いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】黄線地帯

2006-09-01 | 邦画 あ行

【「黄線地帯」石井輝男 1960】を見ました。



おはなし
衆木(天知茂)は殺し屋。しかし悪人しか手にかけません。今回も神戸税関長を殺しましたが、依頼主に裏切られ、警察に追われるハメに。やむなく、踊り子のエミ(三原葉子)を拉致し、東京駅から依頼主の住む神戸へと向かいます。一方、エミの恋人で新聞記者の真山(吉田輝雄)は、折から問題になっていた東洋人女性売春組織(黄線地帯=イエローライン)と恋人の失踪に関係があると見抜き、やはり神戸に向かいます。果たして真山はエミを救いだせるでしょうか……


天知茂の「キザ」、三原葉子の「天然」、そして吉田輝雄の「茫洋」。3者の持ち味が、絶妙の比率でブレンドされた大傑作と言い切ってしまいましょう。石井輝男監督の前作「女体渦巻島」でも、この3人は共演していますが、天知茂の「キザ」はともかく、三原葉子や吉田輝雄は、その持ち味が完全に生かされているとは言えませんでした。

吉田輝雄は新聞記者。恋人がさらわれたというのに、まずは「白人に日本人女性を売りつける黄線地帯(イエローライン)が存在する」とデスク(沼田曜一)に力説して神戸への出張の許可をもらうところが「らしい」というか、茫洋としています。普通、血がたぎっている主人公は、まず走り出してから考えるものですが、吉田輝雄の場合は「出張願」を書いてから歩き出すんですよね。その後、神戸のカスバに着いても、あんまり役に立たずウロウロしているだけ。もちろん最後には愛する三原葉子のため命を張りますが、それも「普通の人」が頑張ってます、というレベルなのが親近感たっぷりでうれしいです。

三原葉子は踊り子。もちろん新東宝で三原葉子とくれば「踊らなくてどうする」と言うくらい定番です。この映画でも誘拐されているにも関わらず、ナイトクラブで踊り子がいないと聞くと「うん、すごくイカすの踊るわ」とセクシーダンスをガンガン踊っちゃう。さすが、三原葉子です。そのうえで、三原葉子ってダイナマイトボディの癖に「それを自覚していない」と言うか、体は大人で心は中学生みたいな「天然」ぶりが魅力ですが、この映画では、そちら方面もバッチリです。さらわれる時に赤いハイヒールを落としてみたり、神戸に着いてからは100円札に「助けて」って書いたりしてみますが、だからと言って、真剣に逃げようとはしない。天知から危害を加えられるなんて微塵も思わずに、無邪気に吉田輝雄が救いにくるのを待っている。ほとんど夢見る乙女ですね。映画の中では手を肩の高さに上げる「OH No!」のポーズや、指を鼻に当てるブタ顔を連発して可愛いったらありゃしない。




天知茂は殺し屋。孤児院で育ち、殺し屋家業まで落ちてしまった彼ですが、「悪党以外は殺さない」が自慢。しかし、悪党と聞いていた神戸税関長こそ実は正義の人で、慈善事業家の仮面を被った依頼主こそが悪党だったことを知り、神戸に乗り込みます。でも、同伴者が三原葉子ですからね。「無邪気な巨乳」というある意味反則スレスレな攻撃を受ければ、いくら天知茂でもキザの仮面が剥がれようというものです。多分、「今までこの手で落ちなかった女はいない」必殺の悲しい孤児院話をしてみても「あら、下宿代がタダなんていいじゃない」と、無邪気に言われてしまうと余計にペースが狂ってしまいます。こんな女初めてだ、と思ったかどうかは知りませんが、完全に心奪われた天知。でも、三原葉子は吉田輝雄が大好きなんですよね。まったく無邪気な女の、中途半端な好意は、男を破滅させてしまいます。


(イカす男 天知茂)

映画も後半、慈善事業家な悪党のもとに乗り込んだ天知は、売春と麻薬の元締め二人を射殺します。すると三原葉子は「嫌い、あたしあんたのような人殺しは大嫌い、嫌い、大嫌い」ですよ。天知はガーンです。え、俺のこと好きじゃなかったの、という気分でいっぱいでしょう。思わず「そうか、お前もか」と口走ってみますが、なんか惨めですね。
そこに「ようやく」駆けつける吉田輝雄。天知は三原をクルマに乗せ、逃亡しようとしますが、吉田と警官隊は港まで追いつめます。
そして「エミを返せ」と迫る吉田。せっぱ詰まって吉田を撃つ天知。天知に撃たれてしまった吉田に取りすがり「あなたが死ぬなら私も死ぬ。ね、いっしょに死のうね」という三原を見た天知は「ちくしょう、俺とは違う人種らしいや」と諦めの境地。警官隊に突入し、蜂の巣になって死にます。うーん、哀れだ。

ラストは天知の死体を声も無く見つめる吉田と三原。そして、汽笛の音と共にスパっと「完」になります。
いや、ホント素晴らしい。これも大当たりの映画でした。

 

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2 コメント

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三原+天知+吉田=? (シャケ)
2006-09-23 15:59:00
「ぽちゃセクシー」三原葉子が『黄線地帯』ではかわいい感じで(濃いっちゃ濃いんですけど)よかったですよね。添え物になってないところがいいです。魅力満載でした。

それから(TVの江戸川乱歩シリーズの)明智小五郎役もいいですが、やはりこの映画での天知茂は最高です。あの怪しい仮面が似合いすぎている(笑)楽屋でちょっと一服という時や、プライベートでも着けていそうです。

ただ個人的には、この濃い目のキャスティングの中で、(もちろん三原、天知ありきなんですが)吉田輝雄が、濃すぎずわりといいんですよ。白飯って感じというか。バランス取れてるっていうか。

だからというわけではないですが、意外と上品な味付けの、旨いカツカレーのような映画という気がしました。ヒレカツ(天知)にポークカレーのルー(三原)に白飯(吉田)。でもヒレカツとルーの結びつきよりも、ルーとライスの結びつきの方が悲しいかな強い。悲しきヒレカツ。ルーの色はイエローって感じでしょうか。
吉田輝雄は (いくらおにぎり)
2006-09-23 23:45:27
ようやく吉田輝雄を良さが分かってきたいくらおにぎりです。どんな奇妙な状況に置かれても。吉田輝雄の茫洋としたたたずまいでがある限り、そこに客観的な視座が用意されると言うか、物語が空中分解せずに済むんだなと思います。

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