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邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】天城心中 天国に結ぶ恋

2006-10-28 | 邦画 あ行

【「天城心中 天国に結ぶ恋」石井輝男 1958】を観ました。



おはなし
修学院大学に通う王英生(三ツ矢歌子)は、大谷武明(高橋伸)のことが気になっています。そして、大谷も英生の誕生日パーティに招かれたことをきっかけに、すっかり英生のことが好きになってしまいました。しかし、英生は高貴な身分の生まれ。二人の仲は所詮、認められません。絶望した二人は天城山の八丁池に向かい、そこで自殺を遂げるのでした。


本当にあった話をモデルにした作品です。

自殺したのは学習院大学の2年生、大久保武道と愛新覚羅彗生。彗生は、ラストエンペラー愛新覚羅溥儀の弟・溥傑を父に、公爵嵯峨実勝の長女浩子を母に生まれたお姫様でした。
当然、大騒ぎになったこの事件に目をつけたのが、新東宝社長の大蔵貢。実弟の近江俊郎に製作をさせて、この映画を作ったようです。

そこで問題なのが、この映画のスピード公開っぷりです。二人の心中死体が発見されたのは、1957年12月10日。17日に主役(現役大学生)と監督(近江俊郎)の発表。主演女優が三ツ矢歌子なら、と石井監督が駄々をこねて、監督と主役変更が23日。25日にクランクイン。翌1月10日にクランクアップ。そして映画の公開は1958年1月26日です。その間、約1ヶ月半。撮影自体は2週間くらい。それも年末年始を挟んでですから、超スピード撮影だったようです。
とりあえず、脚本もない状態で撮影を始め、台詞はその都度、石井監督が俳優につけていたそうですから、現場の混乱ぶりは凄かったでしょうね。

さすがに、テレビのワイドショーでの再現ドラマ並みの日程で作られた映画なので、傑作とはとても言えないデキですが、「石井輝男監督作品」かつ「三ツ矢歌子初主演作」で、「新東宝のキワもの体質」を物語る作品としては歴史的に価値があるかもしれません。

脚本を練ったり、ロケハンをしたり、セットを建て込んだり、なんてことをやっている暇はありませんから、セットもロケも最小限。ストーリーの説明部分も、外苑の並木道を三ツ矢歌子に歩かせて「全てモノローグ」で済ませてしまおうという豪快さ。
とはいえ、ヘンにあれこれストーリーを膨らませずに、石井監督のスピーディなカット割りで、話がサクサク進んでいくのは、けっこう快感です。

特に凄いと思ったのが、英生の誕生日パーティの場面。お互いに気にしていた二人が、それを恋だと実感し、なおかつ英生の高貴な生まれ育ちから、二人の恋は、しょせん結ばれないのだ、と分からせる大事な場面です。それなのに、パーティと言っても部屋は、いかにもアリモノのセット。特に回りに装飾や小道具も無い状態で、中央にしょぼいテーブルが一つ。その周りに英生の友人数人が集まり、「ちょっと気の利いたお父さんが、子供の誕生にに買ってきそうなケーキ」がポツンとあるだけですから。
これは実験映画なのか?と自問自答してしまいそうになるシュールな体験でした。

恋を許されなかった二人は死を決意。天城山の八丁池に向かいます。実際の事件では、二人の死後、死体を発見するまでに大規模な山狩りをしてさえ、5日ほどかかっていますが、それじゃあ「話が盛り上がりません」
なぜか、直感的に二人の行方を見抜いた友人・親戚たちは凄い勢いで捜索隊を組織。早速、後を追います。死ぬために山を登っていく二人と、それを追う捜索隊。この両者がカットバックでテンポ良く描かれます。さすが石井監督、無駄に緊迫感溢れる映像です。
しかし、先に八丁池に着いた二人は(って、レースじゃないんですが)、自分たちの髪と爪をハンカチに包んで百日紅の木の下に埋めます。たとえ体は別々に葬られても、二人は一緒だよ、ってことです。泣かせますね。そして、山間にコダマする銃声2発。

そのすぐ後に、到着する捜索隊の友人・親戚一同。全員が、二人の遺体を取り囲み、「なんで死んじゃったの」などと、きっちり順番に、言い合います。とりあえず学芸会でよくありますよね。順番に台詞を言っていくパターン。次の台詞の子供は、緊張に顔がこわばって、台詞が終わった子供は、安心してほけーっとしてる、ようなアレです。

まさか、商業映画で、そんな光景が観れるとは思わなかったので、ちょっと唖然としましたが、強行スケジュールを考えると、とても石井監督を責めることはできませんね。

あと、新東宝社長の実弟で、プロデューサーの近江俊郎の歌が全編に流れ、作品の湿度を50パーセントほど上昇させています。

映画の冒頭には、次のようなテロップが
「この映画は最近報道された事件に取材したものでありますが物語は多少事実に相違する点もあります/こうした悲劇が再び繰り返されぬことを祈って、この一篇を世の人々に捧げます」

まったく、興味本位で作りました、って素直に言えばいいのに。
それから、最後にもテロップが出て、
「青春をもっと大切にしたい」とか「自らの強い意志を固めよう」などと書いてあります。なんか、最後に説教されちゃうのも、いかがなものかと。

最後に、石井監督の言葉ですが
「まあ、のれなくって……。歌子を撮りたいと思っただけのシャシンですね。」(ワイズ出版「石井輝男映画魂」より引用)

そんなあ。


(しょぼい誕生日パーティ)


(石井監督の大好きな三ツ矢歌子)


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2 コメント

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くだらない映画 (・・・)
2006-10-30 00:19:18
きちんとお母上である浩さまのお話をもとにしていたら

絶対に作られはしなかったバカ映画ですね。



お母上は、二人が恋愛関係にあったとは思えないと、

自伝でおっしゃっておりますから。



女性側のご親族は見るに耐えない内容ですね。
確かに (いくらおにぎり)
2006-10-30 19:38:06
・・・さま、こんにちは



浩さまの発言は、ぼくもどこかで目にしました。その点では、愛新覚羅彗生さんは、ストーカーに巻き込まれた被害者と言えるかもしれませんね。

ただ、疑問は彗生さんの遺書が残っていること。そこには、「~こんどのことは大久保さんと私が相談したことなので、大久保さんをうらまないでください」とあったそうなので、うーんミステリーですね。

いずれにしても、この映画自体が、興味本位で作っているのは確かですから、・・・さんのご意見はもっともだと思います。

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