いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】美しい夏キリシマ

2006-07-19 | 邦画 あ行

【「美しい夏キリシマ」黒木和雄 2004】を見ました。

おはなし
1945年8月。康夫(柄本佑)は肺浸潤のため中学を休学し、霧島連山を望む宮崎の農村で、祖父(原田芳雄)、祖母(左時枝)と暮らしている。軍の施設も工場もない村は空襲も受けず平和だったが、中国から引き上げた部隊が駐屯し、人々は竹やり訓練に明け暮れていた。


黒木監督自身の実体験をもとに描いた、宮崎の一農村でのお話。ロケ地は監督の出身地である、えびの市。アスファルト道路に土をまき、当時の未舗装道路を再現したり、ビニールハウスが映らないようにとうもろこしを植えて目隠しをしたり、さらには戦前には日本になかったセイタカアワダチソウをすべて刈り取ったりとさまざまな苦労をした結果、本当に美しい風景がフィルムに焼き付けられていました。そして、遠くに望む霧島連山の勇姿、そこには何十年と変わらない農村の原風景があります。

そんな村に、いつもと違う点があるとすれば、それは霧島をバックに悠々と飛行するグラマンの大編隊。本土決戦に備え、屯して訓練に明け暮れる兵隊たち。そして、婦人会の竹やり訓練です。でも、逆に言うと、それだけしか違いが無い。ここには、噂としての戦争、予感としての戦争はあっても、実体験としての戦争の惨禍は及んでいないのです。

戦争を身をもって体験したといえるのは、戦争未亡人(石田えり)のもとに足しげく通う兵隊(香川照之)。康夫の家の使用人はる(中島ひろ子)が嫁ぐ傷痍軍人の秀行(寺島進)。そして、勤労動員中に空襲を受け、目の前で同級生を失った康夫自身くらいです。

ただ、それも殺し殺される戦争の場に身をおいたのでありません。兵隊は満州で、新兵の訓練として「人体刺殺」を行ったのみで、みずからが殺されそうになったわけではないし、傷痍軍人は爆撃を喰らって片足を吹き飛ばされただけで、敵を殺したわけではない。康夫も目の前で瀕死の友人が助けを求めているのを腰を抜かして見ていただけです。

しかし、そんな経験は彼らの心をこなごなに吹き飛ばしてしまっています。いや、むしろフワフワと頼り無い「魂だけ」の状態にしてしまっているのかもしれない。
そして、そこだけ戦争に隔絶されてしまったような平和な村で、彼らの魂は漂っているのです。

細部にこだわった映像はただただ美しく、まさに「美しい夏」。香川照之を初めとして、演技陣は磐石の安定感。そして、柄本佑は難しいこの役を、まさに自分自身を生きるように自然に演じていました。李相日監督の「69 sixty nine」ではさほど凄いとは思わなかったので、これは監督の演出の賜物かもしれませんが。

 

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