いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】愛染かつら 新篇總輯篇(総集編)

2006-09-14 | 邦画 あ行

【「愛染かつら 新篇總輯篇(総集編)」野村浩将 1938~】を見ました。



おはなし
看護婦の高石かつ枝(田中絹代)は、亡夫との間にできた子供を、姉の協力でなんとか育てている未亡人。そんな彼女と勤務先の津村病院の御曹司、津村浩三(上原謙)の間に、愛が芽生えますがいつもすれ違い。二人の恋は成就するのでしょうか?



「花も嵐も踏み越えて」で始まる主題歌"旅の夜風"でも有名な、すれ違いメロドラマの古典です。とはいえ、「前編」「後編」「続」「完結篇」と続く戦前のプリントは残っていないので、戦後再編集された新篇總輯篇を見ました。さすがに、年末に放送される大河ドラマの総集編を見ているような物足りなさが若干ありますけど、逆に言うと、より「ジェットコースター」感覚で見れるのは良いかもしれません。なにしろ、すれ違いものは、「ああ、そこで振り向けっ」とか「もうちょっと待てば会えたのに」とかイライラが募りますからね。

二人の出会いは、上原謙の博士号取得パーティで、田中絹代の歌の伴奏を上原がかって出たことからです。そこから、よく分からないまま、あっという間に二人の仲は進展(なにしろ総集編ですから)。上原は、父母は結婚を許さないだろうから、二人で京都に逃げようと提案します。即座にOKする絹代。しかし、約束の時間に出かけようとすると、子供が熱を出したとの連絡が。連絡を取ろうとするも、既に上原が家を出た後、やむなく子供の看病をひととおり済ませ、「まだ間に合う」と駅に急ぐ絹代。しかし、ホームに飛び込むと列車は動き始めている。「浩三さまー」と呼びかけるも、その声は上原に届きません。

京都についた上原は友人の服部(佐分利信)に「それは裏切られたんだよ」とさんざん吹き込まれます。その後、京都に着いた絹代にも佐分利は冷たい冷たい。理由は分かりませんけど(なにしろ総集編ですから)、よっぽど女性問題でイヤな思いをしたんでしょうね、佐分利信。

このあと、洋行帰りの資産家令嬢、仲田未知子(桑野通子)登場。上原のいる津村病院の経営状態は実は火の車。上原の父としては、桑野との縁談で、一気に経営状態の挽回を図ろうという腹です。しかし、桑野はとても良い人。田中と上原の恋を応援するだけ応援し、さらには津村病院への援助まで父に納得させ、再び外国へ旅立ちます。もちろん、そこには色んな葛藤とかあったんでしょうが、なにしろ総集編ですから良く分かりません。

少しして、熱海の友人のところにいた上原。専門が小児科ということで、「たまたま」診察を頼まれ、「偶然」見た患者が、「偶然」そこにいて「たまたま」熱を出した絹代の娘でした。娘を連れてきた絹代の姉に、根掘り葉掘り聞いた上原は、熱海の駅で待ち伏せです。そこに降り立つ絹代。駆け寄る娘。
上原ショックです。「子供がいたなんて」「子持ちだったなんて」
なにしろ、基本はおぼっちゃんですから、絹代との関係をばっさり切ったようです、多分。(なにしろ総集編ですから、よく分かりませんけど)

その後、前後関係はよく分からないまま、絹代は作曲コンテストに当選。(もちろん、応募したシーンなんてありません、総集編だし)ついでに、レコード歌手になります。この段階で看護婦は辞めてしまっていたようですが、総集編なので……

絹代のデビューコンサート。招待券をもらった同僚看護婦たちは、上原にその日、休ませてくださいと頼みますが、上原はけんもほろろに断ります。しかし、看護婦たちが、絹代の健気な心持、子供が生まれる前にダンナとは死別したことなどを語ると、態度豹変。いきなり手すきの看護婦総動員で、コンサート見に行くぞ、と盛り上がっています。まあ、おぼっちゃんですからね。

そして、コンサートの日。2階席には、50人あまりの白衣の看護婦たち。上原はもちろん1階席です。やはり、白衣で熱唱する絹代。大歓声のうちにコンサートは終了です。さっそく、花を持って楽屋を訪ねる上原。上原は絹代に愛を告白します。めでたし、めでたし。

上原と結婚して、本当に幸せになれるのか?という深刻な疑問をはらみつつ、見所を考えてみると、まず戦前の風俗の裏と表が浮かび上がってきます。

裏は、厳しい身分社会の側面。上原と絹代の結婚が許されなかったのは、そもそも身分が違うからですし、ひょっこり家出から帰ってきた上原に母は「お風呂に入ったらどう。まだ女中も入っていないようだからね」と言います。使用人は主人の後に風呂に入るものだし、今ならまだ使用人が風呂に入っていないキレイな風呂だから、お入りなさいということが、まったく違和感無く語られています。

表は、1938年あたりはまだまだ、さばけていた時代だったんだなということ。
絹代の娘は、絹代のことをママチャンと呼んでいますし、婦長が看護婦を部屋に入れるときもコムイン(Come in)と言っていて、外来語の規制も無かったことがうかがえます。
また、上原が父から経営状況の悪化を理由に、意に沿わぬ縁談を持ちかけられら時も、「僕がその犠牲になるのはごめんこうむります」とはっきり自己主張していて、「孝」という概念が狂信的に絶対視されていなかったようです。

田中絹代は、年はともかく童顔なので「かわいい」といった感じですが、なにより素晴らしかったのが大人の魅力の桑野通子。戦後、大島渚の映画など松竹で活躍した桑野みゆきのお母さんですが、これがすごく良い感じでした。垢抜けたモガの側面を持ちつつも、品の良さや性格の良さがにじみ出てくるような演技を見ると、本当にこの人は良い人なんだなあ、と思います。もっとも台詞はカミまくりで、演技派とは言えないかも知れませんけど。でも、スターに必要なのは、演技力よりオーラですからね。これはこれで良いんです。
戦後撮られた、溝口健二の「女性の勝利」でも、田中絹代と桑野通子は姉妹役で共演していましたが、その時は桑野通子の素晴らしさに気がつきませんでした。ちなみに、「女性の勝利」撮影中に桑野通子は子宮外妊娠で急逝しました。生きていれば、大女優として名を残したんだろうな、と思うととても残念です。


(桑野通子)

 

いくらおにぎりブログのインデックスはここ
いくらおにぎり日記はここ

『映画・DVD』 ジャンルのランキング
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【映画】肌色の月 | トップ | 【映画】怪異談 生きてゐる... »
最近の画像もっと見る

あわせて読む