いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】鬼検事

2010-05-20 | 邦画 あ行
【「鬼検事」関川秀雄 1963】を観ました



おはなし
殺された父(山村聡)の代わりに、息子(高倉健)が巨悪に立ち向かっちゃったりします。

健さんが真の意味での「健さん」になったのが「網走番外地」からだとすれば、その前のネオ健さん時代の作品です。なので、いまいちトホホ風味が漂うところが、また良しでした。

「いいか、よく聞け。近いうちに3年前のお礼参りにお伺いする。あんたのご主人に臭いメシを食わされたお礼だ。冗談かどうか、いずれお分かりになるだろうと思うがね。じゃあ、鬼検事によろしく」ガチャリ。謎の男(室田日出男)が受話器を置いた横では、別の男がせっせと時限爆弾を作っているようですよ。

鬼検事こと野上検事の家に、配送業者がお届け物を持ってきたようです。「せっかくですけど、うちでは一切贈り物は受け取らないことにしておりますのよ」と、奥さんの貞子(荒木道子)は断りますが、奥さんが電話に出ている隙に、そっとお届け物を置いて帰る配送業者さんです。チクタクチクタク。ドッカーン。ああ、やっぱり爆弾でした。

さて、そのとき、鬼検事の野上(山村聡)は、疑獄事件に関わっているとみられる石丸弁護士(三島雅夫)の事情聴取中。北斗銀行を通じて流れた極東造船の裏金ルート。政財界を揺るがす、この疑獄事件を解明するためには、弁護士の持っている秘密メモがぜひとも必要なのです。と、そこに電話が入りました。「はい。もしもし。そうです。……なにっ、奥さんがですか」。ビックリした事務官から、自宅爆破のメモを受け取る山村聡。しかし、そこは鬼検事なので、山村聡は、顔色ひとつ変えずに事情聴取を続けるのでした。

奥さんの荒木道子は、軽い怪我を負ったものの、無事なもよう。家族ぐるみで交際している、隣家の部長検事宅に避難しているみたいです。部長検事の息子で新聞記者の明男(今井健二)が心配半分、取材半分で、荒木道子に事情を聞いたところ、奥さんは脅迫電話があったことを教えてくれましたよ。やっぱり、鬼検事だけに恨まれてるみたいですね。もっとも、鬼検事の山村聡じたいは、さっぱり思い当たるふしがないそうですが。

ところで、そんな鬼検事にも英一という息子がいます。しかし、親に反抗して家を飛び出し、ヤクザになってしまったそうです。そして、その英一は、3年間の刑務所生活を終え仮釈放になった、とお友達の部長検事が鬼検事に教えてくれましたよ。早速、奥さんにその情報を伝える鬼検事。「貞子。英一が出てきたそうだよ」「それで。英一はどこに」。苦虫を噛み潰した表情の鬼検事に、奥さんは訴えます。「あなた。3年間の刑務所生活で少しはあの子も……」「骨の髄まで腐った奴だ。また前の組に戻ったらしい。いいか、私たちに子供はいないんだっ」。

はい。ということで、ビリヤードをしている英一(高倉健)が映りました。渋い健さんを見て、弟分たちは賛嘆の声をあげます。「すげえ」「うん、兄貴3年前とちっとも変わらねえな」。えーと、どこが。と、組長がやってきて、健さんに言いました。「いいかい。近いうちに大幹部になるチャンスをやる。いいな」。なんていうか、健さん、みんなに愛されてるよなあ。

さらに、愛人の梨枝子(岩崎加根子)が勤めているスナックにやってきた健さん。「どしたの。何かあったの」と岩崎加根子が声をかけても、健さんはむすーっ。なんていうか、健さん、みんなに愛されているわりには、愛想が無いよなあ。

ある日のこと。そんな愛想の無いヒモの健さんが、岩崎加根子の部屋から出てくると、幼馴染の今井健二が待ってましたよ。「これ見たか」と差し出した新聞には、「野上検事負傷。重傷をおして地検へ」という見出しが。どうやら、何者かに車ではねられたようです。しかし、健さんはふてくされた様子で言います。「オヤジがどうなろうと関係ねえじゃないか」。なんで、こんなに健さんは父親を憎んでいるんでしょうね。その答えは過去にありました。

ぽわわーん。子供時代の健さんが犬を拾ってくると、元いた場所に戻してきなさいと怒るお父さんの山村聡。なんて鬼検事なんでしょう。さらにありますよ。

「俺が大学3年の時だったかな」と健さんは今井健二に語ります。ぽわわーん。健さんが大学生時代。バイト先の同僚が、居眠り運転で、ひき逃げ殺人を犯したそうです。「近所でも評判の孝行息子でな」。鬼検事にカンベンしてやってくれと頼み込む健さん。「ただ判決は過失致死で有罪だった。その時の担当検事がオヤジだよ」。そんな鬼検事っぷりに怒った健さんは、そのまま家出をしてヤクザになったんだそうです。ひととおり語り終わって、カーッ・ペッとツバを吐く健さん。……。えーと、これは健さんがヘンな気がしますけど。まさか、不起訴にするわけいかないと思うし、判決を出したのは裁判官では。

健さんがまたまた、カッコつけてビリヤードをしていると、組長が声をかけてきましたよ。「いいか。2千万って金が入る、どえらい仕事だ。こいつで男をあげな」。そう、それは暗殺ミッション。そしてターゲットの写真を見ると。ガガーン。なんと、それは決めポーズを取った、イカシタ美中年の山村聡じゃありませんか。

スナックに行き、呆然と山村聡ブロマイドを見ている健さん。と、岩崎加根子が声をかけてきました。「ね。何があったの」「組長に殺し頼まれたんだよ」「ええーっ」「こともあろうに、それが俺のオヤジよ」。ついでに言うと、謎の依頼人は、健さんの組以外にも暗殺を頼んでるらしいのです。「それで、どうするつもり?」「いくら、俺がオヤジが憎いからって、俺は撃てねえよ」。まあ、そりゃそうですよね。「お父さんに知らせたら?」「いやあ、危ないと思っても、やるだけのことはやるだろ」。うわーん。なんか健さんって、冷たいよお。

いえいえ、健さんは冷たい人間ではありませんでした。鬼検事が前産業大臣を逮捕しに行くのを知った健さんは、同じ電車に乗り込んで、さりげなく護衛しているのです。もちろん顔がバレルと恥ずかしいので、サングラスで変装していますけどね。さらに、鬼検事の横の席には愛人の岩崎加根子を座らせ万全の態勢。さあ、来れるものなら、どこからでも来やがれ。グサッ。あれ。あれれ。お父さんの鬼検事、刺されちゃいました。「お父さん。お父さーん」「え、英一か。残念だ」ガクッ。

鬼検事のお通夜の席で、健さんはつぶやきます。「お父さんは俺に話したいことが、いっぱいあったに違いないんだ。俺はそれがよく分かるんだ」。なんていうか、まさに「孝行したいときには親はなし」というか、今さら過ぎるぜ、健さん。

もちろん、健さんは鬼検事の敵討ちをすることに。まずは、組長から暗殺の依頼人を聞きだすのが先決でしょう。よっしゃあ。ピストルを片手に、健さんは組事務所に乗り込みます。しかし、一歩遅かったようです。轟く銃声。転がっている組長の死体。ぬぬぬ。敵は口封じに出たみたいです。しかし、待ってください。組長の死体が握っているのは、振出人欄が破かれた北斗銀行の小切手ですよ。そうだ。この振出人が依頼者に違いない。これさえ分かれば……。

銀行に聞きに行ってみると、規則で教えられませんと断られちゃいました。ぬぬ。規則ならしょうがないですね。ということで、今度は新聞記者の今井健二のところに行って、相談してみる健さんです。すると、今井健二は、そういえば汚職も北斗銀行が絡んでたぞ、と言い出しましたよ。「とすると、お礼参りはどうなる」と尋ねる健さんに今井健二はデカイ声で言います。「お礼参りは偽装だぞっ」。

鬼検事の殺害理由がお礼参りでなく、疑獄事件絡みということなら、まずアヤシイのが弁護士の三島雅夫。さっそく、健さんは、三島雅夫が出入りするナイトクラブに潜入しました。すると、三島雅夫は風間商事の社長、風間(小沢栄太郎)と何やら密談しているみたいです。これでキマリ。もう小沢栄太郎って段階で、黒幕に決まってます。しかし、これ以上、どうやって捜査を続ければいいのか。物証がなければ、検察だって動きようがないだろうし。

(ヒモなので)岩崎加根子の家で、悩んでいる健さん。うーん。うーん。心配する岩崎加根子に、三島雅夫が証拠を持っているはずなんだが、と健さんはグチります。「いつも、あのナイトクラブでとぐろ巻いてることだけは、分かってるんだ。ちきしょう。あの野郎」。そんな健さんのロンリーな顔を見て、岩崎加根子は何かを決心したみたいですよ。

健さんがウロウロしている間に、「自主的に」岩崎加根子は、そのナイトクラブに転職をして、証拠を掴んできましたよ。それは、三島雅夫が秘密メモをネタに、小沢栄太郎に金を要求している録音テープ。「証拠になる?」「うん、証拠にはなるが、決め手にはならんよ」と、健さんはひとの苦労も知らずに、ちょっと偉そうです。仕方ない。愛する健さんのために、岩崎加根子は三島雅夫に接近して、「自発的に」体を与えるのです。これで、あの人が喜んでくれるなら……。

「ごめんなさい。メモはマダムが持っているらしいとだけ分かりました。これが私にできる精一杯の、あなたへの贈り物です。これ以上、私にはなんにもできなくなりました。あなたとの楽しい思い出だけが残っております。さようなら。梨枝子。英一様」。愛され上手な健さんは、岩崎加根子が自らの貞操と引き換えに得た情報をもとに、三島雅夫の愛人であるマダム(沢たまき)のところへ殴りこみです。「俺は、この間殺された検事のどら息子だがね、俺の調べ方はオヤジと違って、ちょっと手荒いぜ」。アイロンをコンセントにつないで、脅迫する健さん。じゅじゅーっ。「待って。言うわ。メモは石丸が東京駅の貸しロッカーに」「鍵は」「石丸が持ってるわ」。よーし、まってろよ、三島雅夫。ぶろろー。

健さんが車を走らせていると、警察の検問が。求められるままに、車のトランクを開けた健さんは、中を見て、ビックリ仰天です。なんで、こんなとこに三島雅夫の死体が。し、しまった。俺は小沢栄太郎にハメられたのか。うーむ。って、悩んでいる場合じゃないので、警官を殴り倒してスタコラ逃げ出す健さん。とりあえず、警官の追跡を振り切り、電話ボックスに隠れることに成功しました。あとは、助けを呼ぶだけです。ジーコロ、ジーコロ。あ、俺だけど。今井健二に電話をした健さんはひとこと言います。「なんとかしてくれよ」。

今井健二になんとかしてもらった健さんは、そのイキオイでマダムの家に引き返すことに。ちくしょー。俺をだましやがって。しかし、なんてラッキーなんでしょう。マダムな沢たまきのところに行くと、なぜか小沢栄太郎がノンキにシャワーを浴びていたのです。えーと、つまりマダムは三島雅夫の愛人の振りをして、小沢栄太郎と組んでいたと。で、健さんが立ち去ったあとにやってきた小沢栄太郎はノンキにシャワーを浴びていたと。……。まあいいけどね。ともあれ、小沢栄太郎を捕獲した健さんは、凄んで言います。「風間さん。メモはどこにあるんだよ」。「知らんよ、そんなものは」とトボける小沢栄太郎ですが、健さんが洋酒をテーブルにぶっ掛けて火をつけてみせ、さらにその洋酒をジャブジャブと自分にかけ始めたので、たまりません。「ま、待ってくれ。メモはわしが持ってる」。風間商事の金庫に入れてあるという小沢栄太郎に、健さんは疑わしそうな視線を向けます。「ウソじゃねえんだろうな」「わしも風間だ」。わしも風間だ、って言われてもねえ。

さあ、小沢栄太郎を連行して、健さんは風間商事にやってきました。さすが、「わしも風間だ」と言うだけあって、金庫からメモも出てきました。これさえあれば、鬼検事の敵が取れる。やったよ、パパン。と、健さんが喜んでいたのもつかの間。小沢栄太郎の子分たちが、ピストルを持って社長室に入ってきました。そのうえ、お母さんが人質に。「英一、母さんなんかにかまわないで早く行きなさいっ」。そんなこと言われても。どーしよう。「英一っ」「母さんっ」。はい、健さんは泣く泣く、メモを返し、そのメモは目の前で燃やされてしまうのでした。メラメラ。得意満面な小沢栄太郎は言います。「さあ、これで君との縁もおしまいだ。おい、お二人をお送りしろ」。

メモが燃やされてしまった以上、鬼検事が命をかけて追っていた疑獄事件は、もはや司法の手によって裁かれることはなくなりました。そして、鬼検事の死は、暴力団のお礼参りということで、決着が付いてしまうのでしょう。それで、いいのでしょうか。それでは正義は、どうなってしまうのだっ。

ということで、健さんは小沢栄太郎が前産業大臣と一緒に車に乗り込もうとしたところを襲撃です。運転手をピストルで脅して、車のハンドルを握る健さん。後部座席に小沢栄太郎と前大臣を乗せ、アクセル全開です。ブロロロー。「おーい、追えーっ」と子分たちが別の車で追いすがり、銃を乱射してきますが、平気だもんね。健さんに弾は当たらんことになっている。バーン。うっ。あれ、当たっちゃった。しかし、健さんの神業ドライビングで、敵の車は次々に谷底に転落。ふっ、ざまあみろ。それにしても痛いなあ。そのうえ、出血多量で、目がかすんできたよ。

これにビビったのは小沢栄太郎。なにしろ、急なワインディングロードを、意識朦朧の健さんがアクセル全開で飛ばしてるんですからね。ひぃーっ。「君の言うとおりにする。停めてくれぇ」。ヨロヨロな健さんは、ニヤリと笑って言います。「さあ、裁判はこの辺で幕にするか。肝心なのは判決だよな。どう考えたって、懲役5年じゃ軽すぎるよな。まともな判決じゃ、あんたらに殺されたホトケが恨みごと言うからな。てめえらこそ、本当のダニだぜっ」。キキーッ。タイヤを鳴らしながら、急カーブをクリアした健さんは、宣言します。「どう見たって、この判決は死刑だぜっ!」。そして、心につぶやくのです。「お父さん。これが俺の判決だよ」。どっかーん。谷底に落ちた車は爆発炎上するのでした。

えーと、そう終わりますか。ポカーン。それにしても、どうやら、健さんは最後の最後まで、検事と判事の区別がついてなかったみたいですね。求刑するのが検事で、判決を出すのは判事だからねっ。

ということで、この映画、タイトルが「鬼検事」になってますが、むしろ「鬼検事と地獄判事」にしといた方がよかったんじゃないかと。もしくは「鬼検事と、愛され上手なモテカワBOY」とか。

ちなみに、リアル健さんは明治大学をご卒業らしいので、いくらなんでも、検事と判事の区別はついていると思います。







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2 コメント

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裁判映画 (アパッチ)
2010-05-22 17:03:22
「黒の報告書」でもそうでしたが、いくらおにぎりさんは裁判モノには辛口ですね~
裁判に詳しくない者としては、検事も判事の違いもはっきり分かりませんデス。
ただ、詐欺に騙された経験があって、裁判所には何度か行きましたが、映画やテレビで見るような検事と弁護士の緊縛したやり取りはまるでなかったです。

今回は未見の映画にコメントさせていただきました。
Re:裁判映画 (いくらおにぎり)
2010-05-23 08:43:13
アパッチさん、こんにちは。

いえ辛口にしてるつもりはないんですけどねえ。ただ法学部卒なので、どうしても間違いが気になる、って部分はあるかもしれません。逆に言うと、「株」や「経済」関連の映画とかだと、知識がないので、ツッコミが不発な可能性が大です。

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