いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】エロスは甘き香り

2007-11-24 | 邦画 あ行

【「エロスは甘き香り」藤田敏八 1973】を観ました



おはなし
売れないカメラマンの浩一が悦子の部屋に転がり込み、さらに昭、雪絵のカップルもやってきたことから、4人の奇妙な生活が始まるのですが……

今となっては、桃井かおり主演のロマンポルノ、という部分にしか市場価値のなさそうなこの映画ですが、よく見ると「あの映画」のプレ・ストーリーじゃありませんか。

米軍基地が映し出されました。画面がそのままパンすると、人気のない米軍ハウスが立ち並んでいます。そこを歩いている男が一人。ちょび髭にサングラスの男の名前は浩一(高橋長英)。売れないカメラマンです。浩一は、以前、一度だけあったことのある女の家に転がり込もうと、この基地の町にやってきたのでした。

P38。これが、その女が住む米軍ハウスの番号。入り口には柳沢悦子と言う名刺が貼ってあります。確かに、浩一が持っている名刺と同じ。間違いありません。浩一が勝手に上がりこむと、部屋の中には、顔にアラン・ドロンの写真を貼り付けたマネキンが置いてあったりして、きっと当時にしては「オシャレ」なんでしょう。良く分かりませんが。

そして、夜。悦子(桃井かおり)が帰ってきました。人がいるのに気づいて「年男ね、帰ってきたっ。どこにいるの」と声をかける悦子。しかし「年男じゃなくて悪かったね、オレはこ、う、い、ち、だあ」と浩一は歌うように答えるのです。それにしても、なんで高橋長英が歌うように答えているのかは不明。監督に聞いてください。

悦子の名刺を取り出して、前に一回あったことがあるだろ、と言う浩一に、
「悪いけどさあ、あたしあなたのこと、全然覚えてないの」と答える悦子。というか、まるで桃井かおりのような喋り方です。いや、もちろん、桃井かおりなんですけど、そうではなくて、いかにも「桃井かおり」な喋り方って、この頃からしてたんだなあと、ちょっと感動しました。

そうは言っても、そのまま帰る当てもなし、浩一は悦子を押し倒し、最初は嫌がっていた悦子もやがて、甘い声になるのでした。まあ、ここらへんはロマンポルノですから、お約束ということで。

翌日、目が覚めた浩一は置手紙を発見。「12時には帰ってください!! お巡りさんが来ます 2度とこないで!!」。えーと、時間はと、げっ12時なんてとっくに過ぎてるじゃありませんか。慌ててハウスを出ると、ホントに警官が来ますよ。慌ててスタコラ逃げ出す浩一でした。

やることもないので、パチンコ屋でヒマをつぶしていた浩一に「学生さん?」とヘンなオヤジ(山谷初男)が声をかけてきました。学生じゃないけどと、カメラバッグをさりげなく見せる浩一に、オヤジは何だか相談事がありそうです。「あのこれを見てやってくれませんか」とヌード写真を取り出すオヤジ。「ど素人の撮ったものですが」と恥ずかしがっています。そしてフィルムを取り出し、「これ秘密に焼いてもらえませんか」と頼み込むのです。

さて、夜になって「誰もいませんか。誰もいませんね」と、またもハウスに入り込む浩一。とりあえず勝手に酒を飲んでいい気分です。と、そこにブザーがなりました。ギクぅ。物陰に隠れる浩一。すると「あら開いてるわね」とカップルが入り込んできたのです。ちなみに女はホステスの雪絵(伊佐山ひろ子)、男はそのヒモで売れない漫画家の昭(谷本一)です。どうやら催してきたらしく、始めてしまう二人。浩一は、アラン・ドロンのマネキンの後ろに隠れて、その様子を激写しています。まあ、ロマンポルノなので、数分に一回、この手のシーンが必須なのです。

当然、シャッター音に気づく雪絵。「誰?どういうこと」とスゴイ剣幕。「弟です」とヘタな言い訳をする浩一に「悦子には弟なんかありっこないわよ」と怒っています。そこに、悦子が帰ってきました。「どういうこと」といかにも桃井かおりな感じで、言う悦子。「随分待ってたのよ、"弟さん"と」とイヤミな口調で雪絵は答えるのですが、悦子は「弟じゃないわ。恋人よ、新しい」と言い出しちゃうのです。

そのまま、悦子と暮らし始める浩一。もちろん、自分としてはカメラマンのつもりですが、実質はヒモ同然です。本人もそれを自覚しているのか、悦子に「ホントにそう思ってるのか、オレがその、写真やってけるって」とか聞いたりしています。しかし、そんなある日、悦子の前の恋人・年男がやってきました。うらぶれた中年男で、悦子に金を借りにきたようす。浩一は将来の自分を見ているような気分になって部屋を飛び出してしまうのでした。

オヤジと一緒にヤケ酒を飲み、ハウスに帰るとまだ年男がいるようです。浩一は、前の住人が残していった犬小屋にゲロを吐きかけ、そのまま寝込んでしまうのです。

さて、浩一の口利きで、雪絵、昭のカップルがハウスに同居することになりました。形ばかりの引越しパーティが行われています。しかし、そこに浩一の姿はありません。どうやら浩一は風呂に入っているようすです。そして、雪絵が覗きに行くと、そこには手首を切った浩一がいたのです。「救急車を」とオロオロする昭に、雪絵は「そんなもの呼ぶ必要ないわよ」とえらく冷静。案の定、たいした傷でもなかった浩一は昭に、「痛くなんてなかったさ。手首が少し熱くなって、目の前を閃光が走って、フワフワっと。ホント、いい気持ちだった」と能天気に答えているのです。

悦子と浩一はすっかり倦怠期。「愛想なんてとっくに尽きてんの」と悦子の目も冷たくなってきました。そんなある日、ただいまと戻ってきた浩一の手には豚の生首が。雪絵のビンタが3発、浩一の顔に決まります。「自分の手首切ってるうちはまだ可愛かったけど、んっもう」。

と、ここでおそらくこの映画最大の問題シーン炸裂。斧を振りかぶる浩一。えいっ、哀れ豚さんの首は飛んでしまうのです。と、冗談めかして書いていますが、これは特撮じゃないですよね。というか、特撮なんかにかける金があるわけもなく……マジだと思います。それに、えらく生々しいし。とりあえず、この段階でドン引きです。

男二人はポーカーをしています。掛け金は20万、30万とスゴイ単位。豚の生首をグツグツ似ている鍋から、スープをすする浩一。俳優はタイヘンな職業だと思いますが、高橋長英には心底同情しますね。首を切ったり、スープ飲まされたり。ともあれ、男二人はポーカーを続け、大負けした浩一はお金をキャッシュならぬ、空想のお金で払うのです。っていうか、金も仕事も無い男二人が、金をかけた「ふり」でポーカーをやっている光景っていうのは、痛さ爆発ですね。

そこに帰ってきた悦子は、思いつめた顔で「浩一、ちょっとお部屋まで来て」と言い出しました。壁に貼られた浩一の写真を黙々と外し始める悦子。「どうするんだ」「捨てる」。

荒れた浩一は、夜、酔っ払って帰ってきた雪絵をレイプしました。そして昭に、「おい、奥方が風呂場でぶっ倒れてるぞ。行ってやれ」というのです。そのまま悦子と二人の寝室に戻る浩一。悦子は涙目で浩一を見ています。「頼む、オレを叩き出してくれ」という浩一に「その必要はないわ」と答える悦子。「明日、出て行くよ。お別れにヌード撮ってやろうか」、と、そこに狂乱した昭が包丁を片手に飛び込んできました。

「許さんぞ」という昭に、いいよやれよと答える浩一。昭は「その前にやってやる。そいつをやってやる」と悦子を睨みます。「ははっ、やればいいだろ」と言った浩一は、カメラを構え「やってみな。撮ってやる、記念写真だぜ」と笑うのです。

外では浩一の写真が燃やされています。シャッター音が響きます。悦子は昭に抱かれつつ、浩一をじっと見ながら、喜びの声をあげています。一本、二本、次々とフィルムが空になり、そして外では、炎が犬小屋に燃え移り、部屋に炎の陰を映し出しているのです。

4人は仲良く朝ごはんを食べています。まあ下賎な言い方をすれば、スワッピングして地固まるといったところでしょうか。そこに年男が訪ねてきました。ゆっくりしていってくださいと言う浩一に、本を返しに来ただけと口ごもる年男。「そんなこと仰らずに。ここはもはや誰の家でもない。当然、あなたの家でもあるわけですから」と浩一が言うと、「どうぞ」「どうぞ」と昭や雪絵も繰り返すのです。気持ち悪くなって逃げ出してしまう年男。4人は何事もなかったかのように、小説の一節を、声をそろえて暗誦するのでした。

男二人は、その後、夜の公園でカップルにヌード写真を売りつける商売を始めたようです。「おい、アレ行こうか」「よし」。しかし、次のカップルはオヤジと飲み屋のママでした。「おい、よせ」と言う浩一。「どうした?」「まあいいから」。男二人は、そのまま夜の闇に消えていくのです。

まただ。藤田敏八監督の映画は、終わり方がよく分かりません。最後のシーンなんていらないように思うんですけど。

それはともあれ、藤田監督が後に撮る「スローなブギにしてくれ」は、福生基地の米軍ハウスに住む、謎の男(山崎勉、原田芳雄)のところに、浅野温子が転がり込んでくる話でしたが、これはまるで、その男たちが一緒に住むことになったキッカケを描いたみたいな作品ですね。

そして、両作品に共通して感じられるのが、家族への渇望のような気がします。肉体関係なんかは重要ではなく、いかにバラバラの個人が擬似家族になっていくか、そこらへんを描いたファンタジー、と言っては言いすぎでしょうか。

もちろん、藤田監督特有のダラダラっとしたリズムで、ユルユルに話が展開するので、いったいコイツは何を描きたいんだ、とイライラしてくる場面も多いんですけどね。ついでに、藤田監督の考える「オシャレ」がどうもイケてないのも辛いところです。

ところで、桃井かおりは変わりませんでした。もともと若々しくないのもあるでしょうが、34年後の現在とあまり差がありません。そして、良くも悪くも桃井節全開で、気だるい女を演じています。

一方のヒロイン、伊佐山ひろ子。これはかなり変わりました。今はすっかりオバサンですが、この頃はキレイ。ちょっとフランス映画のヒロインみたいな雰囲気もあって、いい感じです。

そして高橋長英。まあロマンポルノの男優なんてものは、ハッキリ言って刺身のツマ以下というか、日本語が話せれば誰だっていいようなものですが、それにしては熱演しすぎです。あ、もちろん豚がらみで、の話ですけどね。まさかロマンポルノで、あんな目に遭うとは、想像もしていなかったんじゃないでしょうか。本当にカワイソウだ。

結局のところは、いつもの藤田監督の映画。ロマンポルノだろうが、そうじゃなかろうが、あんまり変わらないところが、さすがです。





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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いつもながら読んで面白いです。 (ポン太)
2007-12-05 12:03:10
いくらおにぎりさん、こんにちは!

なんかエロの作品ばかりにコメントしているようで、恥ずかしいっす。(笑)

桃井かおりは、その気だるさで、この作品にはピッタリの気がしました。

34年前というと、露出のほうもほとんど無かったんじゃないですか?

オッパイぐらいは出てた?(笑)

私がポルノ映画に行くキッカケは、寺島まゆみ ちゃんです。彼女が旦那さんとテレビに出ているのを偶然見て、「こんな可愛いらしいひとがボルノ女優さんしてるんだ~」って感激して(笑)、彼女が主演している作品を見にいきました。それが、私のポルノデビューでした。



それはそうと、ご実家のほうは大変なんじゃないですか?

ここのところの大雪と灯油などの高騰で・・・。
こっそり言うと (いくらおにぎり)
2007-12-05 18:27:56
ポン太さん、こんにちは

桃井かおりですが、小さい声でいうと、オッパイ出てましたよ。もっと、こっそりいうと、しっかり濡れ場してました。

>それが、私のポルノデビューでした。
ポン太さんが言うと、なんか重みを感じますねえ(^.^)

実家云々の方は、「くんだらの部屋」でお答えしたとおりです。

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