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【映画】嵐に立つ王女

2007-02-23 | 邦画 あ行

【「嵐に立つ王女」土居通芳 1959】を観ました



おはなし
山科晴彦(宇津井健)は元陸軍中尉で、モンゴリア王国の侍従武官をしていました。戦後のある日、山科は街で死んだと思っていたモンゴリア王国の王女・芳蘭(高倉みゆき)と出会いました。しかし、王女は記憶喪失。献身的な山科の努力で、芳蘭は記憶を取り戻しましたが、それは二人の別れをも意味していたのです……

微妙な映画が多い新東宝ですが、その中でも「微妙臭」がより強い、高倉みゆき主演なので、これはちょっと困りものです。

山科晴彦(宇津井健)は、自動車のセールスマン。お金持ちの少女ますみ(大空真弓)に積極的にアタックされちゃうようなさわやか好青年です。しかし、彼は戦争中はモンゴリア王国付きの侍従武官で、守るべき王女を見失ってしまったという辛い過去を持っていたのでした。

そんな宇津井健が銀座の雑踏を歩いていると、露店の化粧品売りが、チンピラに因縁を付けられているのを発見しました。当然、宇津井健は心の底から良い人なので、チンピラをさくっと追い払います。そして、ふっと助けた女の顔をみると、
「あなたは!」とビックリです。「山科でございます」と丁寧に挨拶をする宇津井健。そう、その女は戦乱のさなかに行方不明になっていたモンゴリア王国の王女。芳蘭(高倉みゆき)だったのです。しかし高倉みゆきは「人違いです」と逃げ腰。「その顔、そのお声」と宇津井健が言っても、尻込みをしているのでした。

翌日、大空真弓に誘われてオープンカーでドライブに出かけた宇津井健。しかし、笑っちゃうほどガラガラの首都高を通って、向かった先は銀座。あっさり大空真弓を振り捨て、昨日の露店に足を向けます。そこにいたおばあさんに話を聞くと、どうやら高倉みゆきは記憶喪失で、ひとり満州からの引き揚げ船に乗っていたということが分かりました。

「今日から私のところにおいで下さい。あなたの記憶を回復していただかなければなりません」と高倉みゆきに申し出た宇津井健は、早速自分の部屋に連れて行きました。そして、
「今は無きモンゴリア王国の侍従武官、陸軍中尉、山科晴彦です」と挨拶し、
「あなたのお名前は芳蘭王女。モンゴリア王国の王女様です」と言いだします。

そして、モンゴリア王国が四方からの攻撃を受け、さらに国内には暴動が頻発、王族たちが必死の思いで脱出するさまを語るのでした。ここは回想シーンになっていますが、さすが新東宝クオリティ。とってもしょぼい戦争シーンが、見るものの目を涙で曇らせます。

さて、どこから聞きつけたのか、かつての侍従(新宮寺寛)や侍医(国方伝)が、高倉みゆきのもとに伺候してきました。もちろん、金目当てです。
「王女に対する君たちの魂胆が分からないぼくだと思うか」と宇津井健は言いますが、なんだか宇津井健って人が良さそうですからね。人の魂胆なんて見抜けないような気がしますよ。

ともあれ、記憶回復の助けになればと、侍従たちの接近を許した宇津井健ですが、二人のやっているのは単なるスパルタ教育。写真を見せて「これは誰ですか」「えー、従兄弟です」「違うでしょ」テーブルをバンっ、みたいに速成の詰め込みを行っているだけです。

それというのも、二人の狙いはスイス銀行に預けられたモンゴリア王国の財産。自分たちが高倉みゆきの後見人ということにして、がっぽり儲けようという魂胆なのです。そして、スイス銀行からの調査員がくる一週間の間に、高倉みゆきを仕込んでしまおうというのだから、そりゃ焦りもするわけですね。

宇津井健は、さすがにヘコんでいる高倉みゆきを見かねて、外に連れ出しました。モーターボート、オープンカー、そして乗馬。とってもチープな合成映像で二人の楽しいデートシーンが描かれます。とは言え、宇津井健は早稲田の馬術部ですから、乗馬シーン「だけ」は本物の香りが漂います。まあ遠景ですけど。

「山科さん、私今のままで良いの。こうしているだけで私、幸せよ」と言い出す高倉みゆき。「私、王女の地位も、財産も欲しくはありません」「お願いです、本当の気持ちを仰って」と怒涛の連打に、宇津井健もタジタジです、と思ったらあんまりタジタジしてません。ダメですよ、宇津井健にはもっとストレートに言わなくては。例えば「私、お前好き。お前、私好きか」みたいに。

しかし、納まらないのが悪人二人組。このままでは宇津井健においしいところを持っていかれてしまう、と殺し屋を宇津井健と高倉みゆきに差し向けます。もちろん、そんなものにやられる宇津井健ではありません。いつものモッサリパンチで、あっという間に殺し屋たちを倒してしまいました。その時、高倉みゆきは一人で逃げていました。いざとなると薄情な女ですね。と、見る見るうちに天候が悪化してきました。もはや笑えないほどのチープな雷が走ります。おっ、高倉みゆきの目の前に落雷しました。思わず気を失ってしまう高倉みゆきです。

病院で目覚めた高倉みゆき。周りをいぶかしそうに見ています。もうお分かりですね。落雷のショックで記憶が戻ったのです。素直に喜ぶ宇津井健に対し、高倉みゆきは複雑な表情です。もちろん、高倉みゆきに複雑微妙な芝居を求めてはいけないので、顔をしかめているだけですが。

ちょうど、その時、スイス銀行の調査員が来日でした。しかし、それはなんとモンゴリア王国の康殿下と宰相(なんだろうな多分)の趙建承(沼田曜一)。悪人二人組は”ぎゃふん”です。それでも、あきらめ悪く、宇津井健の悪口などを沼田曜一に言ってみたりもしますが、あっさり10万円のはした金で追い払われてしまいましたとさ。

沼田曜一は、今は亡き国王の遺言を発表します。それは、王女と康殿下が結婚して王国の再建に力を尽くせ、という内容でした。そして、結婚をしないとスイス銀行にある財産は使えないというのです。高倉みゆきは、内心はともかく、王女として振舞うことを求められ、愛する宇津井健にも、「山科、あなたの努力に心から礼を言います」と他人行儀な態度で接することしかできないのでした。

宇津井健は日常の生活に戻りました。相変わらずお金持ちの娘、大空真弓の猛アタックを受ける毎日ですが、どうにも心が晴れません。夜になると高倉みゆきの写真を見つめて、ため息をつく毎日です。そんなある夜、いきなり宇津井健のところに高倉みゆきがお忍びで現われました。
「お預けしていたもの、いただきに来ました」と、昔々、宇津井健が高倉みゆきにプレゼントしたペンダントを取りに来たのです。慌ててペンダントを探しに行く宇津井健。高倉みゆきは、テーブルに置きっぱなしだった自分の写真を見つけ、ニヤっと笑います。ここ重要です。普通だと、愛しい男が、いまだに自分の事を想ってくれていると「ニコっ」とするところですが、高倉みゆきの場合は「ニヤっ」です。これじゃ悪女では。

「私がこれだけを取りに来たとお思いになって」と挑発的に言う高倉みゆき。
「いけません」「お願いですから、今夜はお帰りください」とうろたえる宇津井健。何だか立場が逆なところがおかしいですね。高倉みゆきはしかたなく、明日外苑に来て欲しい「きっと、きっと待っています」と言って帰っていきました。

翌日、宇津井健は颯爽と外苑の絵画館にやってきました。ところが、そこに待っていたのは沼田曜一。沼田曜一は「王女様はお出でになりません」と言い放ち、宇津井健に高倉みゆきを諦めるよう説得をします。そして、「あなたには結婚する娘さんがあることを一言、言ってもらいたいんです」と言い出しました。
「僕にはそんな嘘は言えません」と断わる宇津井健。そりゃそうです。宇津井健に嘘をつかせるなんて、できるわけないじゃないですか。
さらに、沼田曜一は1千万円の小切手を差し出し、これで諦めてくれと言います。まったく、宇津井健を分かっていないですね。宇津井健が金に目がくらむわけがないです。
結局、祖国再建を待ち望む何万人の人のことを考えてくれ、という言葉で宇津井健は折れました。そう、あくまで宇津井健は正義の人なのです。

しょんぼりと職場に戻った宇津井健。そこに、大空真弓がやってきました。前から誘っていたパーティに、宇津井健を迎えにきたのです。でも、宇津井健はめずらしくヘコんでいますから、パーティには行かないと言い出しました。お父様にムリを言って開いてもらったパーティで、なおかつ宇津井健が主賓。これでは、大空真弓でなくても怒り出します。
「あんまりだわ」「あたしなんかどうなっても良いのね」「良いわ、私死んじゃうから。晴彦さんなんか嫌い」と言って、オープンカーで飛び出していく大空真弓です。

大空真弓は山道を快調に飛ばしています。イニシャルD並みの峠を、泣きながらの運転です。あっ、ハンドルに突っ伏して泣き出しました。当然、クルマはどっかーんと谷底に転落です。やっぱり泣いてもいいけど、ハンドルに突っ伏すのはやめておきましょう。

そんなことを知らない宇津井健は、家でまたまたヘコんでいます。と、そこに高倉みゆきから電話が入りました。ムリに連れて来られたの、お願いだから迎えに来て、と言う高倉みゆき。宇津井健は分かりました、と電話を切りました。またもニヤりとする高倉みゆき。何なんだろう、このニヤリは。しかし、その時、大空真弓が事故ったとの電話が入りました。もちろん宇津井健が、どちらを選ぶのかは決まっています。

病室で心配そうに大空真弓を見つめている宇津井健。高倉みゆきは宇津井健がやってこないので号泣中です。やがて、大空真弓の意識が戻りました。崖から転げ落ちた割には、元気です。「晴彦さん、ごめんなさい」と謝る大空真弓に、にっこり笑う宇津井健。うーん爽やかです。笑顔はこうでなくっちゃいけません。

しかし、それはそれ、これはこれ。
宇津井健は、ちょっと遅れちゃったけど、慌てて高倉みゆきのところに向かいました。
そして、社長のお嬢さんが交通事故にあってとか、何とか言い訳をします。それをチャーンスと思ったのが沼田曜一。いや、そのお嬢さんは、宇津井健の婚約者なんですよ、とかあることないこと言い出しました。当然、宇津井健には「何万人の同胞が王女を待っている」という泣き落とし目線を送りながらです。こうなると、やっぱり宇津井健は人が良いので、自分でも良く分からないまま「王女、ごきげんよう。お幸せに」とか言っているのでした。

数日後、康殿下と王女の婚約が新聞紙上を賑わし、王女はいよいよスイスに向けて旅立つことになりました。その、出発直前のこと。高倉みゆきは宇津井健とひと目だけ合わせてくれと、沼田曜一に頼み込みOKを貰いました。宇津井健の部屋に行く高倉みゆきと沼田曜一。しかし宇津井健は不在です。不在ですけど、なぜか二人は部屋に入っていますけど。まあ、宇津井健は部屋に鍵なんかかけないんでしょう。
高倉みゆきは、仕方ないので宇津井健からもらったペンダントをそっと部屋に置いて、羽田に向かうのでした。

ちょっと遅れて部屋に帰って来た宇津井健。ペンダントがあるのでビックリです。すぐに羽田に向かいました。高倉みゆきを乗せた飛行機はまさに離陸直前。宇津井健は見送りの列に混ざって手を振ります。高倉みゆきもそれに気づきました。やっぱり機内から手を振ります。元気良く手を振る宇津井健。そして飛行機は飛び去っていくのでした。。。
って、宇津井健は白いハンカチを持って、手を振っているんですけど。なんか女の子みたい。

なんとなく陰のある高倉みゆき。もっとハッキリ言ってしまうと、いつでもどこでも目付きが暗い高倉みゆきと、いつでもどこでも明朗闊達な宇津井健の組み合わせは、なかなか妙な組み合わせです。まるで、アイスクリームの天ぷらのような雰囲気です。当然、定番メニューにはなりえない組み合わせです。でも、たまに食べる分にはいいかも知れませんね。高倉みゆきの暗さを宇津井健が中和して、ちょっといい感じです。

高倉みゆきの大空真弓の組み合わせは「汚れた肉体聖女」でもありましたが、どうみても大空真弓の若さや可愛さが目立ってしまうので、高倉みゆき的には「損」じゃないでしょうか。それにしても、大空真弓の奔放な感じは、デビューしたころの久我美子に似ていて、「元気な小悪魔」っぽさが最高です。新東宝には欠けていたタイプですね、なにしろ悪女が得意な女優さんとか、肉体派フェロモン女優が目立つ会社でしたから。

お話としては、この映画の6年ほど前に公開されたローマの休日テイストをちりばめつつ、ちょうど公開時に問題になっていたチベット動乱をプラスし、さらに公開前年に心中して大騒ぎになった満州国のお姫様「愛新覚羅彗生」をイメージさせようという、かなりキワモノ的な構造になっています。まあ、新東宝ですから、どれも掘り下げが甘いんですけどね。

でも、亡命した王室がいわゆる「お国再興」を目指すっていうのは、真剣に考えると難しいテーマです。浪花節的に考えるとOKですが、それって時代に逆行してないか、という考え方も理解できなくはありませんし。もちろん王制と言っても日本のような立憲君主制を含めるのか、それとも絶対王政だけなのか、とか考え出すと、頭がグルグルしてしまいそうです。


(どう見ても、若いツバメに言い寄る有閑マダムにしか見えない)


(泣きながら運転すると危ないよ)


(前を見ないと、もっと危ないよ)


(モーターボートだ、やっほう)


(ドライブだ、はいほー)

 


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