いくらおにぎりブログ

邦画中心の映画感想ブログです。ネタバレがありますのでお気をつけ下さい。

【映画】あした

2006-07-21 | 邦画 あ行

【「あした」大林宣彦 1995】を見ました。


おはなし
3ヶ月前に乗客9名と共に沈んだ呼子丸。その関係者のもとに「今夜午前0時、呼子浜で待っている」というメッセージが届きます。不思議に思いながらも、次々と集まる関係者たち。そして、時計の針が0時を指した時、沈んだはずの呼子丸が海中から浮かび上がってきて……。


大林監督の新・尾道三部作の2話目。ストーリーラインとしては、最近テレビドラマ化された大石英司の「神はサイコロを振らない」に似ていて、不慮の事故で死んだはずの人たちが帰ってきた、そのとき遺族は?というもの。

この映画が大好きな人には申し訳ないけど、ぼくはこの映画をあまり楽しめなかった。大林監督は当たり外れが多い監督だけど、これはハズレでしょう。

というのも、乗客9名(実質的には5組ですが)とそれぞれに遺族たちというのが、人数的に一本の映画として処理するには多すぎた点。それに、遺族と死者の出会いというテーマ以外に、高橋かおりと林泰文の再会話や地元ヤクザの跡目争いなどを入れているものだから、余計にキャラクターの掘り下げができなくなっています。

それぞれのエピソードも「泣き」より「不快」なものが多く、それも後味を悪くしています。

船の設計師、永尾(峰岸徹)のエピソードでは、妻子と再会した峰岸は娘を放ったまま、まずは妻とカーセックスに及ぼうとする。もちろん、そういった人間の汚さやダメさを描いて成功する監督もいるとは思いますが、大林監督にはムリでしょう。まして、全体の中では小さなエピソードの一つ。性格描写などをおろそかにしたまま、これでは見てて不快です。また、最後に娘の足から血を流してみせて、妻に「大人になったのよ」と言わせる神経も分からない。それまで、娘の台詞なんてほぼ皆無のまま来て、死者である娘が初潮を迎えたことを観客はどう判断すればいいのか。よく分からないけど、感動でもしろ、ということなんでしょうか。

また遭難者の社長(井川比佐志)には妻(多岐川裕美)と秘書(根岸季衣)が会いに来ているのですが、井川と根岸は実は愛人関係。夫に会えてうれしさのあまり失神した多岐川を尻目に、愛をささやく井川と根岸。これも本当に不愉快。

女子高生(宝生舞)は彼氏(柏原収史)に会いたくてやってきましたが、柏原は一緒に船に乗ってくれ(つまり死んでくれ)と懇願。断られると、宝生の自転車を叩き壊す始末。これでは帰れないと宝生が言うと、「お前には時間がいくらでもあるんだから、死ぬまで直してろ」と言う逆ギレっぷり。その後も、宝生が殺されそうになったとき、柏原は黙って見ているだけ。「死ねばいいと思った」そうです。しかし、ラストシーンでは去っていく船に
「私も連れていって」と海に飛び込む宝生。普通、ありえないだろ、と怒りさえ込み上げてきます。

ヤクザの親分(植木等)のエピソードでは、遺族との出会い以外に、跡目争いのごたごたが加わっています。でも、それが何のために描かれているのか意味不明。ただでさえ、このテーマに対して、尺が短いのに、こんな猿芝居を長々とやっている意味が分からない。
まして、ベンガルと岸部一徳の殴り合いをえんえんと見せられると、うんざりしてきます。

基本的に映画を観る時は、楽しい部分を探すようにしています。どんな映画だって、光るところはあるはず。まして、ぼくの大好きな大林監督の映画ですから、褒めようと思って見ていたのですが……。

新・尾道三部作と言いながら、いわゆる大林らしい画が見られるのはごく前半のみ。
見終わったあと、別に尾道は関係無いよなあ、と思いました。

 

いくらおにぎりブログのインデックスはここ
いくらおにぎり日記はここ

『映画・DVD』 ジャンルのランキング
コメント (6)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【映画】心中天網島 | トップ | 【映画】処女受胎 »
最近の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (通りすがり)
2006-07-21 17:11:37
あっはっは。たまたま目にとまってよんだんですが、面白くなさがすごく伝わってきて大笑いしました。是非観てみて、同じ気持ちを味わいたいなぁと思いました。
いちおうお止めしておきますが (いくらおにぎり)
2006-07-21 17:43:35
>通りすがりさま



いくらおにぎりです。お読みいただいて、ありがとうございます。

でも、ヘンな期待は抱かないでくださいね。

「デビルマン」のようにダメっぷりを、珍獣でもみるように、楽しめる映画ではありませんから。

微妙に、イヤな気分になってしまうかもしれませんよ。

でも、どんな映画だって、見ないよりは見たほうが、良いですよね、きっと。
珍しいラブストーリーですが? (えびすこ)
2009-08-02 16:06:59
いくらおにぎりさん。初めまして。
大林映画では珍しいラブストーリーの様ですね。記事を読むと「期待ハズレ」と見ます。
主演の高橋かおりさんが林泰文さん(松坂投手に似ている事で有名。刑事ドラマなどで見かける)とのラブシーンがあると聞いておりますが、その場面の感想はどうですか?3年前の事なので、記憶していればご返答ください。
この映画は宝生舞さんと柏原収史さんの、デビュー作でもあるんですね。
Re:珍しいラブストーリーですが? (いくらおにぎり)
2009-08-03 14:46:56
えびすこさん、はじめまして。こんにちは、

いや、期待ハズレってこともないんですけど。大林映画については、ダメな部分も含めて、愛しているので、なにがきたって大丈夫です。もっとも「廃市」だけは、あまりにストイックな作りに、「ホントに大林?」とビックリしましたが。

ご配慮いただいて、すみません。ラブシーンなんか、すっかり記憶の彼方です。というか、あったとしても、大林監督だし、そんな激しいものじゃないと思いますけど。
「あした」を見ました (えびすこ)
2009-08-04 15:34:01
 今日「あした」を見ました。
 先日中古ビデオとして「あした」が売られていましたので、買って先ほど見ました。
 ラブシーンは三浦友和さんと山口百恵さんが出ていた「潮騒」(「あした」も古い映画の方になりましたが、「潮騒」もかなり古い映画です)の様な感じでしたね。火をおこしている側での抱擁を見てそう思いました。
 主演の高橋かおりさんは去年「日本史サスペンス」で、篤姫を演じてました。この回を見ていたので記憶にあります。
ところで今年見た映画の中で、「面白い」と感じた映画は何ですか?
Re:「あした」を見ました (いくらおにぎり)
2009-08-04 15:57:27
>ところで今年見た映画の中で、「面白い」と感じた映画は何ですか?

いやあ、ストレートですね。難しいなあ。
カッコつけると、ブニュエルの「アンダルシアの犬」なんですけど……。

正直なところでは原恵一監督の「河童のクゥと夏休み」、それに深作健太監督の「XX エクスクロス 魔境伝説」です。特に、深作監督の場合、どうせ「親の七光り監督」とナメてかかっていましたが面白い。「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」から一年で、確実に進化していました。

あわせて読む