いくらおにぎりブログ

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【映画】子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる

2007-05-08 | 邦画 か行
【「子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる」三隅研次 1972】を観ました



おはなし
公儀介錯人の拝一刀は、裏柳生の策謀により一族郎党、そして公儀介錯人の立場を追われました。拝一刀に残されたのは、一子大五郎のみです。拝一刀は大五郎を箱車(乳母車)に乗せ、「子を貸し腕貸しつかまつる」の幟をたてて、全国を行脚するのですが……

とりあえず、子連れ狼と言うと萬屋錦之介のテレビ版の方が「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃん」の歌と共に有名ですが、こちらの映画の拝一刀は若山富三郎先生。もちろんテレビ版より映画の方が先に作られています。

テレビ版では、全体を通じて流れるトーンが情愛だったり悲哀だったりしますが、若山先生の映画は豪快と破壊です。もう、若山先生のカッコよさが全開で、ただ一言シビレルとしか言いようがありません。終わり。

で、終わってしまうとあんまりなので、コメントを付けながらあらすじを追っていきますね。

まだ、年端もいかない子供が廊下を歩いています。両脇には「殿っ」と男泣きに泣き濡れる侍たち。子供の横にいた侍が「取り乱すでない、見苦しいぞ」と言っていますが、その侍の目にも光るものが。そう、小さい子供は殿様で、横にいる侍は家老(加藤嘉)なのです。どうやら、子供は切腹をしなければならないようです。そこに「公儀介錯人、拝一刀でござる」と若山先生が出てきました。形だけでも切腹の体裁をとるために、扇子を腹に当てるように言われる子供。「てやっ!」若山先生の裂帛の気合が飛びます、画面は真っ赤に。

ここで、字幕によって、この物語の背景が語られます。徳川幕府の暗黒支配を支えたのは、以下に述べる3本の柱。すなわち、大名の廃絶の理由を探る黒鍬一族と呼ばれる探索人。邪魔な要人を暗殺する柳生一門の刺客人。廃絶切腹を命じた大名の介錯をする介錯人の3つだそうですよ。
「そして、拝一刀こそは葵御紋の着用を許された公儀選任の介錯人であったのである」なんだとか。

と、いきなり画面を斜めに切って、上半分が燃え盛る炎、下半分は逆巻く怒涛。そして、その真ん中には拝一刀こと若山先生が歩いているタイトルが、どどーん。

いや、ご馳走様でした。もう、ここまでで充分です。カッコよさにしびれまくりです。

さて、「子を貸し腕貸しつかまつる」の幟を挿した箱車(乳母車)をガラゴロと押している若山先生。街道の旅人たちは、それを見てあれこれと噂をしています。特に箱車に乗った大五郎の可愛さが人気の的のようです。狂女も走りよってきて、大五郎をひとしきり可愛がったりしています。どうやら、子貸しとはこのことのようですね。まあタイトルが「子を貸し腕貸しつかまつる」ですから、一応はそれらしいシーンを入れておかないとね。ちなみに、これ以降、基本的に大五郎にスポットライトは当たりませんから。この割り切った作りはまさに「漢らしい」の一言です。

突然、雨が降り出しました。沛然と振る雨の中、若山先生は過去を回想します。

自分が斬った諸侯の霊を慰めるために、庭に作った持仏堂にこもって祈る先生。今日は大五郎も連れて二人で祈ることにしました。と、きゃあーっと妻の薊(藤田佳子)の声が響きましたよ。慌てて持仏堂を飛び出す若山先生。しかし、そこには妻を始め、残酷に殺された一族郎党のむくろが転がっているばかりです。
「何者の仕業か。おのれ、地の果てまでも追い、草の根を分けても、必ず探し出して仇は討つ。必ず」と握りこぶしを固める若山先生です。
しかし、すぐに仇の正体は分かりました。幕府の大目付、柳生備前守(渡辺文雄)が訪ねてきたのです。この備前守が言うには、門前で切腹をした三人の侍が拝一刀を告発する斬奸状を持っていたそうです。邸内を改めさせろ、という備前守は、持仏堂で葵の御紋の入った徳川家の位牌を見つけました。これは、まさに将軍家を呪詛するためのもの。「えーい、拝一刀を引っ立てい」。しかし、これは裏柳生が公儀介錯人の地位を狙って仕掛けたワナだと、若山先生にはお見通しです。うりゃーっ。暴れ狂う若山先生は、当たるを幸い、柳生をバッサバッサと斬り倒します。
「許さん、うぬら柳生を断じて許さん。表柳生の水の川。裏柳生の火の川。うぬらがいかに権謀術策の二川で迫るとも、われは白道(びゃくどう)を進み、屍となっても、骨となっても、この恨み、この恨み晴らさいでか」

街道を進む若山先生。それを見て、三人の侍が「来たっ」と言っています。この侍たちは小山田藩の侍。あれが最近噂の子連れ狼であれば、刺客を依頼したい。しかし本物かどうか。腕を試すためには、二人で斬りかかってみよう、と物騒な相談をしています。もし、二人の侍に斬られる様では偽者か、本物であっても頼むに足りません。若山先生に対して命がけの挑発行為ですが、これも武士道を貫くためですから、仕方ないのです。

「それがしは小山田藩、江戸家老の市毛りょうごと申す」と声をかけた年嵩の侍(内藤武敏)は、早速「刺客をご依頼したい。斬っていただくのは四人」と若山先生に頼みます。若山先生は、報酬は五百両。相手は何人いてもかまわない、ただし裏の事情は全て話していただくと答えました。と、いきなり背後から斬りかかる二人の侍。これでも小山田藩の使い手です。しかし、若山先生は後ろも見ずに、抜き打ちに二人を斬り倒したのです。
まったく動ぜず「事情を承ろう」と言う若山先生。うん、これは本物です。

話は、お定まりの内紛。国家老の監物(内田朝雄)が腕の立つ三人衆を率い、殿を亡き者にしようとしている。ついては、途中にある日光の近くの湯治場に無頼の徒を集めて、殿の道中を襲う恐れがあるので、監物たちを斬って欲しいというのです。あっさり了解した若山先生は、湯治場に向けて旅を始めます。と、その旅の途中、村娘が毬つきをしていますよ。その毬を見た若山先生は、またも昔を回想するのでした。ぽわわーん。

切腹を申し渡す上意の使者を待っている若山先生。しかし、若山先生はおとなしく切腹する気なんてさらさらありません。受けた恥辱を晴らすため、冥府魔道の鬼となる覚悟です。そして刺客道に落ちてこそ、拝一族の恨みを柳生一族に叩き返すことができるのです。
若山先生は、まだ言葉も何も分からない大五郎に語りかけます。父の胴田貫(刀)か、母の毬を選べと。胴田貫を選べば、父と一緒に刺客道。毬を選べば、母の待つ黄泉に父の手で送ってやると言うのです。えーと、3番、とか言いたいところですけど大五郎はまだ喋れませんしね。
「さあ選べ、選ぶのだ」とドスの効いた声で言う若山先生。まだ言葉は分からなくても、体に流れる拝一族の血で分かるはずと、無茶なこと言っています。
父の剣幕にビビった大五郎は、ダアダアいいながら胴田貫の方に這っていきました。とりあえず良かった、のかな。

上意の使者がやってきました。真っ白な死に装束で出迎える若山先生。さすが拝一刀、神妙であると褒める使者ですが、若山先生はハッハッハと笑い出しました。「これより冥府魔道に生きるわれら、門出の晴れ着」と見得を切る若山先生。怒った使者は、出会え、出会えと叫びますが、「斬れるか。貴様らの細腕で介錯人の俺が斬れるか」という若山先生の迫力にはタジタジです。もちろん、歩く台風の若山先生に木っ端役人たちが勝てるわけも無く、次々と斬られていきます。そして、門でワナワナ震えている男めがけて一閃。男を斬った胴田貫は、そのまま樫のかんぬきを叩き切り、外に組まれた竹垣までも一緒くたに粉みじんにするのでした。さすが斬馬刀とも言われる胴田貫です。

邸外に逃れ出た若山先生を待ち受けていたのは、裏柳生の面々。総帥の柳生烈堂(伊藤雄之助)、息子の蔵人(山さんこと露口茂)などいずれも使い手ばかりです。しかし、この列堂ですが、メイク凄すぎです。柳生というより、インドの行者のようです。ほとんどレインボ−マンのダイバダッタと言えば分かりやすいでしょうか。まあ、若い人には余計に分からない気もしますが。
ともあれ、絶体絶命の若山先生。しかし、若山先生には秘策があったのでした。白装束をハラリと脱ぐ若山先生。そこには、拝一族に許された葵の御紋入りの紋服があったのです。ほーらほら、葵の御紋入りの服を着ている俺を斬れるか、と挑発する若山先生。むむ、斬れませーん。
列堂はしかたなく若山先生に、服を脱いで、息子の蔵人と勝負してくんない、もしあんたが勝ったら、潔く逃がしてあげるからと提案します。もちろん、蔵人が負けるはずが無いと踏んでの発言なのは言うまでもありません。

「蔵人は西日を背負い、拝は子を背負う、この勝負は勝った」とうそぶく列堂。確かに負ける要素はありませんね。しかし、ここで拝一刀が倒されたら、話は即終わってしまうので、当然、若山先生が勝ちました。首がピョーンと飛んでしまった蔵人、血がプッシューと吹き上げています。
卑怯なんだか、潔いのか分かりませんが、列堂は負けを認め、拝一刀こと若山先生の冥府魔道の旅が、ここから始まるのです。

さて、ずいぶん長い回想を終えた若山先生は日光にほど近い湯治場にたどり着きました。そこは監物たち悪者に雇われた無頼漢たちが支配する暗黒の町。住人たちは家で息を潜め、湯治客たちは一つの小屋に押しこめられ、村娘は暇つぶしに乱暴され、殺されてしまうようなそんなところです。とりあえず北斗の拳を思い出していただければよろしいかと。
そこに来た若山先生は一切の抵抗をしません。愛刀の胴田貫を取られても、黙ったままです。胴田貫を見たボス(関山耕司)は何かピンときたようで、「どこかで会うたことがあるかな」と尋ねますが変名を使っている若山先生の正体を思い出すことはできないようです。他の湯治客と共に一つの小屋に押し込められた若山先生と大五郎ですが、血の気の多い無頼漢に「サシで勝負したいから表に出ろ」と殴られても、じっと我慢我慢です。全ては標的の監物と三人衆を見つけるまでの辛抱ですね。いらだって若山先生を殴る蹴るの無頼漢に、たまらず遊女のお仙(真山知子)が「およしよ」と止めに入りました。しかし、このお仙、というか真山知子(蜷川幸雄夫人)は、バッチリつけマツゲに、ガングロ、リップグロスで唇テカテカと、江戸時代じゃないだろ、という迫力です。キレイですけど、なんだか強烈なフェロモンを放出しすぎのような。

ともあれ、止められてしまった無頼漢は、「いいだろ、勘弁してやる。その代わり、お前ら二人でマグワイしてもらおうじゃねえか」と言い出しました、しかし、いくらお仙が遊女でも、衆人環視のところで、エッチできるわけもありません。「死んだって」と断るお仙。「そうかい、じゃあ死ぬんだな」と無頼漢が言うやいなや、今まで黙っていた若山先生が「待てっ」と言ったのです。おもむろに着物を脱ぎ始める若山先生。お仙が息を呑みます。
「あんた、そんな。まさかあんたは」生唾をゴックンと飲み込んだお仙は、「あたしのような女で良かったら、どうなとしておくれ」と体をまかせるのでした。若山先生はよっぽど凄かったんでしょうね。

さて、いよいよ悪巧みの決行日が近づき、最後の打ち合わせのため、監物と悪の三人衆が湯治場に顔を出しました。もはや、湯治場の人々を閉じ込めておく必要もありません。
「みんな出て来い。みなの衆、黙っていれば助ける」という無頼漢のボスの言葉に、湯治場の人々は一様に、絶対喋りませんと誓います。しかし、小屋に閉じ込められた湯治客は別です。旅の途中で喋るだろうし、何より湯治場の人々が喋らないための見せしめにする必要があるからです。嘆く湯治客たち。さて、血祭りはこの男からだ、と言われた病気の武士はゲホゲホと咳き込みながら、せめて自害させて欲しい、介錯を頼むと、ボスに言います。ん、介錯?。そのフレーズは。「あっ!」とボスは思い出しました。そうだ、あの男は……「拝一刀!」あの男はどこだ?
ガラガラ、乳母車を押した若山先生が向こうからやってきます。いつの間に、この場から抜け出していたんでしょう。
「あの男にだけは手を出すな」と部下に命じるボス。しかし、以前から若山先生にちょっかいを出していた無頼漢は、若山先生をなめていたのでしょう。ボスの制止も聞かずに飛び出していきました。乳母車に仕込んだ短刀をヒョイと投げる若山先生。はい、死にました。さらに乳母車から外した棒をカチャカチャと組み立てて長刀をつくった若山先生は、もう一人の無頼漢の足元をなぎ払います。はい、そいつも死にました。足首だけが、まるで置き忘れた長靴のように、むなしく立っているばかりです。その後も腕が飛び、血反吐が飛び、若山先生の戦いは止まりません。命乞いをするボスもあっさり死にました。残るは、悪の三人衆と監物のみです。「何者だっ」と問われた若山先生は「刺客、子連れ狼見参っ」と見得を切ります、うーっ、カッコいい。

あ、危ない。敵が短筒で射撃してきましたよ。しかし、若山先生は慌てず騒がず、乳母車を引き起こすのです。ささっ。なんと、乳母車の底は鉄板貼り。弾はむなしく弾かれます。そのまんま、特に一人一人の見せ場も無く、サクサクっと若山先生に斬られていく監物と愉快な三人の仲間たち。あっさり、全ての決着が付いてしまいました。

お仙から大五郎を受け取った若山先生は、再びガラガラと乳母車を押して去っていきます。「待って」と追いかけるお仙に見向きもしません。
ここで、なぜかニホンザルのショットが。ウキッ、ウキッとお猿さんたちの映像がしばし続きます。多分、湯治場は日光の近くにある。日光と言えばニホンザル、という発想のようですが、いささかとっぴな気もします。まあいいけど。ともあれ、若山先生はガラガラと去っていくのでした。

いやあ、堪能しました。もう、若山先生の魅力が大爆発です。この頃の若山先生と言えば、緋牡丹博徒シリーズで熊虎親分を演じたりと、コミカルな演技をすることが多かったのですが、これは完全なシリアス路線。でも、先生は真面目なのに、見ているとなぜかおかしいという、最高の逸品です。もちろん、当代一とも言われる殺陣の見事さも健在ですから、あらゆる面で一級の娯楽作品に仕上がりました。

ただ惜しいのは、座頭市(勝新太郎)に平手造酒(天池茂)という好敵手がいたように、拝一刀に対抗できる男がいなかったことでしょうか。なにしろ若山先生相手に、まともに戦わなくてはいけないんですから、まともな人間では勤まりませんもんね。その点が、すこし寂しいものの、あとはつぼを押さえた演出。お色気。そして若山先生、と三拍子そろっているので、文句なしです。







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2 コメント

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まさに「桁外れ」 (シャケ)
2007-05-16 01:34:44
問答無用の傑作ですね。かなり大好きな映画です
「桁外れの」という形容詞はこういうときにこそ使うのではないでしょうか。

若山先生の素晴らしさ爆発なのは、いくらおにぎりさんのおっしゃるとおりで、95分の上映時間が短すぎるくらいです。ただ、95分というもともと短い時間をさらに短く感じさせているのは、若山先生の凄さもさることながら、脚本を担当した(原作者でもある)小池一雄の力量も評価していい気がします。

あれだけいろいろなエピソードがありつつ、きっちりコンパクトにまとめるのは、なかなかできることではないですよ。その意味では、無駄なカットがない三隅研次の監督としての力量も評価していいんだとも思います。
ちなみにサルのカットは大五郎の視線がふと紛れ込んできたカットではないかと僕はみたのですが、どうでしょう。
三位一体 (いくらおにぎり)
2007-05-16 06:36:23
シャケさん、こんにちは

さすが、ぼくの映画の師匠。深いなあ。若山先生、小池一夫、三隅研次の夢のコラボが、この傑作を産んだのですね。

あと、猿のカットが、大五郎視点という説。さすがシャケさん。そう来ましたか。

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