさせていただいています。^^
読者登録させていただきました。
やま・ゆり@風の雑記帳さん☆ (latifa)
2016-11-29 19:15:23
やま・ゆり@風の雑記帳さん、こんにちは!
コメント、ありがとうございます、とても嬉しいです。

この本、面白かったですよねー。
私も同作家さんの別の本もこれから読んでみようと思いました。同じですねー

読者登録、私もさせて頂きました
これを期に、今後もよろしくお願いします。

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