いくらおにぎりブログ

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【映画】女奴隷船

2007-07-27 | 邦画 あ行

【「女奴隷船」小野田嘉幹 1960】を観ました



おはなし
特命を帯びて須川中尉は飛行機に乗り込みました。ところが、乗機は撃墜。須川中尉が意識を回復すると、そこは女奴隷船だったのです。須川中尉は女奴隷を救い出すために……

この映画は、まさに新東宝のエッセンスが最良の形で滲み出た、まさに傑作です。

「昭和20年 敗戦の色濃き頃」、マレー方面軍司令部に呼び出された須川中尉(菅原文太)は特命を受けました。女の写真に2重焼きされたレーダーの設計図を大本営まで届けるという重要任務です。早速、輸送機に乗って飛び立った菅原文太。しかし、途中で機はグラマンの襲撃を受け墜落してしまったのです。

菅原文太が意識を取り戻すと、そこは怪しげな貨物船の船上。どこだここは、と船員に聞くと上海に帰る貨物船との答えです。しかし、その時、絹を裂くような叫び声が。
あわてて、駆け出す文太。すると何ということでしょう。若い女・瑠美子(三ツ矢歌子)が船員にムチで打たれているではありませんか。とりゃーっ、文太は船員たちの間に割って入りました。すると、鞭打ちを命じていた女(三原葉子)が「およしっ」とタバコを投げ捨て近寄ってきます。「なんだ君は」という文太に「私はね、この船のクイーンよ」と答える三原葉子。そのスタイルは茶のズボンに白いシルクのブラウス、そして上からチェックのワンピースを羽織るというお洒落さんです。ちょっとカワイイな。

実はこの船は、九州で女たちを仕入れて上海で売りさばく、女奴隷船だったのです。他の女たちはそれでもみんな、娼婦だったのですが、三ツ矢歌子は野戦看護婦にしてやると言われ、騙されて売られてしまったというとても可哀想な立場でした。女たちと一緒の船倉に放り込まれた菅原文太は、そんな三ツ矢歌子に同情しまくりです。

三原葉子が船長とイチャイチャしていたところに、緊急ブザーが鳴り響きました。タイヘンです。海賊が襲ってきたのです。ちなみに海賊のお頭は丹波哲郎。奴隷船も銃で反撃しますが、さすが海賊船は一味違います。大砲を撃ち込んできたうえに、接舷したかと思うと、一気に青龍刀で切り込んできたのです。菅原文太も意味無く、ロープにぶら下がってターザンごっこをしていますが、1ミリも役に立たず、奴隷船はあっさり海賊に制圧されたのでした。

海賊船に乗せられた女たちと菅原文太。海賊たちは大宴会を繰り広げています。三原葉子は、女たちの閉じ込められた船倉に放り込まれて、イヤミを言われ、三ツ矢歌子は、丹波哲郎に言い寄られの真っ最中。

さて、海賊船に、やはり悪人の陳から無線が入りました。その内容は「須川を渡せば金はいくらでも出す」というもの。陳はアメリカのスパイもやっている男ですから、どうやら裏には何か儲け話が転がっていそうだぞと、ソロバンをはじく丹波哲郎。さっそく菅原文太を呼び出してムチ打ちをしてみます。でも、文太は一言も話さなかったのです。

とりあえず、隙を見て船倉を脱出した菅原文太はピストルを奪い取り、丹波哲郎を人質にしました。「早く、船を日本に向けるんだ」。文太は女たちに武器を持たせ、意気揚々と船長気分を満喫です。しかし、船員の猿芝居に引っかかった三原葉子が、銃を奪われ、形成は逆転。再び、文太と女たちは虜になってしまったのです。もっとも、三原葉子は丹波哲郎に言い寄って、ちゃっかり情婦気取りですが。

船は海賊たちの根拠地の島に帰ってきました。島民たちは、銃をぶっ放してお出迎えです。どうにもスゴイ島ですね。菅原文太は小屋に閉じ込められ、女たちの競りが始まりました。姐御肌で三ツ矢歌子を何くれと無く庇ってくれたお豊(左京路子)も、競り落とされて、今まさに奴隷の印の焼きゴテを押し当てられようとしています。それに猛反発したのが三ツ矢歌子。もし焼きゴテをやめないなら、「私たちは」死にます、と言い出しました。勝手に死ぬとか言われて怒るかと思えば、女たちはみんな三ツ矢歌子に大賛成。さすがヒロインの貫禄ですね。三原葉子も丹波哲郎に「あいつら本当に死ぬかもしれないよ」と言い出し、男たちも「やめろ、やめろ」の大合唱。めでたく焼きゴテは中止されたのです。

その代わりなのか、なんなのか三原葉子が踊りだしました。ブラジャーに赤い腰みのでセクシーダンスです。もちろん、これは新東宝映画のお約束ですね。そして、丹波哲郎は陽に焼けた上半身に、白いシルクのシャツを軽く引っ掛けるというイタリアの色男みたいな格好で鑑賞しています。ここはどこなんでしょう。

三原葉子が見張りに銃を突きつけて、菅原文太を救いに来ました。しかし文太は「女たちを置いて逃げるわけにはいかない」と一人で逃げるのを嫌がります。「あんたは重大な任務があるんでしょ。あいつらのことなんて、どうだっていいじゃないか。ねえ須川、私と一緒に逃げて」と言うなり三原葉子はいきなり発情。文太に抱きついてきます。しかし、そんなことをやっているものだから、二人は悪人の陳に見つかってしまったのです。陳は、丹波哲郎の裏を書いて、文太をさらって行ってしまおうと思いつきました。文太たちを引っ立てて、自分の船に向かう陳と部下たち。しかし、丹波哲郎の待ち伏せに合い、一味は機関銃でなぎ倒されてしまったのです。しかし文太も捕まったり逃げたり、また捕まったりと忙しい限りです。

女たちのいる小屋に放り込まれた三原葉子は、自分だけ逃げようとしたので、女たちから総スカンを喰らい、いたぶられてしまいました。はい、ここで三原葉子のキャットファイトシーンです。実に、新東宝映画らしい一コマということで。そこに「今の私たちは、お互いに力を合わせなければならないのよ」と三ツ矢歌子の台詞が入ります。ただ、思いっきり棒読みですが。

陳を脅かして、菅原文太が受けている特命を聞き出した丹波哲郎。しかし、その時、文太は見張りを倒し、小屋を脱出していたのでした。女たちを救い出し、ついでに部屋の隅っこでイジケている三原葉子も救い出した文太は、西の入江を目指して出発です。しかし、ここで三原葉子だけ、別の方向にスタコラ逃走。残ったメンバーは大密林を苦労して歩いていくのです。

一行は、ヨロヨロになりながら、ようやく海を見つけました。みんな海よぉ、と女が駆け出します。しかし、そこに響く機関銃の音。そう、三原葉子がチクったおかげで、丹波哲郎と部下たちが先回りして待ち構えていたのでした。ちなみにこの場所は、密林を通らずに、波打ち際を歩いてくれば、すぐの場所だったそうです。これじゃあ、菅原文太が八甲田山の雪中行軍を指揮したら、一発で全滅ですね。女たち、そして三ツ矢歌子のおかげで、どうにかその場を逃げ出した文太がほっと一息ついていると、いつの間に近寄ったのでしょう、海賊が真横にいます。ギクッとする文太。しかし、その海賊は「中尉、自分は脱走兵です。今日までの罪滅ぼしに中尉の脱出の手伝いをさせてくれますか」と言い出したのです。「うん」と答える文太。まあ「うん」としか言いようがないですけどね。

さて、菅原文太を逃がすために捕まってしまった女たち。丹波哲郎は、怒りに震え女たちを睨んでいます。ふてぶてしい顔をした女たちを、カメラが横から順になめていきます。ここは、まさにワイドスコープを最大に生かした、素晴らしいショットです。リーダー格の左京路子を、有無も言わせず撃ち殺す丹波哲郎。女たちは、丹波哲郎の横で情婦気取りの三原葉子を口々に"裏切り者"と責めます。
「あたしはね、お前さんたちが私をあんまりいじめたから、腹いせに裏切ったんだ」と言う三原葉子。まあ、一般的にいじめた人間は、いじめられた人間の気持ちなんて分からないものですが、ことこの場合に限っては、それはおかしいぞ三原葉子。

もう何かが吹っ切れたのか、抗議する女たちをガンガン撃ち殺していく丹波哲郎。「いい加減にして。鬼、鬼よあんたは」となじる三ツ矢歌子には、ムチをビシビシ打ち込んでいます。どうしちゃったんでしょうか。

ところで、隠れて様子をうかがっている菅原文太と元・脱走兵ですが、文太のダメっぷりは変わらないようです。
「中尉は火薬庫の爆破を。自分は奴らを誘い出します」「うん、それから」
仮にも士官なんだから、少しは自分でも頭を使ってください、頼むから。

ここでカッコいい音楽が高まり、映画はウエスタン風の展開に。カービン銃を乱射しながら、菅原文太は女たちを救い出します。もちろんスネている三原葉子も一緒に。
指揮官ぶってみたい文太は「みんな武器を取るんだ」「さあ配置につけ」と小屋に立てこもって、海賊たちと大銃撃戦を始めました。でも、敵もさるもの。丹波哲郎は、部下に火矢を打ち込ませることにしたので、たまりません。瞬く間に燃え上がる小屋の屋根。このままじゃ蒸し焼きです。しかし、第2次大戦中に弓矢とは……

ともあれ大ピンチ。しかし、そこで元・脱走兵が崖の上から手榴弾とカービン銃で掩護をしてくれました。「逃げてください、ここは自分が」という勇敢な元・脱走兵に「よし、頼んだぞ」と女を連れてスタコラ逃げ出す菅原文太。女たちは文太を信じて、懸命に付いていきます。しかし、出たところは波打ち際。「ダメだ、行き止まりだ」と言う文太はマヌケすぎです。

丹波哲郎一味もやってきて、追い詰められた一行はまたまたピンチに。その時「ちくしょう」と言って三原葉子が、スルスルと崖を昇り始めました。何をするのかと思ったら、崖の上から手榴弾をポンポン投げてます。結果、丹波哲郎を残して部下は全滅してしまいました。おいおい。

怒った丹波哲郎は、三原葉子を撃ち殺そうと引き金を引きますが、カチカチと空しい音がするだけ。よしっ、安全は確保された、とばかりに出てくる菅原文太。丹波哲郎の足の間から文太の姿が見えるという、ベタではあるけどカッコいいショットが最高です。ナイフを取り出した丹波哲郎を素手でぶちのめす文太。後は、お互いにパンチを叩き込み合う肉弾戦です。10発どころか何十発もパンチを応酬する二人。しかし、とうとう丹波哲郎は倒れ、海に浮かぶのでした。

「あたしたちはこれで日本に帰ることができますが、この島を離れる前に、あたしたちのために死んでくれた人の冥福を祈りましょう」と、マジメな学級委員みたいな台詞を棒読みする三ツ矢歌子。思わず、生き残ったみんなは合掌です。

海を突っ走る高速艇。船上には菅原文太と女たちが乗っています。またまたカッコいい音楽が鳴り響き、「終」でした。

冗談抜きで、この映画は素晴らしすぎます。三原葉子のセクシーダンス、そしてキャットファイト。荒唐無稽なストーリーでありながら、ツボを押さえた演出。そして、何より映画を盛り上げまくる渡辺宙明の宙明サウンド。どこをとっても、新東宝最良のエッセンスが詰まっています。

強いて言えば、菅原文太が「単なるマヌケ」だったのが惜しまれるところでした。これが宇津井健なら「マヌケな正義漢」をカッコよく演じてくれたんでしょうが。あと陳の役を天知茂か沼田曜一あたりが演じてくれれれば、文句の付けようの無い新東宝最高傑作だったのに。


(どっちもどっちなマヌケぶり)

(新東宝と言えば、三原葉子のダンスですね)

(三ツ矢歌子は、小野田監督と結婚します)

(カッコいい画と宙明サウンドは相性抜群)

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3 コメント

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キワモノをマヌケのスパイスで (シャケ)
2007-08-04 10:54:09
新東宝らしさ(=どこかキワモノ)があふれた快作ですね。
カラーの三原葉子はよりギラギラしてて素敵ですし。
この当時の文太はマヌケな二枚目役が多いので、僕はわりと気になりませんでしたけど。まあ宇津井健だとなんというか、よりデラックスだったでしょうが。

ただね、きちんと作ってるようでどこかめちゃくちゃなんですよね、新東宝は(笑)「雑」というのもちがうんですよ。いってみれば「マヌケ」ですかね。出たら波打ち際で、「だめだ、行き止まりだ」ってねえ(劇場でも笑いが起こってました)。なんだか新東宝の未来が表われているような。
スポーツ弁当 (いくらおにぎり)
2007-08-04 18:41:17
宇津井健がいれば、スポーツ弁当が、ベストのマシマシになったくらいの、パワーアップをしたんじゃないかと思います。この場合、パワーアップが無駄にコッテリさを増すだけな気もしますけど。

でも、新東宝にはワセ弁の匂いがプンプンしてますよね。とりあえず、どんな映画だろうと三原葉子の踊りが出てくるのって、どんな弁当、それが例えシーフード弁当であろうと、鳥カラ満載なのと一緒じゃないかと。

お見事 (シャケ)
2007-08-05 14:47:30
>新東宝にはワセ弁の匂いがプンプンしてますよね。

あーなるほど。確かに確かに。
かつての松竹、東宝を幕の内とすれば、新東宝はまさにワセ弁。
ちなみに大映はカツライス、日活は無国籍料理(肉カツがメイン)あたりでしょうか。東映が難しいですね。藤純子や松方弘樹とか二世が多いって意味では、親子丼ですかね。

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